
11. JUSTICE / オリジナルタロットカード解説
オリジナルタロット版のカードに込めた物語
剣を奪われた愚者は、走るのに疲れてやがてとぼとぼと歩き出した。
「あんこも一緒じゃなきゃやだよ」
『難しいことを・・』
何やらやり取りをしている声が聞こえてくる。
愚者は傍により様子を伺いながら落ち着いたところで、声の主『正義』に声を掛けた。
「こんにちは、何をしてたの?」
『たいやきを半分こにしてたんだ。あんこの量も皮の量も一緒じゃなきゃというから大変だよ』
そう言うと正義は手に持っていた天秤を高くあげてみせた。
「横じゃなくて縦なら一緒にならない?」
『それだと全く一緒になるけど、好みもあるだろう?あの子は頭が好きで、あの子はしっぽが好きなんだよ』
なるほど・・・愚者は納得した。
『一緒がいいけど、其々の好みも優先したいんだ。じゃあ単純に半分こにして、頭をあの子が、しっぽをあの子が貰った場合、きっと彼らは「同じ量かな」って考えるんだよ』
「自分が少ないと嫌だから?」
『それもあるだろうけど、もう一つあるだろうね』
「どういうこと?」
『自分のが多かったら相手が悲しいかな、自分のが少なかったら相手が気にしちゃう。お互いを大事に想うからこその葛藤かな』
「相手が喜ぶならいいやって、自分のを少なくしちゃじゃだめなの?」
『ダメだよ』
そう言うと正義は立ち上がり去って行った。

タロットカードにおける『正義』の意味
タロットカード本来の意味に加えて、私版のオリジナルタロットの解釈も載せています。広義では同じ意味ですので、どちらを採用してもらっても構いません。ピンときたものを受け取ってください。
タロットカード本来の『正義』の意味
正位置の意味
公正・公平、善行、均衡、誠意、善意、両立、慈善
逆位置の意味
不正、不公平、偏向、不均衡、一方通行、被告の立場に置かれる
オリジナルタロット版『正義』の意味
正位置の意味
公平と調和、自己理解と他者理解、正しい判断と行動、愛と責任の均衡
逆位置の意味
不均衡と誤った判断、自己中心的または自己犠牲的な愛、他者の不誠実さに気づかない、境界線の喪失
これは私独自の解釈なので少し飛躍してる部分があります。
愚者が『自分を知ろう』と自分と向き合うことを決め、自分の中に飛び込んでいく旅です。その旅路の途中で、色んなことを思い出してきた愚者、それらを内包するように色んなものが計らいとして表れ始めます。まず現れたのは『正義』でした。
正義は公平を教える存在です。
大アルカナの旅で、愚者が最初に想い出したのは女帝である彼の母でした。
彼女に愛されたいとしながらも、彼女が自分自身を愛して、他人にも同様に愛されている事で自分は特別になれないと嘆いた相手です。
その心情の奥底にある『大事な想い』を見つける手助けをしてくれているのが正義です。相手を想うだけが愛ではありません。愛は循環してこそなのです。その循環は独りよがりでは出来ません。
まずは自分を知る事で自分の愛の形や表現方法が判ります。そうすることで他者の愛の形が判り、その表現方法を理解することに繋がります。
相手のことがどれだけ好きでも、受け入れらない愛の表現方法もあるでしょう。それを「好きだから」という理由だけで受け入れ続けたら、自分の愛は傷つき尊重されなくなってしまいます。
他者への配慮は愛から生まれるものの一つです。好きであればよりその配慮は強くなり、自分の大事な境界線を越えてまで受け入れてしまうかもしれません。その時は良くても、最初は小さなその境界線の歪が、やがて大きな歪を生んでしまいます。
だからこそ自己の境界線は守るべきだ、そして相手の境界線も守る事で均衡が保たれると正義は教えてくれているのです。
境界線を作り守るのが『自己の正義』でどんな人間関係にも必要な大事なものだと私は考えています。
愚者の母は、愚者の母なりに彼を愛していました。
けれど幼い愚者はその愛の形が判らず、愛されていない、特別じゃないと嘆いていたんです。何でもかんでも母の一番でありたかった愚者は、母の境界線を越えて愛を得ようとしてしまってたんです。それは自分の境界線が不確定が故であり、惜しみなく注いでくれる母の愛を理解出来てなかっただけなんです。
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2024年3月27日
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