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最後の最後までありがとう。我が相棒。

勤続15年のジーパンの右ひざが破れたのが去年の冬で。

左のひざも破れたのが今年の春で。


ダメージジーンズを好まない子に

「ひざ破れてるの知ってる?」

なんて冷たい目で見られながら言われても

「オシャレのわからんヤツめっ!それに家の中だけやからなんの問題もナシ!」

なんてことを言いながら履き続けていたこの相棒。


相棒との出会いは、子がまだベビーカーに乗っていた頃までさかのぼる。

あれはそう、サクラの花がまだツボミでピンク色なんて感じられなくて、冷たい風がぴゅーぴゅーと吹いていた昼下がり。お散歩を兼ねて近所のショッピングモールをウロウロしていた時のこと。産後の腹回りが全く回復しないことにより、着れる洋服にかなりの制限がかかっていたワタシは履けるものが極端に少なくて。

あの日、気が付くとジーンズショップにフラフラと吸い込まれていた。

ベビーカーをのぞき込むと、ちょうど子はお昼寝タイムに突入したところ。この絶好のチャンスを逃すわけにはいかない!と意気込んだワタシは、新しいズボンを買うことにした。

出会いは突然に。


~長くなりそうなので、中略~

そんな相棒を今日もいつものように履いていたワタシは、和室で右膝を立てて畳に座っていた。目の前には右ひざのダメージ部分。もう我慢できない。ついつい誘惑に負けて裂け目を引っ張ってしまったのであった。


そう、ワタシはささくれやかさぶたを剥くのが止められないオンナ。


無心で裂け目を引っ張っていると「ぴりぴりぴりぴり」と小気味よい音を立て、裾まで一直線に割けた我が相棒。

一気に右足が寒くなる

右手と左手から伝わるイイ感じのほんの少しの抵抗。
目の前でモーゼの十戒のようにきれいに割れていくズボン。
そしてそれを見ている、口にほんの少しの微笑みをたたえながら目がちょっといっちゃってるヤバイワタシを想像すると、とてつもなく楽しくなってきた。

右足がスースーするのも加わって、ものすごくテンションがあがる。


面白い


立てていた右足を倒し、左足を立てる。

おっ、こんなところにイイ割けがあるじゃないか!(←

楽しくなってしまったワタシは、左ひざの裂け目にも手を伸ばすとおもむろに左右に引っ張り始めた。

「ぴりぴりぴりぴり」

左ひざも右ひざと同じように小気味よい音を立てながら、裾まで一直線に裂けた。ふふふっ。超楽しい。

右足に続き、左足も一気に寒くなる


もう笑いが止まらない。

なんだかわからないけど、とてつもなく幸せな気分が押し寄せてくる。こんなに柔らかな楽しい気分になったのはいつぶりだろう?心の奥からゆっくりと湧き上がってくるこの楽しさ。

そんな幸せな気分にずっと浸っていたかった。

いたかったけど、両足の寒さで一気に現実に引き戻された。

( ゚Д゚) イッタイワタシハナニヲ…


このズボンを履き続けていたら、ひざが冷えてものすごく痛くなる未来しか見えない。仕方がない。あきらめて履き替えよう。そう思い、立ち上がったがここで試練が立ち塞がる。

今ワタシがいる和室からタンスのある部屋に行くには、子が常駐しているリビングを通過しなくてはいけない。

こんな両足をひざから下むき出しにした奇妙なズボンを見られてしまったら、ワタシが逝ってしまった時お通夜の枕元で「あのズボン覚えてる?両足ぺローンってなっててありえへんかったよな~」なんて涙を浮かべながら笑い話として語り継がれてしまうに違いない。

そんなおかしな記憶ばかりを残していくわけにはいかないワタシは、何とか両膝から下の布がぺろぺろしないように気を付けつつ、子がいつもいる場所に背中を向け前部分が見えないように慎重にリビングを通過した。


難所を通過してホッとしたワタシは、台所の前まで来た安心感も手伝って、普通に歩行しはじめていた。両膝から下の布をピラピラとなびかせながら。なんならピラピラをいかになびかせられるかと、モデルウォークもどきになっていたかもしれない。

そんなご機嫌ウォークの最中、台所から不意に

「ちょ!!!ズボン!!!(笑)」

と鋭いツッコミがはいった。

リビングの定位置ではなく、なぜだか台所に潜んでいた子は涙を流しながら笑っている。

そして

「ちょ!何それ!あっちからもっかい歩いてきて!」

というリクエストまでされることになったのだった。


「歩くたびにw ズボンw なにそれw」

と散々笑われた挙句「記念にそのズボンとっといてや」と無茶な要求をされた我が相棒。最後の最後まで本当にありがとう。大好きだよ。


でも子よ。置いておくというなら、そのうち外で履いてもらうよ?

(´ー`) モチロン タニンノフリ スルデ


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