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レンズ清掃 分解とカビ取り
カメラ販売を始めようとレンズを仕入れてみたものの
「カビだらけじゃん!!」
ってことは良くあることです。
しかし、これを乗り越えないと、レンズ販売で利益を取っていくのは大変です。
今回は、レンズ分解からのカビ清掃の解説をしていきます。
道具やレンズは持ってないけど、レンズ清掃をやってみたいという方は、体験教室へどうぞ。→レンズ清掃体験
レンズ清掃用の道具
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左方向から
・シルボン紙
・カビ取り用のレンズクリーナー
・脱脂綿を丸めたもの
・ピンセット
・非金属製のピンセット
・拭き上げ用のクロス
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・レンズサッカー(左上)
・カニ目レンチ(左下)
・ゴムオープナー(右上下)
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・ドライバー(通常サイズと精密ドライバー)
・竹串
・エアダスター
レンズ分解の方法 注意点
ゴムオープナー
押し付けて、摩擦をかけながら回す道具。
レンズ前面の銘板やレンズを止めているリングなどを外すのに使います。
カニメレンチ
カニ目と言われる、レンズの対角線上にある2個の穴、もしくは切り欠きに刺しこんで回す道具。
慣れてないと引っ掻いちゃうんでご注意。
ゴムオープナーで限界まで試して、回らないだけ使って下さい。
レンズサッカー
レンズを吸い付けて上にあげる、機能的にはスポイトみたいな道具。
レンズ分解中にひっくり返すといっぺんに外れてしまいうことがあるので、これを使って一枚一枚上に抜いていきます。
分解中の注意点
分解したレンズパーツは、外した順番に並べていって下さい。
上下(表裏)は外したときまま向きにします。ひっくり返して置いたりすると組み戻す時に訳がわからなくなります。
レンズ分解スタート
前玉分解
ペンタックスのレンズを分解していきます。
カビは絞り羽根の前後にあることが多いです。
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ネームリング(銘板)にゴムオープナーを押し付けて回します。
素手でもいいですが、薄手の手袋(ニトリルゴム)をはめるのもおススメです。
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銘板を外したところです。
以降外したレンズやリングは、元あった向き(上下)のまま順番に並べて行きます。
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再度ゴムオープナーで下を回していくとレンズを押えているリングが外れます。
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押えの取れたレンズをレンズサッカーで外します。
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これ以降下にあるレンズは、側面のフィルター枠が邪魔して外せません。
まずは、フィルター枠を押さえているネジを3本抜きます。
(フィルター枠を外さなくても分解できるレンズもあります。)
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フィルター枠を取ったところです。
前面のカニ目(レンズを挟んで2つある穴)にカニ目レンチを入れて回します。
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カニ目レンチを回す際に、刃先が滑って穴から抜けるとキズがつきます。滑ってしまわないように押す9割回す1割の力加減で回して下さい。
回してと書きましたが、少し動かす位のイメージです。
また、カニ目はゴムオープナーで回らなかった時だけ使用します。
キズ防止の観点からゴムオープナーで開かなかった時の手段として考えて下さい。
カニ目の持ち方
上側(人差し指側)は固定してあります。
下側は、カニ目のサイズに合わせて動かせるように緩めてあります。
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絞り羽根が出てきたら前玉の分解は終了です。
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後玉分解
前玉に引き続き後玉を分解します。
ちょうどカニ目用の切り欠きが見えるので回したくなりますが、そのまま回しても外れません。
また、レンズ内部ならまだしも外側でのカニ目レンチの使用は危険です。切り欠き付近のコーティングがハゲて、いかにも素人が分解したような見た目になってしまいます。
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まずはレンズ側面のネジを外してカバーを取ります。
軸の大きいドライバーを使うと、周りの金属を削ってしまう(特にニコン)ので細軸のドライバーを使って下さい。
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カバーを外すと、後玉の一枚目を外せます。
ゴムオープナーで緩め、そのあとは指で回して下さい。
ずっとゴムオープナーを使う人いますが、作業が遅くなります。指で回せるなら直接回した方が作業は早いです
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後玉一枚目を取ったところ
レンズを押えているリングにカニ目レンチの平刃の部分を入れ回します。
