汝、公共の場で不倫するなかれ
定期的に飲み会をする5人のメンバーがいます。
ここ10年ほどの間に知り合った人たちで、もともとさほど親しい間柄というわけでもなかったのですが、ちょっとしたきっかけから集まるようになって約2年。
大人になってからできたお友達、という関係性でした。
女性は私と、こちらのゆかりさん。残り3人は男性です。
ゆかりさんとはなぜか気が合って、5人組以外にもこうして女子会したりしています。
ちょうど一か月ほど前になりますが、このメンバーで新年会をしました。
そのとき、私はなんともいえないショックを受けることになります。
気付いてしまったんですね。
ゆかりさんと、4人の男性のなかの1人、Sさんが“イイ仲”になってしまっていることに。
その日、ゆかりさんは最後に店に到着しましたが、その際、年長者であるSさんともう1人の男性Oさんが奥の席に並んで座り、私とYさんが一人分の間隔を空けて手前の席に座っていました。
私は当然、ゆかりさんはこの間の席に座るものと思っていたのですが、到着した彼女が座ったのは、Sさんの隣でした。
迷わず、一直線にその席へ向かったことに、少し違和感をもちました。
もちろん、あとから来て真ん中に入りづらかったというのもあるかもしれません。
しかし、その席に座った瞬間、ゆかりさんの体がSさんの方へしなだれかからんばかりに傾いたのです。
見てはいけないものを見たような気持ちになって、私は思わず目をそらしました。
(ああ、そうか。ついに、そうなっちゃったんだな)
実は、Sさんがゆかりさんにアプローチしていることは以前から知っていました。
個人的に食事に誘われるとか、二人きりのときに「可愛い」といわれるとか、ゆかりさん本人から聞いていたのです。
ゆかりさんの方はといえば、「私にも選ぶ権利はある」とSさんを軽くいなしているものとばかり思っていたのですが……。
愛嬌のある美人で、知性もあるゆかりさん。
女子会で私たちに不倫をすすめる雪乃さんに対し、私が「好きな人くらいはできることもあるけど、不倫する気はない」といっても、「好きな人もいない」とにべもなかったゆかりさん。
女、女してないところがカッコよかったんです。
それなのに、先日の飲み会で新妻のようにSさんに寄り添うゆかりさんは、女そのものでした。
昨年から少しずつメイクが濃くなっていることには気付いていたのですが、きっとその頃からゆかりさんの気持ちはSさんに傾いていたのでしょう。
不思議なのは、先にゆかりさんに好意を持っていたSさんからは、まったくそういう匂いがしなかったこと。
別人のように変わってしまったゆかりさん。今までとまったく変わらないSさん。
恋をしたとたんに変わってしまうのは、女性特有なんでしょうか。
もう10年以上前になりますが、子どもの同級生のお母さんで、派遣社員として働き始めたのをきっかけに不倫にハマって離婚した女性がいました。
その不倫相手も子どもの同級生のお父さんでしたが、知り合ったのは派遣先の職場です。
そのママさんとは、ときどき何人かで会ってご飯を食べるくらいの仲だったのですが、彼女が働き始めて最初の食事会で「ね!うちの職場に〇〇君のお父さんがいるの!」と、ちょっと前のめりに話しているのを見て、
(ふーん、〇〇君のお父さんのこと気に入ってるんだ)
とは思っていたのですが、学校行事に二人で一緒に現れたのを見て、
(ああ、そういう関係になっちゃったんだ)
と、確信しました。
一緒に現れたから確信したのではありません。〇〇君のお父さんの隣を歩く彼女が、完全に女の顔になっていたからです。
なぜ、女性はいとも容易く自分の気持ちを世間に晒してしまうのでしょうか。
なぜ、隠しておくということができないのでしょうか。
男性は詰めが甘く、不倫していたらすぐわかると世の妻たちはいいますが、少なくとも不倫関係にある男女が一緒にいるときは、女性の方が詰めが甘い。
相手の男性に全身全霊でよりかかっていることが、手に取るようにわかってしまうのです。
さらにいうと、不倫関係になくても、恋心を持っている男性の隣にいると「ああ、彼のこと好きなのね」と、すぐわかります。
こちらのEさんがよい例ですね。
正直、私も自信ありません。
大好きな人とそうなってしまったら、隠しておけないと思うのです。顔にも仕草にも全部出てしまうでしょう。
私だって、女ですからね。
だから、私は不倫はしません。
この年になって、夫も子どももいる身で、女の顔を世間に晒すわけにはいかないのです。
主婦の皆さん、お気を付けください。
あなたの気持ち、全部バレてます。
不倫はせめて、公共の場でなく二人きりでするようにしましょうね。