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【技術読み物】文字やイラストを彫り込む

指環等、ジュエリーやアクセサリーの表面、或いは内側に、文字やイラストを入れる場合、主に

  • 彫金(タガネ彫り)

  • 打刻

  • 指環彫刻機

  • レーザマーキング(浅彫り)

  • レーザ彫刻(深彫り)

が使われます。それぞれの特徴について見てみましょう。
※本文中のタガネ彫りは「和彫り」です。

彫金(タガネ彫り)

タガネで文字やイラストを彫り込む方法です。彫った部分は鏡面となります。
「デザイン画→下絵」でデザイン画を見ながらの転写、「下絵→彫金」で手作業による彫り、と、都合二回手作業が入る上、タガネ彫の線は末端が細く尖るか丸くなるかのどちらかである為、デザイン画と100%同じにはなりません。言ってみれば「タガネという道具を使ってデザイン画を模写する」といった感じです。
道具による制約が多い為、逆にどの様な仕上がりかが想定できないと、良いデザイン画は描けません。

線香花火のプレートピアス SV925/ロジウムメッキ
※「石を留める」案は不採用

打刻

いわゆる「刻印」です。先端が小さい文字やマークになった刻印を、打ち込む、或いは押します。
作業は手軽な反面、必要な文字の刻印全てを揃えなくてはならない上、0.6mm、0.8mmといった文字高さの違いもある為、初期コストが非常に掛かります。基本的にK18等の金性以外は英大文字と数字、「&」や「to」といった少数の記号だけなので、表現力は豊かではありませんが、加工時の並びの揺らぎが手作りっぽさを引き立てます。指環の内側に打刻する為には、途中が曲がって「避け」ができている曲がり刻印か大曲がり刻印を用います。
文字に光沢はなく、加工後に外側に「カエリ」と呼ばれる出っ張りができます。金属を押し出した結果です。そのままの方がはっきりと見えますが、磨き直して平らにすることの方が多いでしょう。
打刻の最大の特徴は「重さが変わらない」という点です(但し加工後にカエリもそのまま残す必要がある)。あくまでも金属の変形による加工であり、切ったり削ったりと、重さが変わる要素がありません。なので、インゴットの表示は打刻一択なのです。

CHI CERCA TROVA(イタリアの諺:求める者は見出す)の指環 SV925

指環彫刻機

左側は指環彫刻機全体像、右側は3mm幅の真鍮に彫ったもの

自由度の遥かに高いレーザが普及した近頃では活躍の場が減りつつありますが、「ダイヤモンドの針で指環内側を引っ掻いて文字を彫る」機械です。機械の下部にある文字盤をなぞると、それと同じ様にダイヤモンドの針が動いて、指環内側に文字が描かれる仕掛けです。簡単な様でいて、綺麗に彫り込むのは案外難しいです。
別売り、或いはオリジナルの文字盤をセットすれば、彫り込める文字の種類を増やせます。ダイヤモンドで彫る為、文字は光沢がありキラキラとします。
しかし、最近では使用が難しくなっていて、文字高さが1mm位あることから、細く内甲丸の強い指環には物理的に彫り込むことができないのです。

レーザマーキング

まず、レーザ加工について多くの方が誤解されていますが、「レーザは連続的に加工される」訳ではありません。高い周波数でレーザ光線が明滅し、ポンポンと金属表面にドットを打っていくのです。それが連続して線や面になるのです。

レーザ加工は、「レーザマーキング」と呼ばれる浅彫りと、「レーザ彫刻」と呼ばれる深彫りに分かれます。
レーザマーキングは金属表面をザクザクに荒らします。その為、光沢面にはっきりとしたパターンとして見える様になる訳です。逆に艶消しになった部分に加工しても良くは見えません。
加工した箇所は荒れる為、「光沢で彫る」ということはできません。
デザイン画のデジタルデータをそのまま加工機に渡す為、基本的にデザイン画の通りに加工されます。文字もWindowsで使えるフォントは大概使えます(加工機をコントロールするのは大概MacではなくWindows機です)。レーザのドットは非常に小さい為、細密な図案でも再現が可能です。
レーザマーキングの注意点は、加工が非常に浅く、へら掛けや磨くだけで簡単に消えてしまうという点です。なので、ジュエリーショップでの「新品仕上げ」では、磨き直し後に再度レーザマーキング加工をする場合もあります。
細密な表現が可能な一方で「機械加工っぽいのが嫌」と、打刻の方を選ばれる方も少なくありません。

レーザ彫刻

レーザの出力を上げる、繰り返し回数を増やすなどして、レーザマーキングよりも深く彫り込むことができます。こちらも彫った部分はザクザクになっています。

レーザの当たった部分の金属は蒸発してなくなりますので、加工機には煙に含まれる貴金属を回収する仕掛けを付けておかなければなりません。
深彫りの方がはっきりと見えるのに、何故マーキングが共存しているかというと、加工時間、即ちコストが大きく異なる為です。加工時間が長くなれば加工費も高くなります。

お手軽シグネットリング「ぱにゃにゃんだー」 SV925
デザイン画→レーザ深彫り直後→彫り込み部を燻したもの

凹凸がはっきり付く分、この様な加工も可能になります。タイトルに使っている写真の指環も、レーザで彫り込んだ部分に白色樹脂を流し込んだものです。

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