はじけたカスタードクリーム
冬休みに入ってすぐ。
私たちは年賀状に使うステンシルを探しに2駅先のデパートへ向かった。
レインボーのスタンプ台、キラキラとラメフレーバーの入ったもの。
ピンクから紫のグラデーション。
可愛らしい干支が並び、様々なフォントの
『A Happy New Year』や『あけましておめでとう』の中から、どれが一番可愛いかを選んでいく。
皆で選びに来たからには、今日一緒に来た4人の中で一番可愛いものを選びたい。
他の子に、私もそれが良かったー!って言われたい。
限られた予算の中でどう組み合わせるべきか、誰も言葉には出さないまま、必死に考えた。
デパートの下の階。
改札階に繋がるその場所には、色とりどりのスイーツが並んでいた。
私たちの財布は、各々選んだステンシル達のおかげで、まるで羽が生えたように軽い。
そもそもなけなしのおこずかいを詰めただけの財布の戦闘力は、ドラゴンボールの世界のモブより低い。
そんな中、1人彩乃は100円のスイーツを4つ買った。
『ゆみの家に帰ったら皆で食べよう!』
今の状態の財布から更に400円も出せる。
他人の為に使う金額の方が多いなんて、なんてすごいんだ!!と驚いた。
私たちはとてもうきうきしながら帰る。
買ったばかりのアイテムを早く試したい。
彩乃が買ったスイーツも食べたい。
早る気持ちをよそに、電車は各駅で進む。
大丈夫、たった2駅。
「早く帰って年賀状作りたいねー!」
笑顔の彩乃がドアに寄りかかる。
その瞬間、背中の黒いリュックからパンッ!と乾いた破裂音がした。
ペコちゃんの顔が汚れてしまった事を、私たちは確信した。