見出し画像

忘れっぽい私や誰かのための短い読書 20

 両者の間に厳密な相似性があるとはかぎらないが、それでもなお、未知の問題を解決するのに当って、アナロジーの方法はきわめて有効である。
(略)
 われわれは日常ごく気楽にこの方法を用いている。たとえば、「あの人の行動はまるで、マッチ・ポンプだ」といったとする。これは一方で火をつけ煽っておきながら、同時に、他方でそれを消火しようとしているようなことをしたときに、細かい説明抜きで実際をわかりやすく伝えることができる。
 外山滋比古 思考の整理学 「アナロジー」より
 いまかりに、Aの問題について、カードをとったのが1000枚になったとしよう。こんなに多くては身動きができない。まず、いくつかの項目に分類する。分類できないものを面倒だからというので、片端から棄てるのは禁物。
 この分類されたものを、じっくり時間をかけて、検討する。急ぐと、ひそんでいる価値を見落とすおそれがある。ひまにまかせてゆっくりする。忙しい人は整理に適しない。とんでもないものをすててしまいやすい。整理とは、その人のもっている関心、興味、価値観(これらはだいたいにおいて同心円を描く)によって、ふるいにかける作業にほかならない。価値のものさしがはっきりしないで整理をすれば、大切なものをすて、どうでもいいものを残す愚をくりかえすであろう。
 かりに、価値のものさしがあっても、ゴムでできていて、時によって、伸び縮みするようなら、これまた没価値的整理と選ぶところがない。こどもには整理をまかされない。こどもだけではない。他人に整理をゆだねられないのはこのためである。
すてるには、その人間の個性による再吟味が必要である。これは没個性的に知識を吸収するのに比べてはるかに厄介である。
 (略)
 これをもっともはっきり示すのが、蔵書の処分であろう。すてるのではないが、本を手放すのがいかに難しいか。試みた人でないとわからない。ただ集めて量が多いというだけで喜んでいてはいけない。
 外山滋比古 思考の整理学 「すてる」より

*太字は当方による

アナログな知的作業、整理作業について書かれた文章をいま新鮮に感じて読めるなあと、思う。

もしも何事かお役に立てましたら、ぜひサポートをお願いします☆