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三本の矢

三本の矢というよりは「三種の神器」とか言うべきなのかもしれないけど、やはり広島のグループであるまなみのりさだし、毛利の三本の矢、という表現をしたいよね。で、好みの差はあるだろうと思うし、いやいやこの3曲以外にも良い曲沢山あるよ、っていうのも分かる。ただ、あくまでも個人的な感覚かもしれないけど、やっぱりこの3曲はちょっと他の曲とは違う「パワー」を持っている、と思う。

とにかく今振り返っても「ウソ」の初披露は衝撃的だった。3人とも自分たちが「これだ」と思う曲に出会えた、と言ってたから相当ハードルを上げて期待してたつもりだったこの曲。そしてティザー動画が公開されたときに「なるほど」と思った。3人共が自信満々だった理由がわかった気がした。ティザーのワンフレーズずつを聴きながら、はたしてどういう組み立てになるのか、と思いを巡らせたが、ラジオでフライング的にオンエアされて、その組み立て方とティザーで明らかになっていなかったAメロBメロ部分にも驚かされた。その時は落ちサビ前までのオンエアだったけど、後日別番組でフルコーラスがオンエアされたのを聴いて、みのちゃんのラストのシャウトに驚かされた。とまぁ、部分的に徐々に明らかになっていったからこそ、その都度の驚きを楽しませてもらった曲でもある。

結果的に正解だった。6/9の広島クアトロで初見だったら、ダンスまで全部消化できなかったと思う。ダンスの内容もやれコンテンポラリーやらゼログラヴィティやら、いままでのまみりの振り付けにない要素も盛り込んで、今できるすべてを詰め込んできた、といっても良い仕上がりだった。音源だけでもスゴイものになっていたのに、音源以上にライブで一度観るべきだ、という作品に仕上がっていた。

その「ウソ」が表題曲であるシングル「たいせつな…」。東京版ではもう一つ「三ツ葉」が新曲として収録される、ということだが、「ウソ」の完成度が高すぎて正直そこまで期待はしていなかった。ところがどっこい、これまた8/8の初披露でのサプライズがあった。まさか去年の12月からあたためていた曲だったとは!

「ウソ」が今のありったけを詰め込んだ作品としたら、「三ツ葉」は逆に、三声のハーモニーというまなみのりさの最大の武器を極限まで活かすために可能な限り削ぎ落した引き算のアプローチ作品。そして今や、「ウソ」と並ぶというかむしろ「ウソ」をも凌駕しかねない人気曲になっている。

そして、これらの布石となっていたのが「knock」だと思う。昨年のフェニックスホールでこの曲が披露されてから、あれよあれよと人気曲になっていった。20代も後半に突入し「アラサー」などと自虐的にネタにする彼女たち。しかしアイドルとしてはやや高めの年齢にもピッタリ合う、というか、むしろこの年齢だからこそ歌える仕上がりになっている。まさにみんなが「これだよ、これ!」と唸った曲だ。

もう一つ、この3曲に共通することがある。どれもがいわゆる「騒ぐ曲」ではない、ということだ。

旧体制のまなみのりさは「ポラリスAb」を代表に観客と一緒になって楽しむ、というスタイルが多かった。割とおとなしめな「真夏のエイプリルフール」でもサビの「AH AH AH~」で手を挙げて、っていうフリがあったりして、「まみりとファンで作り上げていくライブ」というのが一つのスタイルになっていたと思う。

そういう一体感を感じる楽しいライブを否定している訳ではないし、新生まみりでも「ポラリスAb」のDNAを引き継いだ「bye byeバイナリ」は言うまでもなく、「waveびーと」「ココロト」なんかも参加型の曲だ。

ただ、新生まみりはどちらかというと自分たちを「みせる曲」が多くなっている気がする、そして、とくにこの3曲に関しては、観客が何するでもなく、彼女達のパフォーマンスに引き込まれていく、というのが正直なところ。「ウソ」なんかが顕著な例で、基本的にテンポもそこそこ速い曲だしクラップとか入れようと思えば入れられる曲でもある。実際に何度かクラップが入っている現場も観たことはあるのだが、1番→2番と曲が進む毎にクラップが小さくなったりやんでいくのが面白いようにわかる。クラップするのも忘れるくらい、歌とパフォーマンスに惹かれていく感じが手に取るようにわかるのだ。

最近のまなみのりさは「騒がなくても楽しい」「ただ観ているだけでもずっと観ていられる」という感想が良く聞かれる。ライブのイニシアチブは完全に彼女達のもの。そこに新生まみりの「進化」がみてとれる。歌のパワー、彼女達のパフォーマンスのパワーを感じるのだ。

最近のアイドル曲って「音圧とBPM上げておけば手っ取り早く盛り上がってるように見えるでしょ」的なものが多いように感じる。でもそういう曲ってどれも似たり寄ったりに感じてしまって飽きるのもまた早いんだよね。そういう意味では、そういった曲とは明らかに一線を画すこの3曲。長く愛され、歌い継がれていく曲になるのではないかと期待している。

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