Appleの新製品発表から見えたVision Proへの3つの布石
こんにちは!空間コンピューティング技術で人々のまなざしを拡張するMESONの小林です。
米国現地時間の9月12日にクパチーノにあるApple ParkでAppleの新製品発表イベント「Wonderlust」が開催されました。
概ね噂通りの発表内容で、新世代のiPhone、Apple Watch、Airpods Proの3つ新世代製品が発表されました。
今年の6月にAppleが発表した新たな空間コンピューター「Apple Vision Pro」自体の続報は残念ながらありませんでした。個人的には後継機となる廉価版の発表があるかもと少し期待をしていましたが、まだまだそのタイミングではなかったようです。
Vision Proの直接的な発表はありませんでしたが、Appleは来年のVision Pro発売を見据えて、今回発表したiPhone、Apple Watch、Airpods Proの3つの新製品それぞれにしっかり布石を打っていました。
今回のnoteでは新製品発表イベントでAppleが見せたVision Proへの3つの布石について述べたいと思います。
Vision Proのコンテンツ拡充を狙うiPhoneの空間ビデオ撮影
今回の新製品発表イベントでAppleは新たにiPhone15シリーズを発表しました。
長年使われてきたLightning端子をやめてUSB-Cに変わった点などが話題になっているのをご覧になった方も多いのではないでしょうか。
今回、このiPhone15シリーズの発表ではチタンが採用され軽量化されるなど様々なアップデートがありました。
空間コンピューティング領域の視点からは、iPhone15 Pro及びPro Maxで空間ビデオを撮影できるようになったことが大きなニュースでした。
空間ビデオとはVision Proで視聴できる奥行きのある映像のことで、Vision Pro発表時に注目された機能の1つでした。
空間ビデオはまさに記憶をすっぽり抜き取ったSF映画のような体験です。自分もVision Proの実機で空間ビデオを初めて見た際には他人の記憶の中を覗き込んだ感覚になりました。
Vision Pro発表時には、Vision Pro本体でしか空間ビデオを撮影することができませんでした。しかし、iPhone15 Pro/Pro Maxに付いているメインカメラと超広角カメラを使うことで空間ビデオを撮影することができるようになりました。
Vision Proは基本的に屋内利用を想定しているため、iPhone15発表前は撮影される空間ビデオはほとんど屋内の映像になってしまうことが予想されました。
しかし、人々が気軽に外に持ち運べるiPhoneで空間ビデオを撮影することができれば、Vision Proユーザーが視聴できる空間ビデオの種類も格段に増えます。旅行先で撮影した思い出をVision Proでより没入感のある形で見返すなどにうってつけの機能です。
Vision Proのような空間コンピューターが普及するためにはそれを装着したユーザーが楽しめるコンテンツがどれだけあるかが重要です。
今回のiPhoneの空間ビデオ撮影対応はまさにユーザーがVision Proで楽しめるコンテンツを増やす布石の一つだと考えられます。
空間コンピューティング時代の基本操作に慣れるApple Watchのダブルタップ機能
今回の発表イベントで新たにApple Watch Series 9およびApple Watch Ultra 2が発表されました。
そして新世代Apple Watchで使える新機能「ダブルタップ」も発表されました。ダブルタップは親指と人差し指で摘む動作を2回するだけで特定の動作を呼び出せるジェスチャーコントロールです。
これまではApple Watchを操作するときにはもう片方の手で画面をタッチする必要がありましたが、ダブルタップを使えば片手で操作することができます。
片手で操作できることに加えて、画面に触れる必要がないため、腕を上げずに特定の操作ができることもメリットの一つではないかと個人的には考えています。
今回新たにApple Watchで使えるようになったダブルタップジェスチャーですが、自分はApple Watchの便利機能だけが狙いではないと考えています。
「親指と人差し指を空中で摘む動作」
「腕を上げずに操作可能」
これらの特徴をどこかで聞いたことがないでしょうか?
