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コーヒーと10000倍の隙間 ~ 物理ろ過の仕組みをもうちょっとだけ深く知る

ろ過と言えば?

一般的に思い浮かべるのは…

ペットボトルろ過器でよく実験される「物理ろ過」でしょうか。
水の通り道にさまざまな粗さのものを敷き詰めるなどして、水中のゴミや汚れを物理的にキャッチする。

非常にわかりやすい仕組みです。

しかし、わかりやすいからこそ、言われてみれば考えたことの無い「なぜ?」があるかもしれません。

例えば、物理ろ過では水に溶けた成分は濾し取れません。なぜ?


コーヒーフィルターのなぜ?

コーヒーを淹れるときに用いるフィルター。これもやっていることは物理ろ過です。粉にお湯を注ぎ、通過させてコーヒーを抽出します。

粉はフィルターにせき止められて、通りませんね。
通りません。粉は。

しかし、フィルターを通じて出てきたコーヒー、
黒いですよね??

ということは物理ろ過で止められなかった「何か」がお湯をコーヒーにしていることになります。

コーヒー成分のサイズ感

その正体は、フィルターのメッシュサイズ(≒網目の大きさ)よりも細かな微粉、あるいは、カフェインやポリフェノールなど、粉から水に溶けた成分です。

それぞれのサイズを見てみましょう。

コーヒー粉はおおよそ数十~数百μm。フィルターは10~100μmの網目を持っていて粉が通るのを防ぎます。しかし、例えばカフェインの分子サイズ
は0.6nm(水分子のサイズ0.28nm)ですので余裕で通過します。

10000分の一。
水に溶け出たカフェインはフィルターの隙間の10000分の一以上の大きさです。人間目線でいえば、10km四方の巨大な穴。引っ掛かるはずないですよね。

「物理ろ過では水に溶けた成分は濾し取れません」とは、「水と同じような小さなものなので通り放題です」という意味だと理解することができます。

*厳密に言えば、水分子の大きさに限りなく近いメッシュサイズのコーヒーフィルターがあれば水以外のほぼすべての成分を濾し取ることができるはずですが…、それはもはやコーヒーではない…。

私たちが美味しく飲みたい成分だけを抽出するメッシュサイズで製品がつくられている。こんなところも実は技術の結晶と言えるのかもしれませんね。

物理ろ過で足りないときは…

物理ろ過を活用する場面では、フィルターを通ったものがコーヒーのように良いものであるとは限りません。

それこそ水質が大事な陸上養殖では、物理ろ過で止められないアンモニアやウイルスも排除しなくてはなりません。

そこで様々なろ過システムを組み合わせます。これまでに紹介した生物ろ過、泡沫分離、UV殺菌…それぞれが長所短所を補い合っていたのでした。

それぞれの仕組みについて理解が深まるほどに、このコラボレーションの美しさを再発見できるように思いませんか?

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