もし「可愛いね」と言われたら?
「可愛いね」
「キレイだね」
「美人ですね」
こう面と向かって褒められてしまうと、どうリアクションしてよいのか悩みますよね。
最も多いのは、
「そんなことないですよ」
と、謙遜する人でしょうか。
次に、
「何も出ませんよー」
「よく言われます!」
などと、明るく切り返す人。
そして、
「ありがとうございます」
と、素直に受け止める人。
私も、ひと通りやってみました。そして、
「そんなことないですよ」
と謙遜するのは、すぐやめました。
わざわざ褒めてくれているのに、あえて否定する必要があるのか?
もしお世辞だとしたら、否定することでかえって「真に受けている」と思われるのでは?
とか、いろいろ考えた結果です。考えだすとキリがありませんけどね。
明るく受け流すパターンは使い古された手法という感じで、数回使ったら飽きました。
何より、容姿の話題を自ら引っ張る形になるのがイヤ。
この返しを使ったのは、
「今日もキレイだね〜」
と、すれ違いざまに言われた時。
「よく言われまーす」
と言いながら、立ち去ります。
その場から立ち去ることのできないシチュエーションでは、まず使いません。
「ありがとうございます」
と受け入れるパターンには、結構長くお世話になりました。
だけど、そもそもお礼なんて必要なの?
確かに褒めてもらっているのだから、お礼を言ってもおかしくはありませんね。
だけど、容姿を褒めるという行為は、相手も言いたくて言っている。つまり、言う側の自己満足なんですよね。
キレイだと思ったから、つい口から出てしまった。そこには、謙遜もお礼も必要ない気がします。
お世辞だとしたら、余計にお礼なんて言う必要ないですし。
中には、
「せっかくキレイって褒めたのに謙遜されると寂しい」
とか、
「普通にありがとうって言われるとテンション下がる」
という男性の声もあるようですが、正直こちらのリアクションひとつで勝手に上がったり下がったりされても困ります。
で、結局どうしているのかというと…
『聞き流す』
これに尽きますね。
1対1で「おキレイですね」と言われた時は、ただニコッと笑う。
相手はちょっとドギマギしますが、お構いなしに本題に入るなり、その場を立ち去るなり、とにかく話題を自分の容姿からそらします。
飲み会や職場など、複数の人が同席している場合はもっと気が楽です。
「キレイですね」と言われても、こちらが黙っていれば、他の人が勝手に庇護欲を発揮して、
「でしょ? こんなキレイな人なかなかいないよ?」
「お前、よく恥ずかし気もなくそんなこと言えるな」
「ダメダメ! 朝霧さんをいやらしい目で見るのは禁止」
と、全部代わりに打ち返してくれますから。
私は他人事みたいな顔して、彼らのやりとりを聞いているだけ。
この手法に変えてから、容姿を褒められた時の心理的な負担がかなり減りましたね。
ただ、一度だけ。
仕事関係の方(仮にTさんとします)と打ち合わせテーブルに向かい合って座り、真面目な話をしていた時のこと。
Tさんが、
「朝霧さんなら安心してお任せできますよ。仕事もできるし…」
そう言った後、私の目をじっと見ながら、
「お美しいし…」
と、言ったんです。
私もこの時ばかりは、思わずスーッと無言でうつむいてしまうという、素のリアクションをとってしまいました。
すぐに、何事もなかったかのように話題を変えて下さったTさん。紳士ですよね。
私は別に、Tさんを好きだったわけでもなんでもないんです。
ただ、タイミングとして不意打ちすぎたこと、あまりにも真剣な顔で言われたこと、そして「お美しい」という言葉のチョイスに動揺してしまったのだと思います。
ちなみに、褒められて嬉しくないわけではないですよ。毎回、素直に嬉しいです。
ただ、嬉しいのと同じくらい、心理的な負担も大きいのです。つまり、リアクションするのが面倒くさい。
それでも、大好きな人から「キレイだね」と言ってもらった時だけは、サラリと流すのではなく全力で照れてみたいなと思います。