実はVision Proを使用する際のハンドジェスチャーと同じ動きなのです。
Vision Proは「Gaze & Pinch」という動きを基本にしており、目で操作したい対象を狙い、親指と人差し指を摘むことで決定をすることが基本的な操作方法になります。
今回新製品発表イベントでApple Watchのダブルタップの紹介を目にしたとき、Vision Proを使用する際の手の動きとほぼ同じだと感じました。
私たちはこれまで「パーソナルコンピューティング」「モバイルコンピューティング」と二度のコンピューティングパラダイムシフトを体験してきました。そして、新たなコンピューティングのパラダイムシフトの度に、デジタル情報との接し方をアップデートしてきました。
パーソナルコンピューティングで私たちがパーソナルコンピューターをつかうようになったときには、キーボードやマウスを操作し、デジタル情報を扱うようになりました。
モバイルコンピューティングで私たちはスマートフォンのスクリーンに触れて、デジタル情報を扱うようになりました。
そして次の空間コンピューティングでは、私たちは「コンピューターに触れる」という操作を辞め、自分の身体や周りの環境を使ってデジタル情報を操作するようになっていきます。
親指と人差し指を空中で摘む動作は、これから空間コンピューティングの時代に突入する私たちがデジタル情報を操作する、まさに代表的な動作になるのです。
この新たな操作には人々が学習し、慣れる時間が必要になります。もちろんユーザー自身もですが、ユーザーの周りの人たちが空中で指を摘むという操作に見慣れることも重要です。
「あれはデジタル情報を操作している動作だ」ということが社会的にしっかり受容されている状態をつくることで空間コンピューターの社会への浸透はより早まっていきます。
Appleはダブルタップというジェスチャー機能を通して、いまから「空中で指を摘む」という空間コンピューティング時代の基本操作を人々に学習させることを狙っていると考えています。
Vision Proの没入感のレベルを引き上げるAirpods Proのロスレスオーディオ接続
今回の新製品発表イベントでは新たなAirpods Proが発表されました。
商品名には第2世代と記載されており、外見の大きな変化はUSB-C対応したことくらいしか見受けられませんが、実はハードウェアがアップデートされています。
その大きなアップデートの1つがH2チップが搭載されたことです。実はこのH2チップはVision Proにも搭載されているもので、両端末のH2チップが通信することで、ロスレスオーディオ接続が可能になります。
ロスレスオーディオとはその名の通り「ロスがない」オーディオのことで、スタジオなどで録音されたオリジナルデータがロスがない状態でユーザーの耳に届けることができます。
以前より発売されているLightning端子対応のAirpods Pro 第2世代にはH2チップが搭載されていないので、Vision Proとのロスレスオーディオ接続はできません。
Vision Proがどのように現実世界に違和感なくデジタル情報を融合させているかに注目すると、なぜAppleがVision ProとAirpods Pro間でのロスレスオーディオ対応に力を入れたのか見えてきます。
「空間コンピューティング」と聞くと、視覚的な機能に目が行きがちですが、実はVision Proはユーザーの聴覚にもしっかりアプローチしています。
空間オーディオ技術を採用することで、Vision Proを装着したユーザーがいる部屋の形状などを把握し、音の反響などを再現しているため、本当にデジタル情報がある場所から音が聞こえるように感じます。
私がVision Proを体験した際に、とある有名なアーティストの方の360度ライブ映像を見せてもらいました。
音楽ライブを見ている際に、本当に目の前にそのアーティストが「いる」と感じました。この「いる」という感覚はもちろん映像がとても解像度が高かったこともありますが、なにより空間オーディオ機能の精度が高かったことが大きいと考えています。
映像の中ではメインボーカルとコーラスの方がそれぞれ違う場所で映っていたのですが、方向・距離感ともに本当にそこにアーティストが居るかのように歌声が自分の耳に届いたのです。
この聴覚体験はVision Pro単体でも素晴らしいものでしたが、今回のAirpods Proによるロスレスオーディオ接続を活用すれば、よりユーザーがライブ空間に没入することができると考えられます。
音を活用した体験はライブ以外にも色々考えられます。例えばVision Proを装着したユーザーが都会の喧騒から離れて、自然の中に身を置きたいと思ったときも、鳥のさえずりや葉と葉が触れ合う音など空間オーディオの精度は体験に大きな影響を与えます。
Vision Proを通して見た現実空間の中にデジタル情報が「ある」と感じるためには、視覚と同じくらいに聴覚のアプローチが欠かせない要素です。
新たなAirpods ProはVision Proを装着したユーザーが現実世界の中にデジタル情報が「ある」と感じる納得感を高めるための重要な布石だと考えています。
以上、Appleが新製品発表イベントで見せた3つのVision Proへの布石について紹介しました。
Appleが来年のVision Pro発売に向け様々な布石を打ってくれることで、空間コンピューティング領域に関わるものとして期待感が高まります。
同時にこれから空間コンピューティング領域でより大きな存在感を示すであろうAppleの動きをしっかり捉えることで、今後空間コンピューティングシフトしていく未来の解像度もあがっていきます。
自分のnoteでは今後もこういった空間コンピューティング領域やVision Proに関する情報を発信していきます。
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