◤留年◢とどまりながら——プライド脱ぎ捨てた留年(原級留置)体験記
留年の正式名称知ってるかい?
新型コロナウイルス🦠感染拡大で、季節感さえも失われていく中、春の訪れを告げる陽気に気づいて心がウキウキする。
大学では進級・卒業の発表が行われ、気にしていた単位の行方に安堵する季節。
その一方で、落単という現実に落胆する学生、多額のコンティニューコインを投じて「もう一回遊べるドン!」と課金を決めた学生……と、冬を越えて咲かせる花は喜びから哀しみまで色とりどり。
学生時代、運営していたサークルは、今考えてみても留年率の高さはピカイチだった。
留年ならまだしも、浪人経験者、休学復帰生、社会人学生と、小さいサークルながら、それぞれの人生模様がステイタスに詰め込まれていた。
「留まることを知らない」なら未だしも「留まることしか知らない」学生生活を送っていた僕の6年間。
一留(一流)ならまだギリギリついたかもしれない格好も、二留となっては海援隊の「二流の人」が身に染みるくらい……と、留年を振り返っていたら、一つnoteができた。
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「原級留置」
「原級留め置き」
どこか仰々しい堅苦しさと、画数の詰まった格好良さがある表現だか、これは我らが「留年」さんの公式表現だ。
ぼくの留年体験記。
僕の最初の留年は7年前。
2年生から3年生になる関門制で、
見事に引っかかった4月4日が留年記念日だ。
当時を語る貴重な資料(サークルの日誌)には、
〝私の怠惰です。大学に非はありません〟と、細い文字たちが切なく踊っている。
👉🏻まさに、留年は大学生活の踊り場だ。
とは言っても、決まった以上
落ち込んでいても仕方ないのが留年。
尾崎放哉の〝わが顔ぶらさげて あやまりにゆく〟という自由律俳句を胸に、落ち込んでるアピールやポーズもそこそこに、決まってしまった以上、その一年なり半年なりをどう活かすかを考え始めた。
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もちろん、留年なんてするもんでないし、
勧めるものでも、誇るものでもないので、
留年ステータスを自分の付加価値としてアピールするのは大概にした方が良い。
しかしながら、留年を迎えた以上は、留年の強み・メリットをいかに発掘するかしかないのもまた事実なのだ。
情けなく無様にそのまま留まっていても仕方ない。
留年の醍醐味を漁って
そんな中、サークルで「Youはどうして5年目へ?」と企画記事を皆で考えたのも留年の産物。
毎年のように、サークルの新入生と交流できたのも、考えてみれば留年あってこそで、今でも学生たちとの付き合いは巡っている。
留年状態は「学年」という括りに縛られているのか縛られていないのか分からない、まるで宙ぶらりんな立場になり、分け隔てなく「同級生」ができた心地を味わえる醍醐味があった。
留年を経ることで、着膨れさせるだけのプライドというコスチュームを、少しは脱ぎ捨てることができた気がする。
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一方で、留年が作り上げた作品に心浮き足立つばかりでもいけない。
「留年したからこそ実現した出会い」があったとすれば、それは同時に「留年しなければ実現していた出会い」を手放したことであるのも事実だ。
留年によって手に入れたものの裏には、知らず知らずのうちに零れ落ちていった機会があったことを認識しておかないといけない。
留年を含めた学生生活は、社会に出るまでのモラトリアム/延長措置。
「学生」というブランドを活かすに活かして、たくさんの経験をしようとしていた6年間も、思えばあっという間だったので、本来の4年間なんてもっともっと早かったのだろうなと、学生生活を愛おしくも振り返る。
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留年によって得たもの
テストや講義から逃げ出すと、今度は自分が単位から逃げられる羽目になる皮肉。
学生証の更新方法、学内における認知度向上。
……留年によって得たものはそれなりにあった。
しかし、一番学んだのは、詰まるところ時間に「充分過ぎる」を求めるなんて、出しゃばりだということだ。
足るを知る。につきる。
もっとも、留年が不利になるのか有利になるのかなんて、留年経験を生かすも殺すも自らのアレンジ次第。
ただ一つ言えるのは、留年を言い訳にすればするほど、中身のない進歩のない「留まり」が人生に並んでいくということだ。
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〝いま幸せですか 苦しいですか
何度も自分に問いかけてみる 投げる
さよならが下手で 動けないんだろう
それでも それでも ああそれでも〟
大好きなASKAさんの歌詞の一節が、不細工な心を撫ぜる。そんな留年の思い出遺産。
「一夜漬 掻き乱すかな 蝉時雨」
「あてもなく 解答用紙につらつらと
短い命の字を 並べて終わる」
「家では 靴下さえも 揃って独り身」
留年があったからこそ生まれた、放哉に憧れて紡がれた僕のシロウト歌たち。
いつまでも過去の思い出に沈殿している具合が、
留年するような人間にさせているのかもしれないと苦笑。
「やること」がボヤけたまま、ついに輪郭立てずに終わった僕の学生生活。
でも、留年を含めた自分の過去を、うんと許せるように。
充分な未来を描きながら生きていきたい……なんて、格好つけた文句だけが浮かぶ留年体験記だ。