予備試験実務基礎科目で確実にAを取る攻略法
私は得意だと思える科目が一つもなく基本7法についてはいまだに自信がありませんが、実務基礎だけは何が聞かれても大丈夫だと思っていました。過去問と同じようなことが毎年出題されるため、過去問にしっかり答えられるようにしておけば十分合格点が取れると分析していたからです。過去問さえ回していれば確実に点が取れ、かつ他の受験生があまり力を入れていない、これほどのボーナスステージはありません。
民事実務基礎の攻略法
①要件事実
②民事保全法・民事執行法
③二段の推定
④法曹倫理
⑤その他
①要件事実
要件事実という概念を初めて知って以降ずっとわけがわからず、「せり上がりって何???」と思いながら焦って市販本をいろいろ買い漁ってみましたがそれでもわからず、結局ちゃんと理解できたと言えるのは論文合格後に口述の勉強をしているときでした。
ではどう乗り切ったかというと、ひたすら丸暗記していました。以前書いた「究極的に怠惰な人間が予備試験に合格した勉強法を紹介します」というnoteでも紹介したように、暗記量をなるべく減らすために要件事実の「個数」だけ覚え、後からこの個数ならこんな内容だろうと当たりをつけていました。過去問を検討しているうちに意外とパターンが少ないことがわかりこれなら何とかなりそうだと思えるようになりました。
逆に言うと民事実務基礎のヤマは要件事実を覚える(暗記する)ことだけです。ここが勝負です。設問1で要件事実をきちんとクリアできればその後かなり気が楽になります。それ以外特別に何かを頑張る必要はなく、とにかく過去問を解いて形式に慣れていくことが大切です。
②民事保全法・民事執行法
勉強したことがないので初めて見たときはぎょっとしましたが、過去問を見ると毎回同じことしか聞かれず、せいぜい3パターン程度で対応できます。保全・執行はそれだけで一つの重要分野なので深く理解したければいくらでも時間をかけて勉強することができますが、ひねった問題が出ることも考えづらいですし、過去問で聞かれたことのあるパターンを覚えるだけで必要十分です。私は占有移転禁止の仮処分は「玄関に張り紙を貼って分からせる」、処分禁止の仮処分は「登記で分からせる」と覚えると具体的にイメージできました。
③二段の推定
過去問をやっていると「また二段の推定か~」と嫌になってきますが、問題文の事情を拾ってあてはめさせるタイプの問題を作りやすいですし、これだけ毎回出るということは意外と受験生は書けないのかもしれません。2017年・19年に聞かれていたので予想していましたが21年にもドンピシャで出てくれて助かりました。
④法曹倫理
事前に勉強しておく必要はありません。法文に載っている弁護士職務基本規程をその場で読んでそれっぽい条文を探せば十分です。問題作成者が「これを答えてほしい」と思う条文が必ずあるはずです。配点はせいぜい数点、分量も2~3行でしょうし、ここで事前に何かを知らなかったからといって差がつくことは絶対にありません。こんなところに貴重な勉強時間を割くのはもったいないです。困ったら最悪5条(信義誠実)と6条(名誉と信用)という何にでも適用できそうな一般条項を引いて常識的に考えればなんとかなります。
⑤その他
民法で事実認定をさせる問題を作ろうと思うと、「無過失」、110条の表見代理の「正当な理由」、「信頼関係破壊の法理」などがありますが、どれも普段の民法の勉強の範囲内で対応できます。管轄・移送・多数当事者訴訟なども民訴の短答知識で解けるようになっているので大丈夫です。
刑事実務基礎の攻略法
①犯人性の推認
②勾留・保釈の要件
③公判前整理手続
④誘導尋問
⑤その他
⑥おすすめ教材
①犯人性の推認
犯人性を推認させる問題は2011年・12年・13年と続けて出題され、20年・21年とまた連続して出ました。これも過去問をやっていれば掴めてきますが、大きく分けて2パターンしかありません。
1つ目は直接証拠型、つまり目撃者がバッチリいるパターンです。目撃者と被疑者に面識があるか、記憶が薄れていないか、周囲は暗くなかったかといった点を検討します。21年は「目撃者の視力が左右とも裸眼で1.2」→「だから目撃者の証言は信用できる」という問題が出ました。うらやましい…。
2つ目は間接証拠型です。問題文にいろんな事情が散りばめられているので結びつきが強そうな順に書いていきます。
たとえば「犯人は令和3年12月21日午前3時頃、V方からカメラを持ち去ったところ、Aは同日午前4時頃、V方から300m離れたコンビニで被害品と同型のカメラを所持していた。」とか、「防犯カメラの映像によれば犯人は身長180cm程度で白いパーカーを着用していたところ、Aは身長178cmで、白いパーカーを所有している。」のように、「犯人は○○のところ、Aは○○」と書くと書きやすいです。
上の例だと、前段はいわゆる近接所持の法理として強い結びつきがあります。一方後段は、身長180cmで白いパーカーを持っている人など山ほどいるので結びつきは弱く、書くときは後ろの方に回します。
②勾留・保釈の要件
毎度おなじみですね。あてはめのパターンは過去問で出尽くされているので、「被告人また介護が必要な親と同居してるな」「また独身で職を転々としてるな」などと思いながら淡々とあてはめればOKです。何も難しいことはありません。
③公判前整理手続
刑訴法でちゃんとやらないところなので最初のうちは苦手意識を持っていましたが、316条以降の条文に書いてあること以上の知識は必要ないので、過去問をやりながら慣れていけばそれで足ります。
他の科目ならあらかじめ条文を覚えてサッと引けることにアドバンテージがありますが、実務基礎科目は90分と多少時間に余裕があるので、落ち着いて条文を見ながら検討していけば十分間に合います。
④誘導尋問
これも同じく最初は「規則なんて知らんし」と思っていましたが、過去問で出るパターンはほとんど同じで、刑事訴訟規則199条を引ければそれで勝ちです。ここで差がつくことはありません。
⑤その他
伝聞法則、接見指定、故意の認定といった問題はすべて刑法・刑訴法の範囲なので特別に勉強する必要はありません。
伝聞法則は刑訴法で14年・15年・16年、刑事実務基礎で15年・17年・19年・20年と出題リスクが2倍あるわけですが、21年はどちらも出なくて命拾い(?)しました…。22年は間違いなく出るはずです。
⑥おすすめ教材
2022年1月に出た伊藤塾の『刑事実務基礎 第2版』は非常に出来がいいです。2021年までの過去問の答案例と押さえておくべき知識が簡潔にまとまっており、これ一冊でAを取るレベルまで引き上げることは十分可能です。