MDR-7506 / MDR-M1ST / ATH-M50x 比較
私は、ソニーの900ST(いわゆる赤帯)を所持していません。優先度が低いのと、歌などを録音することが無いからです。
かつて赤帯とどちらを買うかで迷い、軍配が上がったのは、姉妹機の7506(青帯)でした。なんというか、赤帯の音は真面目過ぎて面白くなかったんですよね。ここまでの共通言語が必要な相手もいませんし。
そうして赤帯を買わぬまま、青帯の後輩として我が家にやってきたのが、赤帯の後輩であるM1STと、オーディオテクニカのM50xです。
国内の基準である赤帯に対して海外向けである青帯はともかく、この2つは持っている人は多いのではないでしょうか。M50xでなくても、例えば一個グレードが下がってM40xとか。
で私はこれら三機を、以下のように使い分けるようにしています。
7506:普段遣い / 音作り / 低域チェック
M1ST:ミックス初期段階 / 中低域チェック / 粗探し
M50x:普段遣い / 高域チェック / 最終チェック
MDR-7506 (SONY)
普段遣いに加え、音作りと低域のチェックに用います。
赤帯に比べると音はドンシャリ系ですが、M50xと比べると、あんまり高域は強くありません。強いのかもしれませんが、M50xのような「点」ではなく、高域全体が強い「面」のタイプです。比較するとあんまりキレはありません。
低域に関しては、超低域のズンズンする感じがよく聴こえてくるので、サブベースを操作する際には持って来いです。盛りすぎを抑えることも出来ます。
後の二つと比べると「特にこの帯域が耳障り」といったことは少なく、比較的滑らかにカーブが描かれているように感じます。これはつまり、例えば金物系が強い音などを聴くと「高域のこの部分が強い」ではなく「高域が強い」と感じてしまうということで、余計な音までひっくるめて処理してしまう、なんてことになりかねません。高域を丸ごと潰したせいで圧迫感が強いデータを作ってしまったこともありました。そこだけ注意。
MDR-M1ST (SONY)
M1STは、ミックスの初期段階と中域のチェックで用います。まあ、纏めて考えてしまって大丈夫です。あとは粗探しですね。
青帯と比較すると中域が強めです。前に青帯のみでミックスした曲を聴いたときは、あまりのモコモコさに「うわっ」と言って思わず耳から外したぐらいでした。元々音が大きいというのもありますが。
中域は、ミックスの初期――EQでカットを行う段階から削られることの多い帯域ですから、最初にこれを使えば、そのモコモコ感に早めに対処することが出来ます。
高域は他の二つと比べるとあまり強くありませんが、バランスが悪い曲を聴くと、高域でもしっかり粗が見えてきます。赤帯の後継機でありながら周波数特性は全然違うというのがこのM1STですが、粗探しに強いという点では、立派にその立場を受け継いでいるのかもしれません。まあ私は、赤帯で粗探ししたことなんてないんですが。
そういやなんかスピーカーで聴いた感じに近いんですよね、この子。
弱点は明確。高域が控えめなことです。一概に正しさを論じることは出来ませんが、青帯もM50xも海外で人気ということで、低域と同じくらい高域も重要です。高域については、素直に他のヘッドホンに譲ったほうが良いと感じました。
あと余談ですが、M1STのジャックは標準プラグとなっているため、3.5mmプラグへの変換アダプタは用意しておいたほうが良いですね。
それと、M1STのイヤーパッドは好みが分かれるかもしれません。他と比べると薄めで、つけ心地はサリサリしています。
もう一つ余談ですが、この子には未だにSoundIDが対応していません。残念。
ATH-M50x (audio-technica)
今回の三機種の中で唯一SONYではないM50x。青帯と並んで海外では主流なんだとか。
私は高域のチェックと、作業の終盤で使ってます。
というのもこの子、ドンシャリ系なのは良いんですが、高域がチャリチャリするんですよ。ハイハットやアコギのような57で録るタイプの音はだいたいこれに引っかかります。青帯が「面」なら、こちらは「点」です。もううるさいぐらいに嫌ほどチャリつきます。
私がM50xを持っていなかった頃、高域については概ね似たように鳴るM40xを使う人にデータを渡したところ、「高域が強すぎる」と返されたことがありました。ここまで気を配ってたのに嘘だろと思ってそのM40xを借りて聴いてみると、あらびっくり。
プロの曲でも、私の聴く曲は半々の割合でこれに引っかかっていました。粒立ちが良く高域の解像度が高いのは良いことですが、だからといって耳障りでも困るので、大人しくこの子を使って整えるようにしています。
左右の分離感があるのも特徴ですね。だからパンを振りがちなギターがよく引っかかるのかな?
終盤で用いるのは、このM50xが何を聴いても恰好よく聴こえるためです。ということは、これで聴いて恰好悪い曲はミックスやマスタリングで求められる最低レベル以下ということになります。
裏を返せば、最低限の質を保つ曲なら何でも恰好よく聴こえてしまうことでもあるので、大枠はM50xで整え、残った粗はM1STで探して摘んでいくのが良い使い分け方ではないかと思っています。こうやって比べるととことん対照的だなあ。
ちなみに、私の持っているM50xは、2023年の限定版(アイスブルー)。本来はもっと後にM50xを買おうと思っていたのですが、発表されている24年版も含めた各限定モデルの中で一番恰好良いと思ったものが偶然販売中だったので、柄にもなく、ちょっと焦って買ってしまいました。後悔はしてません。
おまけ:K240 Studio (AKG)
これはほとんど使いません。私の耳には形が合わなくて。
ただ、私が持っている中では唯一密閉型ではないヘッドホンになります。(半密閉型) まあそれなりに音の広がりは大したものなので、そこんところのチェックをしたいときぐらいには使うかな……。
あとは、現状他人とやり取りするときにも共通言語として使います。私の周りはこれを持っている人が最も多いので。(次点でM40xユーザー) あくまで、ほんやくコンニャク的に。
イヤーパッド
私の耳はいわゆる立ち耳なので、多くの場合、ヘッドホンを付けたときに耳が潰れ、すぐに頭部のあちこちが痛くなってしまいます。
ヘッドホンの位置をずらしては、その度にジャックが接触不良を起こし、右から音が聞こえなくなったりなんとなく音が左によったりして、直すのに少し時間を取る、ということが頻繁に起きます。
そのため、今はYAXIのstPad2を使っています。
これは耳を包み込む形をしており、頭を圧迫すること無く快適にヘッドホンを使えるので、非常に重宝しています。
まあ、現状青帯以外の子たちには間違えて買った無印stPadがついているわけですが……。
まとめ
M1STで中域処理をしておいて、青帯で低域のブーストも含めた音作りをし、忘れた頃にM50xで高域をチェック。全体のクオリティが最低限のレベルに達しているかもM50xで確認したら、M1STで残った粗を取る。
こんなに細かくヘッドホンを切り替えていてはミックスにならないのではという声もあると思いますが、今のところは、私はこの使い分けで満足しています。参考までに。
あとは音のアタック感をRolandのRH300で、生音の細かいニュアンスはULTRASONEのSignature Pureで確認できれば、もう言うことは無いでしょう。いつかは買って損はないだろうと考えています。勿論、大勢に通用する共通言語として、900STも置かなければなりませんね。
この他、もっとクオリティを追求するのであれば、開放型や半密閉、それから更に高価なヘッドホンもあったほうが良いのかもしれません。お金がないので現在これ以上はできませんが、これもいつか、趣味で揃えているかも。夢が広がりますね。
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