ゴルディアスの結び目
日頃自宅で、スウェットのカーゴパンツなんて穿いているのだけど、
そのウエストんとこ、紐できゅっと縛るタイプなんだけど、
蝶結びしようとすると、
ほら、なんていうか、まず、リボンをこしらえる前に、ひとまずきゅっと結ぶじゃないですか、あの結び、なんていうのか知らないけど、要は、かた結びの第一工程の結びですね、それをするじゃないですか、
で、まあ、毎度それをやるわけだけど、
パンツを脱ごうとしたとき、いっつも、ほどけないんです、僕のパンツの場合、かたく結ぼれ過ぎちゃって。
リボンを崩して、残ったあの、かた結びの第一工程状況をほどかんと眦を決するのですが、
ぜーんぜんほどけない!
猫のように爪を立ててもダメ、
小さめのマイナスドライバーでこじ開けようとしてもダメ、
毎回苦心しながら、
なんとかどうにかどうやらほぐしていたのだけど、
今朝はピンチだった!
昨今はまっているメルメル(我が家における、オートミールの呼び名)のお陰か、
トイレでなすべき用事が切迫状況にあり、
個室にて、
苦心惨憺しながら、
もがきにもがいて、
ゴルディアスの結び目(!)を解かんと格闘したのでありますが、
手こずりまして、
お腹の締め切りが刻一刻と近づく中、
やむなし、
と爆弾処理班に頼るがごとき心境で
個室を出でて、
妻のもとに駆け寄ったのであります。
「また、とれなくなっちゃった!」
「どれどれ?」
「事態は一刻を争うよ!」
のんびりしている妻を急かして、
お腹を任せるも
妻の爪先もまた
ゴルディアスをほぐすことかなわず、
「切るか」
と僕は、
ブラックジャックよろしく
苦渋の決断を口にしたのですが、
「こうすればいいじゃん」
と言いながら妻、
おもむろに結び目を
いくらか乱暴に
左右の紐ごとぐいっと手前に引っ張りまして、
そしたらまあ、なんということでしょう!
浮いた結び目は、中空に浮かぶお団子のごとき無防備な状態となり、
お腹との癒着を引き離されたゴルディアス、
あわれ、
四方八方より妻の爪の攻撃にさらされることとなり、
敢えなく解除されちまったのでありました。
投降する運動家のごとき様相の紐を見下ろしながら
「そっか、そうすればよかったのか(*゜ロ゜)!」
と僕は呟き、
トイレに駆け込みつつ
妻に向かって言いました。
「さすがは元アパレル職だけのことはあるね!」
「え? なあに!?」
と問われて個室で
また声を張り上げました。
「服飾のプロは違うね!」
個室の中に
妻からの返事が届きます。
「服飾のプロとか関係ないよ」
――謙遜しておるのでありますかな?
と思ったのでありましたが、
妻は続けて、
やや上の方から、
「小学生の知恵があれば解けちゃう結び目だよ!」
(|| ゜Д゜)/!
――ふうむ、と用事を済ませながら、古い表現でなんだけど、反省ザルみたいに頭を抱えちゃった僕なのでありました、くうぅ、なんだかな。
文庫本を買わせていただきます😀!