暴れる乾燥機、踊る支え(919文字)
洗濯機の上方に設置している洗濯乾燥機の「支え」が、細く、薄い金属であるため、乾燥中の乾燥機の揺れは、これ、なかなかに甚だしい。
この揺れを見ながら妻が今日、改めて言った。
「ずいぶんと激しく揺れてるねえ」
「免震構造なんだろうな」と僕は応えた。「揺れずにしっかり支えるぞ、って頑張って突っ張っちゃうと、揺れの力に逆らうことになり、結果支えが折れちゃったりするんじゃないかな?」
「わざと揺れてるんだね」
「そう。動揺を、柔軟に、柳に風のごとく受け流す構えなんだよ。『柔よく剛を制す』ってわけだ」
満員電車の中で、足に力を込めて踏ん張っちゃうんじゃなくて、周囲の揺れに逆らわず、揺られるがままに揺れちゃうみたいなやり方――。
「乾燥機の支えって、あひろちゃんみたいなんだねえ」
「ヘラチャラにして優柔不断だっていいたいのか(笑)?」
「テキトーにして臨機応変だっていいたいんだよ(笑)」
力に対して、これをいなし、あるいは無駄な力が無効になるよう受容して、でもって共存し、ウインウインの関係を維持する――、思えば、若い頃はそんなことできなかったかもしれないなあ。
力に対して、拳を固めてしまっていたかも――💦
乾燥機の「支え」は、乾燥機に活躍してもらってこその支えであるわけで、乾燥機のパワーそのものを打ち消してしまってはならないのであって、乾燥機には頑張って暴れていただきつつ、しかし乾燥機が、勢い余って落下してしまったりはしないよう、効果的にこれを支持することが「支え」の本分であり、そのためには、自らがしなり、柔軟にパワーを受け流すことが寛容である――のであろうなあ。
「あたしのパワーを、あひろちゃんが受け流してくれてるの?」
(うーむ。普通は夫婦逆なんじゃないかなあ。でも、ま)「そだよ」
「じゃ、思う存分暴れるか」
(いや、無駄には暴れないでほしいなあ、)「ほどほどにね」
暴れる乾燥機に合わせて、ダンスするように揺れている「支え」を見ながら思った――。
――「柔らかさ」ってのは、ときに、信頼に足る「強さ」であったりするんだなあ。
逆らわず、抗わず、足掻かずに――、いなし、受容し、やり過ごそっかなあ、もろもろを(トクニツマヲ)。
Let's――
――dance!!!