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絞り羽根まではもう一枚レンズがあります。
それを外すのは一苦労なので、付けたままで清掃します。
前玉、後玉ともに絞り羽根まで外してしまうのが一番クリーニングしやすいですが、今回のように前玉、後玉どちらか一枚残る(外れない)ケースはよくあります。
レンズ面的にはすべて露出していますので一枚は残っていても清掃が可能です。
また、何が何でも全部分解しようとする方いますが、清掃する必要のないレンズを外す必要は全くありません。
レンズ清掃
ピンセットでまるめた綿を摘みクリーナー液を付けます。
ひたひたにつける必要は無く泡の部分をつける感覚です。
液を吸いすぎたときは絞って下さい。
とくに、絞り羽根の近くを清掃する際は、水分を少なめにしておかないと絞り羽根が濡れて、動きが悪くなってしまいます。
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カビのあるレンズ面を拭いて清掃します。
カビ自体は、すぐに取れます。
カビがひどいとカビの跡がレンズに残ることがあり、そうなってしまうといくら清掃しても取れません。
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レンズの端に、取り切れていないカビがないかチェックして下さい。
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水拭きをした後は、シルボン紙で水分(クリーナー液)をふき取ります。
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もう一度、綿もしくはシルボン紙を使って拭き跡が残らないように拭き上げます。
レンズが傷つかないように、ピンセットの先ではなく面の部分(背中の方)がレンズに当たるようにして下さい。もしくは、非金属製のピンセットを使います。
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パーツが分離できている(レンズ面にダイレクトアタックができる)場合は、拭き上げはクロスを使った方が楽です。
分離できてない箇所に使うと、ふちにチリが残りやすいのです。
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レンズだけのときは、サッカーに吊ったまま清掃をします。
吸いついた面にはサッカーの吸着跡が残りますので、レンズをはめた後に清掃します。
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レンズ清掃後は、必ず光にかざして拭き残し、拭き跡が残っていないかチェックします。
また、キレイに仕上げが出来たかどうか(拭くむらがないか)は、レンズ面を光で反射させるとよくわかります。
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キレイにカビ清掃ができていれば、最後に表面についた細かなチリをエアダスターで吹き飛ばします。
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組み上げ
組み上げる際には、チリが入り込まないように、各パーツ面ごとエアダスターで空気を送りながら組み立てます。
また、絞り羽根の中にもチリは潜んでいます。
羽を開閉させて、チリを吹き飛ばしてからレンズを戻していって下さい。
レンズをはめ込む際にはレンズサッカーで元の位置に置きます。
レンズをはめた後、レンズサッカーを左右に回転させて下さい。正しくはまっていれば、サッカーの動きに合わせてレンズも回ります。動かない時は斜めにはまっている可能性大です。
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押えリングをはめるときは、元の位置に置いたのち竹串などで回していくのが安全です。
カニ目で閉め始めると斜めにハマっていても気づきづらいです。
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極めの際には、カニ目レンチを使ってしっかりと締めます。
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組み上げた後、表面レンズに残った、汚れやサッカーの吸着跡を拭き上げます。
わずかな汚れであれば、息を吐きかけて曇っているスキに綿かシルボン紙で拭いてしまえばOKです。
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一枚レンズを組むたびに、必ず光にかざして拭き残し、拭き跡が残っていないかチェックします。
真正面から光を透かすだけでなく、色々と角度を替えて確認して下さい。
一枚のときには、見えない汚れも何枚か組み合わせた際に拡大されて、汚れが見えるときがあります。
経験上、見た目はキレイな凸面のレンズが汚れていて、組み上げて見てわかることが多いです。
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分解後のチェック
レンズを組戻した後、絞り羽根の動作やが正常か再度確認して下さい。
*チリの吹き飛ばしが甘いと絞り羽根を動かしたときにチリが現れます。
また、正しく組戻されていない場合は焦点が狂います。
実機のレンズを付けて無限のチェックを行って下さい。
まとめ
カニ目レンチの使用は、ゴムオープナーで回せなかったときのみ
カニ目レンチは、押し9割回し1割の力加減
レンズは組み合わせるたびに拭き残しがないか確認
レンズサッカーの吸着面に拭き残しがないか注意
分解後の焦点チェックは忘れずに
参照: カメラ整備用の道具一覧
以上レンズ清掃の方法でした。