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密かな憧れ



私は、自分で言うのもなんだが、地味だ。

学校だと、教室の隅っこにいるタイプ。

そんな私でも、人には言ってない憧れがあった。



それは、ピアスである。



高校生の時、クラスメイトの耳にはピアスがいくつも開いていた。

とある友人は、ピアス穴に安全ピンが刺さっていて、それが、痺れるくらいかっこよかった。



理想として、右に2つ。左に1つ。舌にも開けたい。



数や場所に他意はない。なんとなくだ。

ただ、母が生理的にピアスが無理なのと、父が厳しい人だったため、高校生の時は開けなかった。

そもそも、自分のウリが『真面目1本』だったから、開けるつもりもなかった。

卒業してから、自分でピアッサーで開けてもよかった。

だが、私はビビりだ。

開ける時の痛みが怖くて、絶対で病院で開けると決めていた。

働き始めたら開けよう。

そう、密かに思っていた。



しかし、その夢は呆気なく崩れることになる。

そう、就職先は病院だ。

『ピアス禁止』だったのである。

良く考えればわかることだ。

ピアス穴は、大きな括りで見なくても傷。

病院は、病原体やウイルス、雑菌がウヨウヨしているところだ。

普通の傷なら仕方ないが、故意に傷をつける必要などないのだ。

そうして、私の夢は儚く消えたのだ。




8月からの病院。

やっぱり、ピアスの夢は諦めきれなかった。

「あのー……。ピアスとか開けては……だめでしょうか……。」

私は恐る恐る聞く。

やはり、バッサリ言われた。

「駄目です。」

またもや崩れた夢。

ピアスの施術費の1万円を握りしめ、途方に暮れた。

だが、さすがに諦めがついた。

私はその1万円を持って、アパレルショッに行った。


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