ミッションインポッシブル 第2話
時計台キャンパスで多くの寮生と多くの大学職員が走る。
ニセ生協トラックでやってきた寮生40人。
遅れながらそれに気付いて正門から追いかける職員100人。
正門の外でしゃがんで待ってた寮生300人。
リードしているのはトラックの寮生40人だ。
時計台の前にあっという間にたどり着いた。
しかしそこで、時計台の建物の中から役員会の人たち10人が出てきた。
(役員)「これを止めないと文科省の予算が減るぞ」
役員の人たちはおびえながら自らを奮い立たせていた。
そしていっせいに、寮生たちに会社四季報を投げ始めた。
(役員)「就職しろー!」「普通は4年で出るんだぞ!」
投げていくうちに、役員たちの恐怖と焦りはいつの間にか怒りの感情に変わっていた。
会社四季報の砲弾で寮生たちは足止めをくらった。
「寮費滞納者!前へ!」
そこで指揮をとっている寮生が声を上げて指示をする。
すると寮費の支払いを滞納している寮生たちが最前列に並び、盾となった。
会社四季報の砲弾から隊列を守り、時計台にじわじわ近づく。
(役員)「これ無理、多すぎ、バタリアンだ」
少人数しかいない役員の人たちは、ほとんどが戦意を喪失し始めた。
(別の役員)「まだあきらめるな!」
すると次は、役員が大量のビー玉を地面に転がしてきた。
足もとにビー玉が転がってきて、寮生たちはみるみる転んでいく。
大学職員もコロコロ転んでいく。
そして寮生も職員も、地面に転がるビー玉をせっせと拾い集め、ポケットやカバンにしまい始めた。
投げ返したりしたら、また地面に転がり、自分がまた転ぶからだ。
寮生も職員も、小学生の頃の草むしりのように、しゃがんでビー玉をコツコツ回収し、地面からきれいになくなった。
時計台占拠のチャンスだ。
寮生はハシゴを最前列に持ち運ぼうとするが、その刹那。
上空に大型輸送ヘリコプターが飛んでいた。
ヘリからパラシュート部隊20名が降りてきた。
(寮生)「何だあれは?使徒か?」
(役員)「まあそんなところだ」
パラシュート部隊の人たちは鍛え込まれた身体付きをしている。
着地してパラシュートを体から外し、瞬速かつ強烈なタックルを寮生にぶちかましてきた。
パラシュート部隊の人たち。彼らは日大生だ。
「時計台防衛に協力したら、京都大学学生部厚生課が就職の推薦書を書く」
このような契約が日大生と厚生課の間で取り交わされていたのだ。
日大生が強い。屈強すぎる。体格差が圧倒的だ。
日大生のタックルで寮生が次々と吹き飛ぶ。
彼らは防弾チョッキとヘルメットの装備だけで、巨大な麻薬カルテルをタックルで壊滅してきた猛者だ。
寮生がいくらやる気出したところでまったくかなわない
電撃タックルを被弾して紙切れのように飛ばされていく。
(ルーサー)「イーサン、さすがにこれは無理だ。」
(イーサン)「…」
RPGタックルが発射された。2台のニセ生協トラックが爆破された。
(ルーサー)「クッ!レンタカーが…」
寮生が次々と背負い投げされていく。
(ルーサー)「大敗北だ。逃げよう。捕まると桂キャンパスの地下で監禁になるぞ」
(イーサン)「ルーサー、落ち着くんだ」
(ルーサー)「微積の勉強だけを3年間やらされるんだぞ!」
「降参します」
一人の寮生がふらつきながらかろうじて立って言った。
しかしタックルをくらって吹っ飛ばされた。
『時計台の近くにk寮の寮生がいたらタックルをすること。それにより京都大学学生部厚生課が就職の推薦状を書く』
これが取り交わされた契約の文章であり、寮生が降参するとかはまったく関係ないのだ。
寮生たちはハシゴを放棄し逃げ始めた。
そしてリンゴの木の研究をしてる役員が「研究の役にたつ」とか言ってハシゴを頂いた。
時計台を守る側の大学職員たちは、日大生が出現してからの急変した過酷な戦場を見て、恐怖に取りつかれ逃げていった。
(ルーサー)「イーサン、脱出するぞ。あれ、イーサン?」
ルーサーが振り返ると、イーサンがいつの間にか消えていた。
(ルーサー)「イーサン!どこだ!」
時計台占拠の勝負は当局側の圧勝という形になった。
役員会の人たちは大いに喜んだ。
(役員)「おれたちって、まだまだイケるんじゃね?」
気づいたら戦場に、買い物袋が落ちていてビールやおつまみがたくさん入っていた。
時計台占拠の後に打ち上げをする予定で寮生が用意したものだ。
(役員)「よーし!宴会をしよう!」
寮生が用意したビールやおつまみを、役員の人が拾い、宴会を始めだした。
リンゴの木を研究する役員は、回収したハシゴを時計台にかけた。
「我々役員会こそが時計台占拠をすることが可能なのだ」
そうして役員会の人たちはみんな時計台にのぼった。
「乾杯~!」
時計台で役員たちはビールで乾杯を始めた。ラブマシーンやYMCAを歌っている。
残っている寮生は意識を失ってるか、立てずに動けない。
正門を防衛するはずだった大学職員はいない。ひどすぎる戦況にビビッて逃げていった。
日大生は生協でカツカレーの食い放題。役員会のおごりだ。
一方そのとき、東一条通では窓の中が見えないような、あやしげな黒色のバンが走って正門に近づいていた。
(続く)