防衛費の増額
お疲れ様です。石川1区のあらい淳志です。
いま、防衛費の増額が大きな論点になっています。
これから、年末にかけて、「国家安全保障戦略」や「中期防衛力整備計画」など防衛3文書の改定が進んでいくわけですが、
今回政府に提出された有識者会議の報告書は、今後の防衛政策やその財源論のもとになっていくものです。
ここ最近は、政府与党も、防衛費の対GDP費2%を目指すとの方針を掲げるようになってきていることは、皆さんもご存じの通りです。
ロシアによるウクライナ侵攻や、北朝鮮による度重なるミサイルの発射、中国の台頭など、国際社会、あるいは日本周辺の安全保障環境も厳しさを増し、不確実性が高まってきています。
必要に応じて、防衛政策を見直し、国を守る備えを強化することの重要性は論を俟ちません。
防衛費の増額についても、必要な議論は、責任をもって進めていかなければいけません。
国際社会への説明
防衛政策において重要なことは、自国の守りを固めつつ、他の国に対しては、不必要なプレッシャーを与えないことです。
なぜ、防衛費の増額が必要なのか。
どういった目的で、どういった内容で、防衛政策を展開するのか。
それを透明性をもって説明し、国際的な理解を得ることを、ないがしろにしてはいけません。
当然、国の守りに関わることであり、その全てをガラス張りにすることは必要でもなく、好ましくもないわけですが、なぜ防衛費の増額が必要になるのかを国際的に説明するロジックはしっかりと固める必要があります。
一人よがりな防衛政策ではなく、国際社会にしっかりと説明していく。そうした姿勢を忘れてはいけません。
国民の理解
同時に、国民にもその説明が必要です。
いかに国際情勢の上で防衛政策の見直しが求められても、国民からその理解が得られなければ、必要な施策は打てません。
財源を出すのは、国民です。
どうしてそれが必要なのか、説明していくことが政府には求められます。
ここ1年ほどで広まってきた「防衛費倍増論」は、政治的なインパクトに重点があって、その具体的な中身について、しっかりとした見通しがあったわけではありませんでした。
例えば、「反撃能力」の必要性が高まってきたからといって、ではそれが具体的にどういう装備で、どれくらいの予算が必要なのか、見通しが示されていたわけではありませんでした。
そもそも、日本としてはこれまで、こうした「反撃能力」は持たないというのがスタンスだったわけで、そこからの転換を防衛政策としてどう位置付け、説明するのかが定まっているわけではないのです。
現在も、こうした防衛費の増額と、その国民負担のあり方ばかりがクローズアップされていますが、どんな防衛政策が必要なのかという土台の部分を深めなければ何の意味もありません。
当初は財源として、「国債の発行」などという話も出ていましたが、とりあえず難しい話は抜きにして、国債で済ませておけばいい、などというのは最悪のやり方です。
今回の報告書では、「幅広い国民負担」によって財源をまかなうとの方向性が示されていますが、そうであればこそ、国民の理解を得る努力が求められます。
皆さんに負担をお願いするのであれば、どうして、なにに、どれくらい必要なのかが示されないと、国民としても判断のしようがないわけです。
「防衛費は国の守りに関わる問題から、そんな悠長なことは言ってられない」というのは、一見説得力があるように感じるかもしれませんが、そうして際限なく突き進んだ結果が「あの戦争」だったという反省を、忘れてはいけないはずです。
防衛費という、重要で、デリケートな課題だからこそ、政治の側は節度をもって、襟を正して向き合っていかなければいけない。
その結果として、国民の皆さんに負担をお願いすることは、ありえます。
「5年間で防衛費を10兆円に」などという数字だけの掛け声ではなく、
変化する安全保障環境に対して、日本がいかなる戦略で国を守っていくのかというロジックの部分を深めていくことが求められます。
野党としても、こうした議論には真摯に向き合う準備があります。
拙速な議論ではなく、骨太な、真に効果的な防衛政策につながるよう、取り組んでいかなければいけません。
↑報告書の全文