39.月の色をしたヘビと紫の花
やっと実現できそうな方法が見つかった。
私は死ぬことは悪いことではないと思っている。そもそも生き物は死ぬようにできている。たとえ寂しくても受け入れなければならない。無理やり先延ばしにして避け続けようとすることの方が、まさに「往生際の悪い」良くない心持ちである。
遺書を書くのは何度目だろう。
子供の頃から死にたいと思ってきたから。
神様は私のことを好きなのか嫌いなのかわからない。
能力とやる気を与えながら、それを潰す母親の元に遣わしたり、
原因不明の病気で苦しめながら、死のうとしていると水を差してきたり。
神様なんていないから、そんなわけわからないことになっているのかな。
医者は本当に役立たずであった。
具合が悪い中、がんばってあちこちの病院に行ったけど、治し方どころか原因すら見つけられなかった。
だからずーっと、自分でなんとかするしかなかった。
機能性ディスペプシアの治し方は自分で見出したし、腸の不調は、結局、上腸間膜動脈症候群によるものではなさそうだった。
先日、レントゲンで小腸ガスがたまっていたから、SIBOのような状態なんだろうけど、その治し方がわからなかった。抗菌ハーブなど使ってみたけど治らず、悪化してきてしまった。以前は1日2食なんとか食べられていたのが、苦しくて1食しか食べられなくなってしまった。きちんと栄養をとれないでいて治るわけがない。むしろこれからますます悪化してしまうかもしれない。
でも医者には何もできない、わからない。そんな、誰からも助けてもらえない病気もあるのだ。
病気の一番の苦しみはもちろん、痛いとか苦しいとか気持ち悪いとか、症状によるものだけど、それだけではない。
具合が悪いから、自由に外出できない、好きなことをして過ごせない、望むように生きられない。そういった苦しみもある。
病気だけでなく、怪我をしたり、歳をとったりして、誰もが通る道だろう。
それでも無理やり生かし続けることに、私はずっと反対の立場である。
ただ呼吸をして心臓を動かしているだけで「生きていることは素晴らしい」なんて自分で思えるわけがない。
望むように生きる、楽しんで生きるから、素晴らしいと感じられるものであろう。
体の不調に毎日苦しめられたり、寝たきりになったり、介護されたりしながら生き続けたいなんて思わないでしょう?
自分の望むように生きて、でも生き物の体にはどうしたって限界が来る、そうしたら自分が納得できるところで、そろそろかなと幕引きできる方が良い。
「老衰で死にたい」とか「ピンピンコロリで死にたい」なんて気安く言う人がたまにいるけど、実に馬鹿馬鹿しい。
どんな病気になるかなんて自分では選べないのだから、そんな希望は持っていたって無駄である。
しかも老衰も実際にはかなり大変だ。自分は自分の親族の例しか見ていないから、人によって経過はさまざまだろうけど、だんだん動けなくなり、認知症が進み、寝たきりになり、食べられなくなり、そんな状態で何か月あるいは何年も経過してようやく死ねるのだから、本人もまわりもつらい。老衰はまったく楽ではない。
祖父も言っていた。『朝、目が覚めると「あぁ、まだ今日も生きていた」と思うんだ…』と。
きっと眠る前に「寝ている間に死んでいて、もう朝を迎えることがなければ良いのに」と思っていたのだろう。
また目が覚めてしまった時の絶望的な気持ち。私も病気になってわかった。
自分らしく生きて、自分らしく死ぬのが、理想的な生き方だと思う。早く安楽死できるようになってほしい。
ずっと以前から望まれていることなのに、いまだに認められないのが遅すぎて腹立たしい。
病気や怪我や老衰を治せないくせに、苦痛を取り去ることなどできないくせに、
最後まで苦しんで生きろと強要する安楽死反対派はどういう神経をしている残酷な人間なのだろうと本当に不可解である。
病院や薬や緩和ケアでは、症状による苦痛はもちろん、自由に生きられない苦痛を取り去ることなんてできないからね?という簡単なことすらわからないのだろうか。
意地悪な安楽死反対派は、罰として、私よりもっと重い病気になって苦しみ、自分のしたことを後悔しながら死ね、という呪いをかけたい。
本当は早く安楽死が認められるべき。それができていない現状では、自分らしく人生を終えるためには自殺しなければならないので、自殺も悪いことではなくやむを得ないことであって、安楽死が認められていないことが悪い。
正直、すでに死んだ人がうらやましかった。春馬くんも星さんも。もう苦しい思いをしなくて良くなったんだと思うと、うらやましかった。
死は悪いことではなく、生きる苦しみからの解放。
子供の頃に読んだ『火の鳥』でも、永遠の命を得てしまった、終わりが来ないことのおそろしさが描かれていたなぁ。
他の人が自分を楽にしてくれることはできないので、苦しみを終えるための自助として、早く確実に死ねる方法が知れ渡っていなければならないのに、それも情報が隠されていたり、手に入れるのが難しかったりで、八方塞がりになっているのが非常に良くない。
私の見つけた方法はどうだろうか。試してみないとわからないから怖い。
本当は私だって、そんな怖い思いはせず、暖かいベッドの中で、安心して死にたかった。それが早く実現できる世の中になることがこの世への一番の願いかもしれない。
もし自分が元気だったら、安楽死の制度を作りたいとも思うけど、安楽死反対派みたいな嫌なやつがいる人間もこの世界も嫌いだから、どうでも良いかとも思う。優しい人ばかりの世界だったらよかったのにね。
白や紫の、帽子のような形をした美しい花。
きれいな花の力を借りるのは、他の方法よりは良いかもしれない。
『星の王子さま』の「月の色をしたヘビ」みたいだね。
本当はみんな、金色のヘビが必要なんだよね。
怖くなく、苦しまず、安心して良い死を迎えられる、金色のヘビの存在が、必要な人に早く届くようになるべきだと思う。