スペインのイースター、「セマナサンタ」
スペインでは、夏時間変更の時期になると「セマナサンタ(聖週間)」という言葉が人々から漏れてきます。そもそもキリストの復活のお祭りで、4〜10日間の連休になるので、帰省や旅行を計画する人で盛り上がります。
今日は「セマナサンタ」についてお話しします。
みんなが楽しみにしている聖週間
スペインは街や村ごとに立派な教会や聖堂がありますが、昨今敬虔なクリスチャンのスペイン人は少なくなっていると言われます。なので、この連休が日本のゴールデンウィークのようなバカンスの一つとなって久しいです。
しかし、南米系の移民や経験なクリスチャンが多く住む南スペインでは、このお祭りは毎年盛大に行われます。
コロナの影響でこの2年は自粛もしくは中止が続きました。なので、どこも今年は思いを強く、地元の人々は参加の準備をし、自分の街にセマナサンタの催しがない人々は華やかな儀式や特別のミサを見物しに訪れるだろうと報じられています。
セマナサンタって何するの?
ずっと前の映画なのですが、メル・ギブソン監督の「パッション」をご存知でしょうか? この映画は、キリストが捉えられて、十字架にかけられた後復活するまでを映像化したものです。
まさにこの映画の内容を、このセマナサンタの期間中にミサや行進、地元の人々の寸劇によって再現する1週間です。
だいたい月曜日から水曜日にこれから行われるお祭りのダイジェストとしてコンサートやイベントが行われ、木曜日から本格的に儀式が行われます。
アンダルシア地方では、このセマナサンタの儀式が盛大かつ荘厳に行われます。金銀色の装飾に包まれたマリアやキリストの像の台を設え、十数人の男性たちが担いで粛々と街を練り歩きます。
聖堂の司祭に祈りを注がれた聖台を担ぎ、バンドの演奏や歌が流れる中、町中を行進。これは4日間ほど行われます。
それぞれテーマを持つ聖台をいくつか用意してあり、日毎にそれらを担ぎます。キリストが捕まり十字架にかけられるまでどのようなことが起きたのかを理解できるようになっています。
教会では特別にミサを行います。聖書を通じてキリストに起きたことと、復活によって人々の罪が赦されたのだということを説きます。
セマナサンタを重んじる人々
キリストは、自分が復活するまでの数日に起きることを弟子たちに伝えています。それを聞く弟子たちはあまりにも恐ろしいことだと否定しますが、次々にそれらが起こり、改めてキリストが神の子であることを実感します。
そもそも聖書を読むと、人口が増えて世界が混沌としてくる時、神様は一人の人物に人類が集団で平穏に生きるための訓示を伝える役を課しています。キリストもその一人でした。
人間が地位や富に目がくらみ嘘をついたり人間を蔑むこと、そして悪人に影響を受けた人々が起こす残酷な集団行動の様を、キリスト自らがスケープゴート(犠牲)となり表しました。
苦難を覚悟していたキリスト自身も、あまりの酷い体罰を受け、十字架を背負わされ、体に杭を打たれて晒される辛さに神へ問いかける場面もあります。
聖書を読み、日々祈りを捧げている人々は、このセマナサンタの行進を見ながらさまざまなキリストに起きたこと、自分達の先祖が起こした大きな罪、そして自分が現世を生きる中で起きることを切実に感じるようです。
聖台に向かって、慈悲を求めたり、運命を嘆く感情が極まって泣き出してしまう人もいます。この光景が、よりキリストの最期のプロセシオン(行列)の重さを想像させます。
実際はお楽しみ満載のセマナサンタ
ここのところ、スーパーに行くといつもより多くの人々が魚売り場に集まっています。これは、聖週間は肉はだめ、魚を食せ、という教会のお達しによる伝統で、人々はその習慣に沿って魚料理を多く食べるそうです。(我が家はクリスチャンではないので、肉も魚もちゃんぽんで食しております。)
とにかく春先で暖かくなって来る時期の大きい連休なので、家族旅行をする人々も多いです。今年はコロナが明けて、催しも多いですし、観光客の動きが見えてきました。
セマナサンタは家族で過ごす家が多いので、都会から若い家族が実家に帰省してみんなでご馳走をいただく、そんなひとときも見られます。
学生さんは最終学期の真ん中の連休なので、仲間とプロセシオンを見に行ったり羽を伸ばして過ごすようです。この後間も無く学期末試験が待っていますからね。
セマナサンタのお菓子
セマナサンタだけではないのですが、キリスト教に則った大きな祝日には、その時期に食べるお菓子があります。
セマナサンタは、春の訪れのお祭りでもあるとされ、春は繁栄の意をもつので卵や鳥、花を模したお菓子が出回ります。
特に、イースターには卵、というキーワードがあるので、卵の形をしたチョコレートなどがたくさん売り出されます。中におもちゃが入っていて、子供たちがとても喜びます。
伝統的なお菓子では、モナ、というケーキがあります。味は様々ですが、デコレーションに卵型のマジパンやチョコレート、そしてプラスチックの鳥の羽などを刺しているものもあります。
南スペインでは有名なフロールというお花の形を模した揚げ菓子があります。砂糖をまぶした素朴な味とサクサクした食感が特徴です。
他に、トリハというフレンチトーストにそっくりなお菓子もあります。家庭で作られるお菓子の一つで、味付けにシナモンやアニス(八角)や洋酒を漬けるものもあります。
セマナサンタの太鼓
私が住む地域では、プロセシオンとともに、太鼓の行進が行われます。衣装を纏い、お腹には太鼓。そして決まったリズムを繰り返し叩いて練り歩きます。その数、大人から子供までなので、もう並みの音量ではありません。
この役を行う人々は数ヶ月前から練習を重ね準備します。方々から太鼓を叩きながら役所前の広場に集まり、最後は全員で太鼓の大合奏。
でも、この太鼓叩きはこれで終わらず、大人たちのグループは各地に分かれ太鼓を叩きながら街をパトロールするのです。朝の6時ごろまで。
今年は、ローカルテレビ局がこれを実況するそうなので、私たちは街のはずれの我が家でテレビで日曜日のクライマックスを見届ける予定です。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
皆さんも楽しい週末を!
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