何故多くのスマホARアプリは使われつづけないのか?|開発者が陥りがちな3つの落とし穴
「ARKitでARアプリを作ってみたんですが、全然使われなかった」
という嘆きにも近い相談を最近受けることがあります。
こちらの記事によればARKitに対応したiOSアプリは2018年4月の時点で2000個を超えています。
しかし、その多くは多少メディアに取り上げられ、リリースしたての時にはある程度のユーザーにダウンロードされることはあっても、ダウンロードしてくれた多くのユーザーがすぐにアプリを削除してしまい、ユーザーが離れて行ってしまうというのが現状です。
何故、多くのアプリは使われなくなってしまうのでしょうか?
今回はARアプリの多くを試し、Twitterで紹介している自分が「ARアプリの多くが使われなくなってしまう問題」の3つの原因について自分なりの考えで説明したいと思います。
1. スマホアプリとしてのUI/UXが考えられていない
ARKit(そしてARCore )は確実に開発者に大きなパワーを与えました。多くの開発者が専門的な知識がなくてもARアプリを作れるようになり、ユーザーに届けることができるようになりました。
しかし、ARKitを使って作れるアプリというのは所詮はスマホアプリです。
一例をご紹介しましょう。
最近登場したサービスにwiAR Frameというものがあります。
こちらはプログラミング作業なしにARアプリのプロトタイピングを行うことができる、いわばAR時代のInVisionに近いものになります。
サービスのコンセプトなどはいづれ需要が生まれるものですし、いいなと思うのですが、動画を見ていただくと仮想オブジェクトを操作するパネルが3D空間上に表示されていることがわかります。
例えばHololensやその他のARグラスで出すアプリの場合にはこのUI/UXでもいいかもしれません。
しかしスマホの場合、画面をタップするため3D空間をスマホ画面という平面上で操作する必要がでてきます。
ユーザーは奥行きなどを考えながら操作しなくてはならないので、ボタンを押す操作などがかなり難しくなります。
ARアプリであることを意識しすぎるが故にまるでARグラスで操作するかのようなUI/UXを設計してしまっていることが多々あります。
しかしARKitで作れるものはあくまでスマホアプリなため、スマホで操作しやすい設計にすることが大事であると考えられます。
2. 「ARアプリであること」を推しすぎている
ARの機能をアプリに盛り込もうとすると多くの開発者は「ARアプリ」であることを推してしまいたくなります。
現にARKitを使った多くのARアプリはアプリの名前に「AR」という単語を入っています。
名前にARが入っていることは問題ではありませんが、アプリの機能としてもARを推してしまっていることがほとんどです。
そして、ほとんどのユーザーにとってそのアプリが「ARを使っているのかどうか」は全く興味がないのです。
ユーザーが求めているのはそのアプリの機能を使うことで彼らの生活が少しでも豊かになるか、便利になるかということに興味があります。そしてARKitはその手段です。
世の中に出ているARアプリのほとんどはARアプリであることが目的になってしまっています。その方が時流に乗っている感じがあるし、多くのユーザーの目に留まりそうだからです。
しかし、実際にアプリを利用するユーザーのほとんどは「AR」という言葉を聞いてもピンとは来ないし、惹かれることはないのです。
ユーザーはあくまで「そのアプリが自分の生活を便利にしてくれるか?」でアプリを評価し、その手段としてARが最適であることが重要なのです。
ARを手段としてうまく使っていると個人的に思うアプリとしては依然ブログでも紹介した「Wanna nails」があります。
Wanna NailsはARアプリであるということは推してはおらず、「自分にベストなネイルカラーを選べる」アプリとして新しいネイルショッピングの形を提案しています。
実際に自分がこのアプリをツイッターで紹介した際にも多くの女性ユーザーから好評でした。
ネイルは試着するときに既に塗っているネイルを落として新しいものを塗らなくてはならず、かなり面倒なんだそうです。
そういったARアプリであることが目的なのではなく、ユーザーの課題をきちんと解決しているARアプリを設計する必要があると考えています。
3. 現実世界と仮想世界のコンテキストが一致していない
ARKitは今まで開発者ができなかった多くのことをできるようにし、ユーザーたちを驚かせてきました。
現実の街中に恐竜を出し、空を飛ぶUFOを撃ち落とすアプリを作ることができます。等身大の恐竜やUFOを目の当たりにしたユーザーは思わず「Wow!」と驚いてくれます。
しかしこれはユーザーの現実世界でのコンテキストとは何も関係がない体験になってしまっています。
今年の初めに自分のブログで「これからのスマホARアプリケーションに必要な3つの要素」というタイトルというブログを書き、その中の一つの要素として「『驚き』ではない価値の提供」というものをご紹介しました。
ここで言及していることともつながりますが、ユーザーに驚きを与えようとするとどうしても現実世界の文脈とはかけ離れたものを見せてしまいます。
ユーザーは一時は驚いてはくれるものの驚きの価値は一瞬なので、「だからなんなの?」となってしまい、アプリ自体に価値を感じることはなくなってしまいます。
ARはVRとは異なり、現実世界と体験が地続きになっています。
VRは現実世界とは切り離されたコンテキストの体験を与えても違和感を与えませんが、ARでは現実世界のコンテキストに即した情報の提示、そして体験を設計してあげる必要があります。
あなたのアプリを使ってくれるユーザーはどんなシーンで使ってくれるのか、そしてどんな情報をどう見せることでユーザーが便利に感じ、ユーザーの生活が豊かになるのかをきちんと考えてあげることが大事です。
まとめ
多くのスマホARアプリに触れてきた自分が考える「スマホARアプリが使われ続けない」3つの原因をご紹介しました。
1. スマホアプリとしてのUI/UXが考えられていない
2. 「ARアプリであること」を推しすぎている
3. 現実世界と仮想世界のコンテキストが一致していない
まだまだ多くの開発者はARアプリに触れ始めたばかりで、ARの最適なUI/UXや活用方法はグローバル含めて誰も答えを出していません。
だからこそ今のうちからARの最適解を研究することで来たるAR時代に大きなアドバンテージを得ることができると考えられます。
スマホARアプリ開発者がより良いアプリケーションを開発するためのヒントに本投稿がなれば幸いです。
そして弊社MESONはARの最適なUI/UX、そしてARの本当の価値を研究しながら、クライアント様と一緒に最高のARアプリケーションを作っている組織です。
一緒に本当に価値のあるARサービスを作っていきたいクライアント様、メンバーを募集中なので是非とも会社ホームページ、もしくは私のTwitterからお気軽に連絡ください。
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