【No.3】奥尻島で経験したキセキの10日間
3日目
朝から散歩をしに仲間と2人で浜辺へ向かう。
浅瀬で島民の方が釣りをしていたので、話しかけてみると、"やってみなよ"とのこと。お言葉に甘えて…そのまま海釣り初挑戦。
こんな場所に魚がいるのだろうかと疑念を抱いていると、これでもかというくらいアジやサバが釣れる。いわゆる入れ食い状態。釣りの楽しさを知ってしまった。
"島でできることを沢山経験していって"と言い、午後には釣り道具を一式お届けに来てくれた。これが後半の自給自足生活で大活躍することになる。
島民の方の優しさ、温かさに、心が洗われた朝だった。
釣った(いただいた)魚はすべて自分たちで捌いた。
流れ作業で、捌いた魚の内臓を洗う担当に。何の躊躇もなく作業に没頭する。
海なし県で育った自分が、まさかこんなに魚を触れるようになる日が来るとは思ってもいなかった。
この日の主な活動は「奥尻ワイナリー」の見学。奥尻島ワイナリーは神威脇に工場を構える日本初の離島ワイナリーだ。
醸造責任者の菅川さんに工場を案内してもらいながら、醸造工程から豆知識まで幅広くワインについて学んでいく。
単に調べるだけでは得られないような情報も沢山教えてもらい、そんなことまで聞いてしまっていいのかと思うほど、なんでも気さくに教えてくれた。
お酒の中でもあまり馴染みのないワインに関して、親しみやすさを重視しながらの丁寧な説明は、自分たちのことを考えてくれているのがとても伝わってきた。
午後は、葡萄園に案内してもらい、食用葡萄とワイン用葡萄の味比較も経験。大きさ・色・味…いつも食べている葡萄とワインを作るための葡萄は、全く異なるものだと知った。
実際に奥尻ワイナリーで作られたワインの試飲や、ワインを加工して作られたアイスの試食もさせてもらう。ここでも五感を使って奥尻の魅力を感じ取ることができた。
夜は、島の南側に位置する青苗地区で、青苗会の皆さんに招待されたバーベキューに参加。
この日のために、3日前から準備をしてくれていたとのこと。ここでもまた島民の方々の温かさを感じる。
同席になった、まっちゃんに人生の話から秘密の話まで、沢山のお話を聞かせてもらう。人生経験が豊富な方との会話はとても勉強になった。
みんなが寝床についた後、居間で使っている机の位置を変え、長方形から正方形にしてみた。全員の顔を見ながら、食卓を囲めるようにするのが狙い。
少々窮屈になってしまった席もあるが、その分距離が近づいた。明日からの食事の時間がより一層楽しみになる。
この日、1日を通して学んだのは、見返りを求めずに何かをする精神だ。
10日間のうちのたった一瞬の出逢いを大切にし、自分たちをここぞとばかりにもてなす、島民の皆さんの姿を沢山目の当たりにした。この恩を受け、自分も誰かに恩送りをしようと思った。