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2/21:うたう

「こ・こ・か・らキラキラ こ・こ・か・らシャイン♪」

 リビングでしぐれが歌っている。
 風呂を洗っているから岳には見えないが、たぶん踊っているだろう。いや、踊り狂っているという方が正しいかもしれない。

「ぴっかぴかぁのエブリディ!
 コ・コ・カ・ラ・シャインきらきらしましょぉおおー♪」

 ドラッグストアのテーマソングは大抵どこのものでも、店名が連呼される。ココカラシャインの曲もそうだ。
 つまり、ここからが本番。

「ぴっかぴかぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!
 きっらきらぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!
 ぴっかぴかぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!」

 以下、エンドレスリピート。
 岳はこっそりため息をついた。
 今日はコレか。そういう気持ちだ。

   ×   ×   ×

 湯船につかっている間も、
「ぴっかぴかぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!」

 体を拭いているときも、
「きっらきらぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!」

 歯磨きを終えて、パジャマに着替えさせている間も、
 ぴっかぴかぁのエブリディ! コ・コ・カ・ラ・シャイン!」

 頭の中がきっらきらぁのぴっかぴかぁでいっぱいになってくる。

   ×   ×   ×

「もういいから、早く寝なさい」
 岳はしぐれをベッドに寝かせて、さっさと布団をきせかけた。
 しぐれはもう十分に眠そうである。よし。

「……おやすみなさい、がく」
 むにゃむにゃ言って、横向きになって背中を丸めるから、小さな背中をとんとんしてやるとまぶたがあっさり落ちた。

「おやすみ、しぐれ」
 岳は立ち上がった。
 まだ二〇〇〇を過ぎたところで、まだ片付けることがあるのだ。家事というのは細々と、やることが多い。
 まずは夕食の皿洗い、その後はアイロンがけをしなくてはならない。

「ぴっかぴかーのエブリディ、ココカラシャイン~」

 段取りをしながら口ずさんだ鼻歌は、完全完璧に無意識だった。



(NK)


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