ネット人格(730文字)
ネット人格――って、むかしよく耳にした。
リアルなその人とは違う、偽りのキャラ――みたいなこと?
――漫画雑誌の編集部にいて、気付いたことがある。
爆笑必定な漫画を描くギャグ作家が、実は、ひどく真面目で大人しい人だったり――、
尖った作風で売ってる先生の人柄が、とても穏やかで調和的であったり――。
リアルなフェイズにおいて表れている「らしさ」と、創作というフィールドにおいて発揮される「らしさ」が180度食い違ってる――みたいなことはよくあることで。
ネット人格って、そういうのに似ているのかもしれない。
で、僕は思うのだけど、どっちがホンモノで、どっちがニセモノなのかってのは視点の据え方で反転するんじゃないかな。
ネット人格こそが実は、その人の内的本質で、リアルな空間で表されているのは、社会的に適合すべく被られたところの「ペルソナ」に過ぎないのかもしれない。
どっちが仮面なのか、わかんないよね。
ジェンダーだとか、国籍だとか、職業だとか、育ちだとか、環境だとか――、いろんなパラメータに小突かれるみたいにして僕らは、社会的な僕らを演じているわけだけど、匿名的なインターネットフィールドで、何者でもない自分として、なんの制約も受けることなく表された己ってやつこそが案外、本質的な自分だったりするのかもしれない――。
いろんな属性を1枚ずつ剥ぎ取って最後に残るもの、それが即ち「人柄」ってやつだって聞いたことがある。
ネット人格こそが、もしや、その人の「素(す)」であったりするのかもしれないないなあ。
――だなんて考えて口ずさんでしまうのはジュリーの「ス・ト・リ・ッ・パー」。
絵の世界じゃ「ストリッパー」って剥離剤のことだったかな(山田玲司がそんなタイトルの漫画を描いてたな)。
いいなと思ったら応援しよう!
文庫本を買わせていただきます😀!