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「育てる」を知ろう!

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魚を飼育するときに生じる「何これ?なぜ?」を一緒に学んでいきます。魚を育てている方、魚が好きな方、養殖のことを勉強していきたい方が読んで貯め占める発信をまとめます。
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#AQSim

コーヒーと10000倍の隙間 ~ 物理ろ過の仕組みをもうちょっとだけ深く知る

コーヒーと10000倍の隙間 ~ 物理ろ過の仕組みをもうちょっとだけ深く知る

ろ過と言えば?

一般的に思い浮かべるのは…

ペットボトルろ過器でよく実験される「物理ろ過」でしょうか。
水の通り道にさまざまな粗さのものを敷き詰めるなどして、水中のゴミや汚れを物理的にキャッチする。

非常にわかりやすい仕組みです。

しかし、わかりやすいからこそ、言われてみれば考えたことの無い「なぜ?」があるかもしれません。

例えば、物理ろ過では水に溶けた成分は濾し取れません。なぜ?

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ドヤ顔で魚と水温とカネを語れるようになる記事(魚と水温 フランクver.)

ドヤ顔で魚と水温とカネを語れるようになる記事(魚と水温 フランクver.)

水温という魚と生きようとするやつに漏れなく絶対につきまとうやつ。

全国の魚系おじさんが口々に言う。水温だけは必ず見とけ、水温変わったから魚いなくなったんだ、水温高いといっぱい食うんだ、水温で成長コントロールしてんだ…これだけ言われたら水温がすごく大事なものだってことは、嫌でもわかるサルでもわかる、「魚の飼育は水温が9割」「けっきょく、すいおん」なんて啓発本が出てもおかしくないかも。

でも全国の

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UV殺菌は織田信長。ろ過の弱点を補うイノベーション

UV殺菌は織田信長。ろ過の弱点を補うイノベーション

陸上養殖では、魚を十分なサイズになるまで飼育し出荷します。
育てる期間は半年から数年かかるものも。

どこかで魚の飼育環境が悪くなったり感染症が発生し、大量死、なんてことがあれば大きな損害が生じます。だからこそ、常に正常な水質を維持・管理することは養殖事業が安定的であるためにとても大事な要素と言えます。

今回ご紹介するのは「紫外線(UV)殺菌」について。

具体的な仕組みについては、丁寧な解説が

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魚は糖尿病動物?養殖に炭水化物エサを使えたら嬉しい理由

魚は糖尿病動物?養殖に炭水化物エサを使えたら嬉しい理由

「魚は糖尿病動物」
とある専門書に記述された表現です。

もちろん、実際に魚が糖尿病というわけではなく、比喩的な表現です。

これは、魚の代謝が私たち哺乳類と異なり、糖(炭水化物)をうまくエネルギー源として利用しにくいことを示しています。

もし、魚が炭水化物をもっと効率的に消化できるようになれば。養殖業界にとって大きなメリットが生まれるそうで…。

魚はなぜ「糖尿病動物」と言われるのか?

私た

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まさか、鍋を美味しくする灰汁とりの仕組みが濾過装置からわかるとは:泡沫分離

まさか、鍋を美味しくする灰汁とりの仕組みが濾過装置からわかるとは:泡沫分離

陸上養殖の施設では、こんな装置を見かけることがあります。

下の方から大量の泡が出てきており、上の方には汚れがたまっているように見えます。果たしてどのような役割をもつ装置なのか。

仕組みを調べていくと、意外にも"鍋料理の灰汁とり"についても理解が深まっていくのです…!

なぞの装置と、灰汁とりの共通点。
そこには「泡」が関わってくるようです。

何の装置?=泡沫分離装置この装置は、泡沫分離装置(

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キンッキンに冷えた手で、魚を生かす。研究者が真冬の水に手を浸けるワケと願い

キンッキンに冷えた手で、魚を生かす。研究者が真冬の水に手を浸けるワケと願い


育てるを育てる。AQSimです。

素手で触るな!水産の現場では、生きた魚に触れるとき、かつ、触ったあとも元気でいて欲しいときに「素手で触っちゃダメだ!」と注意を受けることがあります。

これはなぜでしょう?

