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スポンサーとチームの増加で変わるキングスリーグと、選手の給与事情

キングスリーグは2023年度に31億円の経常収支、純利益5400万円を達成しました。これは2022年の始まったばかりの頃はおよそ2100万円(14万ユーロ)の赤字だったことを考えると、黒字に改善しているだけでなく事業規模が大きく拡大していることが伺えます。

当時(2022年12月31日時点)、プロジェクトの収入は約2万ユーロ、損失は16万3,466ユーロだったからです。

2024年には約6000万ユーロ(約93億円)が獲得され、世界中でいくつかのリーグが開設された
ため、状況は改善すると予想されます。

参考:キングスリーグはジェラール・ピケにとって最初の年で利益を生むビジネスであり、さらに大きな利益をもたらす可能性がある。

ちなみに2024年度のデータはまだ見つからないので、さらに事業が大きくなっている可能性はあるでしょう。事業としては拡大期の真っ只中と言えます。

この好業績のおかげで93億円(6000万ユーロ)の資金調達に成功し、いいサイクルへ向かいつつあるようです。キングスリーグに11人制サッカーやesports、7人制サッカー、個別スポンサーが関わるようになってきました。

この記事ではキングスリーグに続々と参入する様々な組織、それを受けて変わりつつあるキングスリーグをまとめます。


セリエAとキングスリーグがパートナーシップを結ぶ

ユベントス“のような”チームが誕生

キングスリーグイタリアのzebrasfcはリーグ開始前からユベントスとパートナーシップを結ぶことを発表し、ユベントスの練習施設をチームが使用しています。ロゴのデザインからわかるようにユベントス”のような”チームと言っていいでしょう。具体的には

・チームマスコットがユベントスのマスコット
・選手のアリアンツトレーニングセンターでの練習
・zebrasFCの会員はユベントスの試合も観戦できる(優遇措置がある?)

等々、ユベントスとキングスリーグ双方にメリットがあるようなパートナーシップが結ばれています。今後も既存の11人制サッカーとキングスリーグの関係を考えるにあたって大きな影響を与える動きと言えます。

参考:ユヴェントスがイタリアのキングスリーグに参入する最初のクラブになる

ユヴェントスは、キングスリーグに登録されているチームと提携する最初のクラブとなり、ルカ・カンポルンギのゼブラスFCとの独占コラボレーションを実現しました。

イタリアのキングスリーグでビッグニュース。ユヴェントスは、ゼブラスFCとの独占提携により、イタリア・キングスリーグに登録されているチームと提携する初のクラブとなる。これはルカ・カンポルンギが率いるチームで、今後数週間に予定されているイタリア・キングスリーグに参加する予定だ。ユヴェントス クリエイター ラボは、ユヴェントス、ゼブラス FC、そしてそのファンの出会いの場となります。このコラボレーションには、アリアンツ・スタジアムでのユヴェントスの試合観戦や、ヴィノーヴォのアリアンツ・トレーニングセンターでのトレーニングなど、ゼブラスFCの会員限定の体験も含まれます。さらに、ユヴェントスのマスコットであるジェイが、キングスリーグ・イタリアの試合中にチームを応援します。

↓ユベントスの練習設備を使うzebrasfcの選手

また、同時期にセリエAとキングスリーグイタリアのパートナーシップも締結されました。具体的な内容はまだ明かされていません。既存のフットサルやバスケットボールのように直接「FCバルセロナ」といったチームを持たせる動きは現状はまだありませんが、こうした形で11人制サッカーの世界もキングスリーグと関わる動きが今後増えていくと思われます。


@SerieA キングスリーグとレガセリエAが画期的なパートナーシップを結び、イタリアのサッカーのレベルアップを目指します。

伝統と革新を組み合わせたこのコラボレーションは、サッカーへの関わり方を再定義する独占コンテンツ、イベント、共同イニシアチブを通じてファンに新しい体験を提供します。 これはほんの始まりに過ぎません。

キングスリーグ公式Xより

配信者以外が主体のチームの参加

loudとfuriaがキングスリーグブラジルに参加

LOUD x FURIA (Mapa 1: Ascent) | VALORANT Challengers Brazil: 2ª Etapa より

キングスリーグブラジルでは、現時点でloudesportsとfuriaがその名前のままチームを持つことが発表されています。この2チームはesportsチームであり、valorantなどの大会で一度は見たことがある人もいるのではないでしょうか。これまでは配信者主体でしたが、esportsチームが主体となってリーグに参加するようです。

また上述したように既存の11人制サッカーのチームがそのまま参加することはまだ事例がないですが、esportsチームがそのまま参入できるならwolves esportsなども参入できるはずで、いずれは11人制サッカーで有名なクラブが違う形で参入してくるのではないかとも思います。

