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元気いっぱいと断末魔の違い

ちょっと前に10年選手の洗濯機をついに買い替えた。

数年前から洗面所のドアを閉めているにもかかわらず「ぎゅおーぎゅおー」と家中に響き渡るモーターの爆音。その声を聞こえないふりをしてやり過ごしていたけれど、ついにある日から、ふたつあるゴミ取りネットの片一方にゴミが全くたまらなくなってしまった我が家の洗濯機。

もうこれ限界じゃん……。
と口にしてみても、一応回転、排水はしてくれるので故障!と声高らかに買い替えを宣言出来る感じでもない我が家の洗濯機。

仕方なく、洗濯槽の掃除をこれでもかというくらい頻回にし、詰まりだけでも何とかならないものかと酸素系、塩素系と手を変え品を変えて掃除を繰り返してみたが、どれだけ頑張ってみたところで片一方のゴミ取りネットにはゴミがこれっぽっちもたまらない我が家の洗濯機。

それどころか、これまでは洗濯槽の掃除をすればマシになっていたタオルのニオイが、取れるどころかドンドン蓄積されていっているような気が……。そんな我が家の洗濯機。

くそ。

もういっそのこと、潔く壊れてくれればいいのに。

願ってはいけないことを願うようになってしまった自分自身に罪悪感を感じながら洗濯機を格闘する日々を送る。
そんな我が家についに救世主が現れたのはほんの少し前の事。

そう。

アレ

である。
阪神タイガースのアレ
アレのおかげでセールが開催される!
いえーーーーい!!

我が家の大型家電購入は家人ルールにのっとり、家人イチオシのJoshin一択。なので、もう、神様仏様アレ様Joshin様なワタシの心はウッキウキ。

ということで、アレセール開催期間中に地元のJoshinへとひとっ走り。

念願のシン洗濯機Getだぜ!

そんな感じで新しくなった洗濯機と共に生活を始めた我が家だが、第一回・お披露目洗濯披露会を開催したあの日のことは忘れない。

静かなのだ。

とてつもなく静かなのだ。

モーター音などこれっぽっちも聞こえてこない。

扉を開けていても全然聞こえない。

なんなら冷蔵庫のモーター音の方がでかく感じる。
(これは冷蔵庫の方が物理的に近いからというのが大きいけど、そんなことは気にしない)

「え?壊れてる?新品やのに?うそ?」と、いそいそと何度も洗濯機を見に行く我がファミリー。
しかし洗濯機は健在だ。

そしてモーター音が聞こえないということは、注水音が大きく感じるということで。

ちょろちょろちょろちょろ……

注水が始まると何度もトイレのドアを開けて確認しに行く我がファミリー。

「トイレの水が止まらんようになったんかと思ったわ」

とっかえひっかえトイレのドアを開けて確認しながら口々に同じ言葉を口にする我がファミリー。
しかし、トイレは健在だ。

気持ちはわかる。気持ちはわかるけど、トイレのドアを閉めて数秒後、誰もその間入ってないのに水だけが流れ始めることは無いと思うよ?

なんて他人事のように書いているワタシ自身も、トイレのドアを何度も開け閉めしたのはここだけの話。


そんな洗濯機と少し仲良くなってきたある日の事。

家人がトイレのドアを開けたのち、洗面所のドアを開け「あ、洗濯機回ってるんや」と言いながらリビングに現れた。

「めっちゃ静かやろ。ていうか、これが本来の音やから。うるさくなったら修理とか買い替えとかの合図やで!」

と我が手柄のように鼻息荒く言うワタシに対して家人はこう言った。

「でもさ。元気無いようにかんじるよな」

「?」

「前の洗濯機、『元気いっぱい!』って感じで洗濯してくれとったやん」

「?!」

「なんか、新しい洗濯機は活気がないっていうかさぁ……」

「?!?」


いや。
あれは元気いっぱいどころか、死にかけの断末魔や……


そう伝えたワタシの言葉に納得した様子はなく「やっぱり元気いっぱい『洗濯してますよ!』って感じの前の洗濯機の方がさぁ」などと言い続ける家人の下で働くのは死んでも嫌だな。と再認識したあの日のことも忘れない。


ブラック過ぎ!!!!

でも、新しい洗濯機にしてからタオルのニオイがかなりマシになってきたことにより、もうあの洗濯機は寿命だったのだとわかってくれたはずだ。

そのうちあの「元気いっぱい」な音が洗濯機の断末魔だと気がついてくれるはずだ。


とワタシは信じたい。

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ふくりと
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