らんたん亭ってなに?①➖中高生Cafe➖
こんにちは、らんたん亭マネージャーの川上美喜です。
らんたん亭に長く関わってくださっていて、応援してくださっている方ほど、「らんたん亭の良さをみんなに伝えたいけれど、『らんたん亭とはなにか』を言葉にするのが難しい」という声を持ってる方が、とても多いな、という印象を受けます。
もちろん言葉にならないからこその良さもあることも承知の上で、今日はらんたん亭を「あえて」具体的に言語化しようと思います。
初めましての方も、そうでない方も「らんたん亭とは何か?」という疑問に対する一つの参考として、どうぞ最後までお読みいただければと思います。
らんたん亭ってなんだと思いますか?
「中高生向けの子ども食堂」、「ユースセンター」、「アートスペース」、「なんか家みたいな場所」、「居酒屋」、「中島さんのいるところ」
いろんな答えがあり、もちろんどれも正解です。
いろんなことをやっている団体だということが、らんたん亭のわかりづらさの一因かもしれません。
なので、らんたん亭のやってることを、図にまとめてみました。
「らんたん亭は『対話』を通して『いばしょ』と『きっかけ』を、提供するユースセンター」というのが、私の結論です。
各種事業内容については、改めて説明する記事を書きたいと思います。
そして多くの活動をしているらんたん亭のメインの軸は何かというと、「中高生Cafe(中高生向けの子ども食堂?)」というのが答えになります。
らんたん亭と子ども食堂
みなさんは子ども食堂について、どれくらいご存知ですか?
こども食堂の特徴は、多機能であること。子どもの貧困対策から孤食対応、子育て支援や高齢者の健康づくり、そして地域のにぎわいづくりを担っています。
また、コロナ禍においては、平時のつながりづくりに従事していたこども食堂の約半数が、食材・弁当配布を行い、非常時のセーフティネットとして機能しました。災害多発列島となった日本において、平時・非常時を貫くコミュニティづくりの一つのあり方を示したと言えます。
一方らんたん亭は、全国的に20%しか存在しない「子供だけ」を受け入れる子ども食堂です。
これには理由があります。
子ども食堂では、親子でご飯を食べに行くというのがめずらしくありません。思春期真っ只中、好きな子の話を誰かに打ち明けたい時に、隣にお母さんがいることを想像してみてください。かなり気まずいですね。もうその食堂には来たくないと思ってしまうかもしれません。実際に多くの子ども食堂運営者から、「小学生の時にはよく来てくれていたけど、中高生になるときてくれなくなった」という話もよく聞きます。
また、「中高生〜20歳対象」の子ども食堂は、全国的にみてもかなり希少だと言えます。
もちろんうちには困窮家庭の子も来ますが、普通の家庭の子も来ます。
「困った家庭の子だけおいで」という看板を掲げられたら、本当に困っていても行きにくいですよね。
じゃあらんたん亭は、支援の手が届きにくい中高生が、支援のネットワークからこぼれないようにとの使命感から子ども食堂をはじめたのでしょうか?
なんか、違うようなのです。
代表中島に聞くと
「中高生とは、深い対話ができるから。」
という答えが返ってきました。
らんたん亭は任意NPO団体ですが、単純に困った子どもたちにご飯を食べさせて帰らせる、という場所ではありません。
「アート×教育」と称して、一緒にご飯を作ったり、子どもにケーキを焼いてもらったり、床を張ったり、屋根を作ったり、椅子や指輪も作ります。なんでもやります。
一緒に買い物に行ったり、銭湯に入ったり。そういう生活を一緒に営んでいると、その瞬間は急に訪れます。
「中島さん、俺実はやりたいことがあるんだけど、家庭がめちゃめちゃでメンタルもきつい、自分ではどうしようもない、あきらめるしかない。」
「やってみないと、わからないだろ。一緒に真剣に考えよう。」
本当は、ひとりひとりに、助けを掴み取る力があると、私たちは信じています。悩みを打ち明ける力、人を頼る力、夢に向かって努力する力。
でも、家庭のこと、経済的なこと、気持ちの落ち込み、さまざまな困難から、「自分が何をしたいのか」がわからなくなっている子どもがとても多い。(実はそういう大人も結構いますね)
「無気力感」とも言われますが、インターネットにたくさんの情報があり「頭でっかち」になっている現代の若者は「どうせ社会人になってもつまらない人生が待っているだけ」と思い込んでしまっています。家庭も自分の気持ちもぐちゃぐちゃで、ただ日々をやりすごす毎日の中で、「本当はこれがやりたい」と悩める段階まで、無気力な子どもを立ち上がるには本当に時間がかかります。
何もできないし考えられない「無気力な状態」から、どう助かりたいか、どう助けを掴み取るかを悩み始め、言葉にするまでそばにいて、話を聞いて、自己と向き合う手伝いをする。夢があるというなら手伝う。金がないというなら金になる方法を一緒に考える。
らんたん亭の本当にやりたいことは、単純に飯を食わせることではなく、どう飯を食っていくのか、どういう人生にしていきたいのか、その人自身の可能性を見つけ、信じ、輝かせ、一緒に考え、行動することなのです。
