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2/2:おさかなのあんこのやつ

「どうして冬ってさむいんでしょう」
「ん? 地球の公転軌道と地軸の話か?」
「そんなわけないですよね」
 小型こたつに埋まったまま、しぐれがため息をついた。
 だが、ため息をつきたいのは岳のほうである。

 いくら猫とこたつの相性がいいからといって、朝から晩までこたつに入っているのは良くない。しぐれは仔猫だが、幼児だ。
 日にもあたらないといけないし、運動も必要である。
 少しくらい外に行かなくてはいけない。
「公園は嫌だということだな」
「さむいですからね」
「……まったく、お前というやつは」

 昼過ぎ、一日で一番暖かい時間帯だ。今日は晴れてもいる。風は多少冷たいが、日があるうちなら冷え切ることはないと判断した。
 なのに、この調子だ。

「買い物にも行かないつもりか」
「夕飯のおかいものなら岳だけでどうぞ。しぐれはおるすを守っていてあげます」
 留守を守るといったって、現状、特に脅威もないのだ。あえて言うなら空き巣とか、そういうものかもしれない。が、しぐれの戦闘能力はゼロだし、そもそも危ない目に遭わせるつもりは毛ほどもない。

 岳はやれやれとため息をつき、こたつを出て立ち上がった。
 急に背もたれがいなくなったのが嫌なのか、しぐれが顔を上げた。丸い頬がぷくっと膨らんでいる。

 奥の手を出すしかないか。

「じゃあ、今日はアレはナシでいいんだな」
「アレですか?」
「おさかなの」
 あんこのやつ、と言い終わるより先、岳の視界からしぐれが消えた。

「……は?」

「がーくー、早くー。いきましょうー」
 声がしたのは玄関からだ。
 岳が慌てて向かうと、しぐれはすでに、靴を履き、先月買ったボアコートを着て、毛糸の帽子までかぶっていた。

 仔猫で幼児は体力がない。
 だが、ミューミントの瞬発力は侮れないのだ。

(NK)
※「おさかなのあんこのやつ」:たい焼きの別名(しぐれがつけた)


岳が貢ぎまくった冬物

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