りーこ(296文字)
昼御飯のあと、向かいの席で、妻が足を――たぶん足だろう――を掻いている。
カリカリカリカリ
一心不乱に掻いている。
似ているな、
と思った。
昔実家で飼っていた、猫のミーコによく似ている。
いろんな仕草が、猫化してきている妻なのであった。
だからかな、妻を、最近、
りーこ、と呼んでいる。
長年連れ添った相方を、今さら、りーこ、
もないもんだとは思うけど、ミーコは老いてもミーコだったしな、妻もりーこで問題なかろう。
相手を猫だと思うなら、たいていのことでは腹も立たない。
妻も自身を、りーこ、と呼ぶようになった。
猫っかわいがりされることを求めているんだと思う。
やれやれ、
と思うが、
ま、しかたない。
りーこなんだから。
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