
前略 ヒロトさん(815文字)
ザ・ブルーハーツの歌に『月の爆撃機』ってのがあるじゃないですか。
作曲も、作詞も、甲本ヒロトさん。
この歌詞の意味、考えたことがありますか?
『白い月の真ん中の黒い影』を見ているはずの『僕』が、なぜ『今コクピットの中にいる』のでありましょうか?
だなんて考えながらこの歌を、ウクレレで、久しぶりに弾き語ってみてしまいました。
ふうむむ、やっぱり謎でありますな。
『僕』は地上にいるのでありましょうか?
それとも、『コクピットの中』にいるのでありましょうか?
こんな時代でありますし、こんな解釈↓をしてみちゃいましたよ。
夜。
歩いていた。
「行き止まり」の看板。
その向こう……。
ここから先は理屈が通じない。
法律だって機能しない。
誰の声も届かない。
友達も、恋人も、助けになんて来てくれない。
手掛かりになるのは薄い月明かり。
見上げると、なんだ、ありゃ。
伝説の爆撃機じゃないか。
この町もそろそろ危ないぜ。
どうやって逃げようか?
いや、逃げたりしないで開き直るか。信長みたいに、夢まぼろしのごとくなりって高笑いでもしてみっか。
手掛かりになるのは薄い月明かり。
(爆撃機の中の敵。そいつに僕らは殺されるのか?
いや待て。
戦争ってのは、本当に「敵国との」争いなんだろうか?
……戦争を始めたのは誰だ??
……!
ってことは、あれか、選んだのは僕たち国民なんだから……)
また見上げると、爆撃機が月を背負っている。
白い月の真ん中の黒い影。
――「眼下に」街の灯り。
操縦桿を握っているのは僕の手だった。
錆び付いたコクピットの中にいる自分に気が付いた。
白い月の真ん中の、黒い影を見詰めながら僕は、同時にコクピットの中にいて、自らに向かって爆弾の雨を降らせようとしているのだった。
――これってつまりは……?
手掛かりになるのは薄い月明かり。
さてさて、前略 ヒロトさん。
だなんて勝手に解釈してしまいましたが、そういうことだったりしますか? 違いますか? そうですか。失礼しました。ヒロトさん。
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