7人制チームのresenhafcもそのまま参加

また、7人制のサッカーチームであるresenhaFCもそのままチームごとキングスリーグに参加すると発表されています。ブラジルリーグでは配信者中心のクラブではなく、他業界のチームがそのまま参入してくるケースが目立ちます。

崩れつつあるチーム同士の対等な関係

こうした配信者以外が主体のチームの登場によって、徐々にリーグの対等な関係が崩れつつあります。選手への給与規制は厳しい一方、チームに対する投資は特に規制がないようで、各チームへの投資は積極的に行われています。

トレーニング施設に個別に大規模な投資をするg3x

ブラジルでは特に金の動きが激しく、g3x(第1回キングスクラブワールドカップで決勝まで進んだチーム)は2500万円(100万レアル)をかけて自チームのトレーニング施設を作りました。

いくら選手に対して給与規制を課しても、このようにトレーニング施設などにはいくらでも投資をしていいのであるならば、徐々にキングスリーグのチーム間で差が出てくるでしょう。

また、次のようにチームに個別スポンサーがついてさらにクラブ間格差に拍車をかける可能性があります。

スペイン、イタリアで”チームに”個別スポンサーが付くようになる

スペイン及びイタリアリーグでは、個別のチームにJDスポーツ(スポーツ用品小売業大手)がスポンサーが付くことが発表されました。

これまでリーグそのものにスポンサーが付くことはありましたが、個別のチームにスポンサーが付くのは今回が初めてです。

JD x Kings League のパートナーシップは、YouTuber DJMariio のスペイン チーム Ultimate Móstoles のジャージに反映されています。同様に、JD はチーム社長でありイタリアのストリーミング界のセンセーションである Blur が率いるイタリアの「スタリオンズ」のスポンサーにもなります

参考:JDはキングスリーグと提携してサッカーファンとつながる

ultimate mostlesはリーグの中でも比較的オーナーのフォロワーが多いチームであり、stallionsは最もフォロワーが多いクラブです。キングスリーグが拡大するにつれてスポンサーが付くようになり、結果的にクラブ間の格差が進んでいると言えます。

配信者個人の力で1チームをまとめるのは徐々に難しい段階へ

既にキングスリーグのいくつかのチームでは100%オーナーだった配信者が何パーセントかの株を売却したり、loudやfuriaのようにそもそも配信者でない法人がオーナーを務めるクラブなど、配信者が100%オーナーではないクラブが増えてきています。当初の配信者を中心とした新しいサッカーというコンセプトは難しい段階になりつつあるかもしれません。

実際、esportsチームや7人制サッカークラブがそのまま参入してくる場合やユベントスのようなビッグクラブのサポートのあるクラブと、配信者が100%のオーナーを務めるクラブとでは組織運営に大きな違いが生まれるでしょう。キングスリーグが大きくなるにつれて配信者以外の存在感が大きくなってきています

参考記事:ペルシータはロス・トロンコスの一部を売却し、チームに何が起こるかを説明

拡大→増益のサイクルを踏めるか

こうしてキングスリーグが巨大化する一方、選手の給与は依然低いままです。現状のキングスリーグに関する不満の声で最も多いのは給与規制の問題でしょう

2023年度の純利益が5400万円であるため、喫緊の課題である選手の低年俸問題は中々解決はしなさそうです。この純利益の状態でサッカー界のような選手の給与設定をすると一瞬で赤字に転落するでしょう。現在選手の給料は125~380万円程度であり、中々キングスリーグ一本では生活ができない状態と言えます。

注目度の割りに報酬が見合っていない

現状のキングスリーグは注目度のわりに報酬が見合っていない実態があり、南米リーグでは賄賂が常態化して実際に給料を過払いされた選手がスペインリーグで出場停止を受けている報道がされています。

これは、トロンカスの現在のスターであるサラ・イスマエルがまだアニキラドーラスにいた頃に巻き起こった論争によるところが大きい。同選手は60日間の出場停止処分を受け、チームは6ポイントを失った。イスマエル本人は、その理由は本来支払うべき金額よりも多く支払ったためだと説明した。

参考:「スタジアムのゲートで支払いが済んでいる」:キングスリーグ・アメリカズの選手への過払いが明らかに

こうした状態を改善するためには、リーグが拡大してもっとキングスリーグ自体に価値が出てくるようになる必要があります。

キングスリーグが拡大するほど収入が増える

キングスリーグの規模が拡大するにつれて資金調達がやりやすくなったり、スポンサーがついてくるのは確かであり、イタリア・ブラジルリーグの開催に合わせてスポンサーは増えています。また、ドイツでの開催が決定的になりフランスでも開催が近いとリークされており、拡大→増益の流れが進んでいずれは選手にも還元されることが期待されます。

キングスリーグ側も別途の奨学金を創設したりするなど、選手の待遇改善には意欲的な姿勢を見せているので、いずれは人気に見合った報酬を受け取れるようになるのではないでしょうか。

現状は拡大の真っ只中であり、状況が改善することを祈っています。




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