そして、アーティストの集団でもあるらんたん亭のいいところは、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想ができるところです。そこには不可能を可能にする可能性に満ち溢れたアイデアがたくさんあるのです。
「じゃあいい会社に入れるように公認会計士になろう。まずは四年生の大学に進んで、そのあとMBAとろうね。」みたいな、既存の枠組みの最適解ではなく、「うちでカフェをひらいて、1日店長やったら?」「家がない?空き家物件探して一緒に床張る?」「ピアノが練習したい?ピアノもらえるあてを探そう!!」「壊れた電動自転車もらってくれば直せるよ!!」というような地域で実現可能なやり方で。自分の望んだものは、いろんな人に支えられて実現ができるんだという、人生への肯定感を得られるように。
だから、「自分を打ち明けられる『いばしょ』」と、「やりたいことをみつける『きっかけ』」を、たくさん作っていきたいのです。
その対話ができる素養は、中高生からがいいと思ったから、「中高生Cafe」をやっています。
それって支援なの?それって「子ども食堂」なの?と聞かれれば、「支援というつもりではやっていない」「助けようという気持ちではない」というのが代表中島と私の見解です。
一人の人間が、自分の人生に真剣になること、その人が自分自身の殻を破り成長していく姿は、私たち側にも大きな学びを与えてくれます。「大変だったけど、俺、本当に幸せになったんだ」と胸を張って生きていってくれることが、私たちにとっての最大の喜びであり、学びです。それは結果的に支援という言葉で表現できるだろう、というだけ。
うちは、ボランティアも中高生もみんな100円でご飯が食べられます。
それは、支援する側と、支援される側という明確な線引きをしないという決意です。中高生も一緒にご飯をつくるし、ケーキも焼きます。
これが、らんたん亭のアイデンティティです。
本当の幸せって何?
苦しく貧しい家庭で育った子こそ、本当に世の中に必要なもの、本質を見る力があると感じます。彼らは家でも学校でも、排水の陣で、命懸けで生きてきて、とてもしぶとく、世の中の不条理に敏感です。
そんな「無気力」な若者たちにも、必ず生きる力が眠っています。
その力が目覚めた時、サバイバル力に優れた彼らの底力は計り知れません。
日本の高度経済成長は、全国総貧民だった貧しい子どもたちだった人々が作り上げたのです。それは何者にも変え難い、強くしぶとい生命力なのです。
「子どもたちに、将来こうなってほしいという望みはありますか?」
という質問もよくされます。
中島:「とくにはありません」
芸術と文化の発信地を名乗るらんたん亭ですが、子どもたちが全員アーティストになって欲しいとも思っていません。
偉い会社役員や、社長、学者になってほしい、とも思っていません。
夢はもちろん叶えて欲しいし、実現して欲しいですが、
必ずなにがあっても叶えて欲しい、とまでは思っていません。
らんたん亭にいるうちは「俺、ミュージシャンになるんだ」と言っていても、もしかしたら夢半ばで一般企業に就職する子もいるかもしれません。
お金のために普通の会社員として働くのも、本当に素晴らしいことです。ただ、もし生きるため、お金のために仕事に就くとしても、
「まあ、いざとなれば家庭菜園もできるし、地域のおばちゃんがよくあまり物持ってきてくれるし、中島さんに教えてもらったから、家も作れる。食うのには困らない、いつか本当に夢を追いかけたくなったら明日からでもやる」という気持ちで働くのと、
「もうこの仕事を辞めたら俺は路頭に迷って、路上生活だ」と思うのとでは、気持ちの持ちようがぜんぜん違います。
どんな環境にあっても、「なんとかなる、なんとかする」という肯定感を持って、強くしぶとく生きていければ、それだけで人生は豊かになります。
もちろん、そんな自信があっても目の前の仕事は真剣にやるべきです。
ただ、「人間どうとでも生きていける、生きていけるけど、俺はあえてこの選択肢を選んだんだ」という肯定感は、
「お金のために、やむなく、この選択肢しかなかった」という気持ちで働くよりずっといい。
「数ある選択肢の中で、自分がこれを選んだ」という実感があるのとないのとでは、物事に対する主体性も変わってきます。
しぶとく豊かに、生きて欲しい。
それが、唯一らんたん亭が子どもたちに願うことかもしれません。
終わりに
ここまで読んでくれた人がいるんでしょうか?
読んでくれた方がいたら、本当にありがとうございます。
もっと簡潔にらんたん亭を説明したいのですが、やはり難しいですね。
もちろん中島と私が好きでやっていることとはいえ、現実問題お金がかかります。ここまで読んで「そんな社会になったらいいね」と思っていただけた方がいらっしゃったら、投げ銭してください。私たちと中高生が喜びます。(単発寄付)
また、そんならんたん亭の仲間になりたい!もっとらんたん亭を知りたい!という方は、ぜひ「らんたん亭守」の一員として一緒にそういう社会を目指す仲間になりましょう。「らんたん亭守」は以下のURLから月額500円〜のマンスリーサポーターになっていただくことで、ご加入頂けます。
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長くなりましたが、誰もが生き生きと、生き抜ける社会を目指して。
らんたん亭はこれからも、東京足立区で奮闘を続けていきます。