「ある愛の物語」のお祭り
今週末、とても悲しい出来事がありました。それは、
イザベル・デ・セグラの結婚祭を見逃したこと。
一昨日のテレビニュースで知りました。。。くすん。
私たちが、ウエスカ県からテルエル県内に引っ越した時、ちょうどNIE(居住許可証)の更新のため初めてテルエルの街に行きました。私たち夫婦は、街の雰囲気に魅せられ、ここに住めたらいいなぁ、などと話し合いました。
そこからテルエルについて調べたところ、この街別名「愛の街」と言われているのです。それは、
イザベルとその元恋人ディエゴの悲恋の物語の伝説
によるもの、と知りました。
お話をぎゅーっと凝縮して説明しますと、
イザベルとディエゴは身分違いの恋愛で悩んでいました。ディエゴは褒章を得るため戦争へ行くことを決め、イザベルに5年待って欲しいと告げて旅立ちました。イザベルはその言葉を守って5年待ちましたが、ディエゴが戦死したのだと思い他の人物と結婚をします。ところがなんと、結婚式の当日にディエゴが帰ってきてイザベルの結婚を知ります。ディエゴはイザベルの寝室に忍び込み、口づけを求めますが、イザベルは現夫に貞節を神に誓ったので拒みます。悲しみに暮れてその場でディエゴは死んでしまいます。ディエゴの葬儀に参列したイザベルは、愛するディエゴに口づけをしますが、その瞬間彼女も亡くなります。それを見た人々は驚きましたが、イザベルの夫はこの二人の愛の深さを皆に説明し、二人を離さずに葬るよう求めました。
今でもサンペドロ教会に彼らの石棺が公開されています。蓋の上には二人を模した彫刻が施されています。二人が手を取り合っている姿は、立ち寄る人々にこの悲恋と物語の美しさを想わせます。
そして、テルエルではこの物語をテーマにしたお祭り「Los amantes de Teruel」が開かれます。例年2月、という話でしたが、今年は3月末となったそうです。残念ながら雨続きの開催となりました。
教会や歴史建造物が隣接する旧市街がこのお祭りのステージとなります。目玉は、市民たちによる当時の生活風景の再現、市場(メルカード)が並び、物語劇が催されます。
スペイン各地では、その地域にゆかりのある聖人の日や大きな戦争で勝利を得た記念のお祭りがあります。中世時代の街を再現して当時と同じ製法で作られる食べ物やお土産を売る市場や場面を模したパレードや劇が開かれます。先週は、バスク地方でレコンキスタがフランスからスペインを奪還したお祝いのお祭りもあったそうです。
お祝い事でもあるお祭りでは、いつもご当地名物料理や牛や山羊、豚の丸焼きが施されます。楽しみにしている人々は、朝から行列に並んで美味しい料理とワイン、チーズに舌鼓を打ちます。
食いしん坊の私にとっては、お土産の織物や編み物などより香り漂う温かい料理やワインやチーズの方に目が入ってしまいます。民族衣装に身を包んだ人々と共に同じご飯を頂くのはとても楽しいひとときです。
さて、イザベルの結婚のお話で一つ疑問が。。
なんでキスしただけで死んじゃうの?
なんだそれ?って思ったんです。そこで、主人に聞いたところ、
このような、今では考えられない死因のお話は欧州にはよく見られるそうです。イザベルとディエゴの場合は、深すぎる悲しみに血圧に乱れが現れ、心臓が止まったり脳溢血が起こったのではないか、という説があるそうです。
スペインはお城を囲む旧市街へは必ず急勾配の坂があって、人々は皆石畳を歩いて昇り降りしたので心臓は強そうなんだけれどなぁ、、、などとも思いつつ、それを上回るショック、そして死によって結ばれた若い二人は伝説に叶う存在だったのでしょうね。
テルエル駅から旧市街に続く場所に、このエピソードの彫刻があります。この街は、この物語を寓話と疑わず本当に大切にしているのだな、と感じます。
* テルエルへは現在、首都マドリッドやバルセロナからは直行の鉄道がありません。鉄道ならマドリッドからサラゴサ、バルセロナからバレンシアなど経由が必要です。また、時間はかかりますが(4〜5時間)都市から直行便のある長距離バスがあります。
また新しい週が始まりました!良い一週間でありますように。
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