バレンタインデーの告白
気が付けば、あの当時の女の子にとって大事なイベントであるバレンタインデーが迫ってきていた。
通学していた中学校では、
『あの子が隣のクラスの子にチョコレートを渡して告白するらしい』とか
『好きな先輩に受験を頑張ってほしいからチョコだけ渡して、告白は卒業式にする』とか…
私に至っては、海空先生にチョコレートを渡すつもりでいたが、告白するか迷っていた。
ちょうど1992年2月14日は金曜日で、塾の授業がある日だった。
前日まで悩みまくり、手作りのチョコレートと一緒に手紙を渡すことにした。
当日、授業が終わって海空先生のいる教室を覗くと、女の子たちに囲まれていた。
どうも数人からチョコレートを渡されていたらしい。
【あぁ…海空先生は優しいから、海空先生に恋愛感情を抱いている人がいてもおかしくないよね】
10分ほど教室に入れずに悶々としていたら、他の女の子たちはみんな帰っていった。
私が入口のそばにいるのを見つけた海空先生が声をかけてくれた。
「どうした? 稀琳、またわからない問題でもあったのか?」
私は俯きながら首を横に振って、バッグからチョコレートと手紙を出して、海空先生に押し付けるように渡した。
「みんなからチョコを貰っているから、いらないと思うけど…
でも、先生に食べて欲しくて持ってきたの。
それとね、手紙を読んでもらいたくて書いてきたから、受け取ってほしいの。」
海空先生がニコッとして、「ありがとう、いただくよ!」と受け取ってくれた。
私は慌てて「じゃ、帰ります」と言って、海空先生の前から走り出してしまった。
そんな私を見て、「稀琳、ありがとうなぁ~、気を付けて帰れよぉ~」と手を振ってくれた。
帰りの電車の中で、もう少し別の渡し方があったんじゃないかな?とか、他の女の子たちの輪に入って行ってしまえばよかったかな?とか、いろいろ反省しながら帰った。
これは1992年2月14日のエピソード。
バレンタインデーに告白なんて、生まれて今まででこの1回だけなので、鮮明に記憶しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?