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中学3年の秋のこと
夏休みも夏期講習も無事に終わり、いよいよ高校受験に向けて頑張らないといけない時期に突入した。
私ときたら、部活も引退し、海空先生に対しての気持ちも、高校受験についてもモヤモヤとしたままだった。
あの海の見える高校に進学したいと決心したものの、偏差値は微妙な感じだった。
海空先生にフラれたのに、リベンジのつもりではないが手紙を書いてしまった。
その時の私は、完全に暴走していたとしか思えない。
海空先生へ
先生から返事をもらって半年以上たってしまいました。
先生は、今も彼女と続いていますよね。
でも、私は先生のことを諦められずにいます。
高校受験が迫ってきているのに、
先生のことばかりを考えてしまっています。
先生の迷惑にならないようにするので、
先生のそばに居させてもらえないですか?
この手紙は、先生から以前いただいたペンで書いています。
成績があまり良くなくてゴメンなさい。
稀琳より
授業終わりに、誰もいないところで手紙を渡すことが出来た。
海空先生は少し困ったような顔をしていたような気がした。
翌日の夜21:30頃、自宅の電話が鳴った。
母が対応し、部屋にいた私に「塾から電話だよ、稀琳に代わってだって」と呼ぶ。
電話に出て驚いた。
海空先生からだった。
「ゴメンな、塾で手紙を渡されると困っちゃうんだ。
俺の住所を教えるから、メモあるか?」
「はい、あります。大丈夫です。」
「親が近くにいるの?
いつもと口調が違うじゃん(笑)」
「はい、そうです。」
「じゃあ、俺が言うことを繰り返して言うなよ(笑)
住所は・・・・・・・・・・
メモ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「それと来週の日曜、また模試があるじゃん?
俺、試験監督やらない日なんだよ。
それでさ、模試が終わったら2人で会いたいんだけど〇〇駅に14:30に来れそうか?」
「たぶん、大丈夫だと思います」
「それでさ、親には模試のあとに特別に補講があるって伝えておいて」
「はい、わかりました」
「勉強頑張れよ。
それとしっかり寝るんだぞ。
おやすみ」
「ありがとうございます。
おやすみなさい」
電話を切った後、やはり親から質問攻め。
海空先生の住所を書いたメモを握りしめて、模試の後に補講してくれるって連絡だったよ、と伝えて自室へ戻った。
この日は、ドキドキしちゃって眠れなかった。
これは1992年10月中旬のエピソード。
暴走した私だったけど、海空先生と2人だけで、塾でないところで会えるんだから模試を頑張るぞ!と意気込んでいました。