なつかしさは、確かに、やさしさに似ている(855文字)
出し抜けに思い浮かんだフレーズなんである。
心境が招き寄せた歌詞なんであろうな。
――なんの歌だっけ?
思い出せなかった。
――そんなときはググればいいのさ。
便利な時代なんである。
が。
出てこなかった。
妻に聴いてみた。
――知ってる?
知らない、と妻は応えた。
一休さんみたいに、瞑想的に頭の中を探った。
そしたら、
あるビジュアルが浮かんだ。
解き放たれた全裸の男が、宇宙空間を、泳ぐように進んでゆく後ろ姿――。
ええっと……、なんだっけ、これは――??
とんちが浮かぶ前に答えが浮かんだ。
小松左京の文庫の表紙絵だった。
『果しなき流れの果に』のカバービジュアル。
……なにゆえに??
――すると、
ビジュアルから、新たなフレーズが手繰り寄せられた。
んー。
ユーミン的なこの歌詞……。
なんだっけ、なんの歌だっけ??
角川書店な匂いがする――(だから左京の角川文庫が浮かんだのか?)。
んじゃ、薬師丸ひろ子――?
それとも、原田知世……?
あ!
たぶん!
調べた。
ビンゴ!
原田知世さんが歌っていた『CURTAIN CALL』って曲だった!
『愛情物語』のシングルレコードのB面。
ここまでわかればググり放題である。
出てきた歌詞を読んだ。
――なんていい歌詞なんだろか。
ウクレレで弾き語りたいと思った。
ところがコードがわからない。
「U-フレット」というサイトで――、
たいていの歌のコードは調べられるのだが、残念、そちらにも掲載がなかった。
マイナーなのかな、『CURTAIN CALL』?
てなわけなので、時間を掛けて――、
ひとフレーズごとポロポロやりながら、それらしきコードを書き出していった。
テキトーだから、違ってるところもあるだろう。
でも自分の耳で聞いて気持ち悪くない程度のコードが特定できたので、
じゃん!
弾き語ってみた!
しかも、原田知世さんに寄せて――?
おーい、気持ち悪いとか言うなよ?
1984年――。
思い出が重なる歌なんだかんな。
なつかしさは、確かに、やさしさに似ている。