プロローグ1〜エビと出逢う1ヶ月前〜
2011年夏、21歳。
私は当時まだ大学生で、近所にある商業施設内のメガネ屋でアルバイトをしていました。朝、大学へ向かい夕方に帰宅。その後アルバイトのためメガネ屋へ出勤。
この何の変哲もない日々がある日一変したのです。
「メダカ持ってきたから。」
それはメガネ屋へ出勤した私の背中へパートさんが放った一言でした。
今「メダカを持ってきた」と聞こえたけれど「メガネ」の聞き間違いだろうか。そうだ、もう一度聞いてみよう!と振り返った私に追い討ちの一言。
「メダカ持ってきたから。」
メダカだった。
それはお裾分けミカンの如く、はたまた手作りマスクのように突然メダカを渡された瞬間でした。
確かに数日前、パートさんがメダカを飼っていると話していました。でもなぜメダカを持ってきたのか。
「増えて困ってるねん。飼ってな!」
そうか、増えすぎたのかー。
知らなかった。増えすぎたら無差別メダカ譲渡が行われるのかー。そっかそっか。
そのスピード感溢れる一方的なメダカ譲渡に圧倒され、その日は出勤のタイムカードを押し忘れました。
「生命をこんな簡単にやり取りしていいのか。でももらったものは仕方ない」
当時の私はチャランポランで無差別メダカ譲渡をいとも簡単に受け入れ、メダカと共に帰路についたのでした。
これがこの先10年以上続くエビ飼育の序章だという事に、この時はまだ気づいていませんでした。