ポータブル電源で停電に備えるはなし
結論: 500Lクラスの冷蔵庫は1kWhのポタ電で12時間以上動かせる
結論からいうと、8月はじめの気象条件で、1kWhクラスのポータブル電源で500Lクラスの大型冷蔵庫を12時間以上動かせました。午前7時に充電率84%で実験を始め、午後7時の時点で充電率8%まで低下しました。12時間で76%消費した計算なので、満充電ならば計算上15.8時間動かせることになります。
実験の概要
使用機器
ECOFLOW DELTA2 バッテリー容量1024Wh
5ドア冷蔵庫 東芝 VEGETA 年間消費電力 250kWh/年
電動機定格消費電力110W, 電熱装置定格消費電量 108W
実験結果
冷蔵庫が満杯
子どもと一緒に暮らし始めたら冷蔵庫が満杯になりました。大人二人だと食べるものも食べる量もおよそ安定していので、冷蔵庫に必要以上に食材が滞留することはなかったのですが、子どもはそうはいきません。
食べられるかどうかは口に入れるまでわからず、食べる量も不安定です。その結果、冷蔵庫に保管する食材や食品の量が増えました。夏場の高温に弱いチョコレート菓子なども冷蔵庫に入れています。
また、大人より身体的に脆弱なので、食中毒を避けるためにも低温保管が必要です。停電によって起きるハザードが子どもは大きいと言えます。
安くなってきたポータブル電源で冷蔵庫をバックアップ
AC100Vが出力できて家電を動かすことができるポータブル電源が安くなってきました。電池容量1kWhの製品が6万円強で購入できます。これは一年前のおよそ半額です。安くはありませんが検討できる値段まで下がってきました。
使用している電池はリン酸鉄リチウムイオン電池で、エネルギー密度は低いもののサイクル寿命が長いのが特徴です。メーカーのカタログ値では3,000回の充放電が可能です。
ポータブル電源の元はとれる?
結論から言えば元はとれません。
系統電力の電気代は昼間最も高い時間帯で29円/kWh程度、深夜電力で15円/kWh程度なので、タイムシフトによる節電でポータブル電源の導入コストを賄うのはまず無理です。それにはさらに半額まで下がる必要があります。たとえそこまでコストが下がっても、3,000回の充放電には8年を要します。新興メーカーの製品が長期間の運転に耐えられるかは懐疑的です。
また、充放電時のロスも無視できません。充電池の性質として、充電した電力量すべてを取り出すことはできません。充電でも放電でも電池は熱をもちますが、熱を発するということはエネルギー量を空中に捨てているということです。電力変換をするインバーターと電池セル両方でロスがあり、充電時、放電時両方向でロスがあります。概算すると入力の電力量の7割取り出せるかどうかです。
ポータブル電源を取り扱っているJackryによれば、放電時に取り出せる電力量は電池容量の80%とのことです。
よって、タイムシフトによる節約は困難で、リスクに対する保険として用意しておくというスタンスが良いでしょう。
ただし太陽電池パネルが使用できればもう少し損益分岐点が早くなります。
ソーラーパネルの導入コストが上乗せされますが、小寺信良氏によれば、2023年時点で損益分岐点は6-7年に縮まっているとのことです。
冷蔵庫の消費電力
冷蔵庫は大型冷蔵庫の方が消費電力が少ない傾向にあります。単価が高いぶん、断熱や冷凍機にコストを割けるから、と言われています。
ただ、冷蔵庫の消費電力は一定でないので、定格消費電力はあてになりません。年間消費電力が目安になりますが、年という大きな単位で均した数字なので、夏場にどれくらい電力を消費するかはやってみないとわからないのが実情です。
うちで使っている冷蔵庫の年間消費電力は250kWhなので、年間平均の消費電力量は平均30Whとなります。しかし、夏冬の室温の違いから夏場の消費電力量はもう少し多くなります。
今回の実験で表示パネルやモニタを見ているとおよそ50W程度を常時消費しており、時々霜取りで100W程度消費していることがわかりました。電池の容量と放電時間から計算すると65Whとなります。これにはポータブル電源の放電ロスも含みます。
年間消費電力 250kWh/年
電動機定格消費電力110W
電熱装置定格消費電量 108W
2ドア冷蔵庫での事例
防災アドバイザーの高荷智也氏がポータブル電源で冷蔵庫を何時間動かせるか実験を行いSNSで公開しました。1kWhのポータブル電源で、およそ12時間は動かせる結果となりました。
およそ同じ結果に
当方での実験もおよそ同じ結果になりました。一回測定ですが、夏の高温環境でも12時間以上は動かせるということで、一定の災害には対応できそうです。