2/1:こたつ
「しぐれ、そろそろ飯が出来上がるから、手を洗ってきなさい」
岳がキッチンから声をかけたが、返事がない。
いつもなら飛んできて、皿を出すだのなんだのと、お手伝いしたがってうるさいくらいなのに。
どうかしたかと気になって、岳はコンロの火を切りリビングをのぞいた。
しぐれの姿がない。
「しぐれ?」
最初に確認したのは窓だ。カーテンにも乱れはなく、窓の鍵はしっかりかかっていた。外に出たのではなさそうだと判断する。
かくれんぼか? いや。
岳は改めて室内を見回した。
テレビはついたまま、夕方のローカルニュースが流れている。
エアコンもホットカーペットも正常作動中だ。そして、最近、購入したばかりの小型こたつのテーブル面にはプラスチック製のコップがあり、リンゴジュースが二センチほど残っていた。
そして、ソファと小型こたつの間には、中身の抜けた小さなトレーナーとサロペットがある。
なるほど
岳は腰をかがめて、そっと。こたつ布団をめくった。
赤い光に照らされて、子猫が転がっていた。いわゆるヘソテン寝だ。
ぽっこりと膨らんだ腹がゆっくり上下に動いている。
「……そういえば、気圧が下がるんだったかな」
天候が良くない時、多くの動物は寝て過ごすという。猫もそうだ。
飯の時間だし、こたつに入って寝るのは健康に良くない。起こすべきなのは間違いないが、完全に寝入っているのを叩き起こすのは気が引ける。
どうしたものかなぁ、と、岳はのんびり頬を掻いた。
(NK)
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