大抵は「魚がヤケドをしてしまう。」という表現で説明されます。
変温動物である魚にとって人の体温35-37℃はかなり熱いものであり、ダメージを受けてしまう、そうです。

でも、もう少し理解

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生物から生物へつながるバトンで水をキレイに。~養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?後編~

生物から生物へつながるバトンで水をキレイに。~養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?後編~

>>中編

生物ろ過に+αで必要なコト生物ろ過槽で働くバクテリアは、環境づくりをしてあげることで有毒なアンモニアを分解してくれます。

分解されたアンモニアの最終的な姿は、「硝酸塩」

この硝酸塩は、アンモニアや亜硝酸塩ほどは有害ではありません。

ということは、高濃度になるとやはり魚や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。+アルファの定期的なメンテナンスが必要となりますが、どんな方法があるのでし

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元気なバクテリアづくりと、まちづくりとの共通点~養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?中編~

元気なバクテリアづくりと、まちづくりとの共通点~養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?中編~

>>前編

適切な生物ろ過を作るには?自然界ではバクテリアの活動による水質浄化が自然に行われています。
しかし、人工的にろ過装置を作るときには、専用の素材や培養材といった設備・操作が必要に。

鍵になるのは、いかにバクテリアが元気に活動できる環境を作るか!です。

この環境づくり。
実は、人間社会のまちづくりと共通した見方もできそうなのです。

それでは、実際にどのようにして生物ろ過を作るのか?

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養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?前編~毒もあるいはエサになる。

養殖に欠かせない「生物ろ過」とは?前編~毒もあるいはエサになる。

育てるを育てる。AQSimです。

陸上養殖で魚を健康に育てるためには、まず水質を適切に保つことが大切。魚の健康と成長を大きく左右します。

ではどのように水をきれいに保ち、魚が健康に育つ環境を維持すればよいのでしょうか?

そのための重要な方法が「ろ過」です。

陸上養殖の「ろ過」では、大きな汚れを取り除く物理的なフィルターだけでなく、目に見えないバクテリアが活躍しています。
まずは、それはどん

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あの魚も、刺身で食べられるようになるかも?陸上養殖が私たちの食をゆたかにする可能性

あの魚も、刺身で食べられるようになるかも?陸上養殖が私たちの食をゆたかにする可能性

育てるを育てるAQSimです。

あなたの好きな食べ物は何ですか?
好みは人それぞれですが、一般に好まれている食べ物と言えば?

こちらのランキングを見てみますと…
【人気投票 1~1307位】好きな食べ物ランキング!最も人気がある料理・食材は? | みんなのランキング

第一位は「寿司」!

魚料理に絞ると
22位に「鮭・サーモン」、35位に「刺身」がランクインしてきます。
結果を見ると、魚の食

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水温を上げるヒーターの仕組み~部品同士の連携作業

水温を上げるヒーターの仕組み~部品同士の連携作業

育てるを育てる。AQSimです。

外気が寒くなる季節、水温ヒーターの稼働を抑えることが魚の飼育コストを抑えるポイントになります。

先週の記事では
梱包シートを使って簡単にできる方法を1つご紹介しましたが、

そもそもな話、
水温ヒーターはどんな仕組みで動いているのでしょう??
これを知っておけば、知恵を活かして別の節約の仕組みを思いつくかもしれません。

 水温ヒーターの3ポイント一般的に水温

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すぐに簡単に、水温を維持するプチ工夫

すぐに簡単に、水温を維持するプチ工夫

育てるを育てる。AQSimです。

10月になり、少しずつ、あるいは急激に秋の空気となってきました。
夏の服装だと肌寒いと感じるようになった地域もあるかと思います。

空気が冷たくなるということは、水も冷たくなっていくということ。
魚にとって適正な水温が保たれることは死活問題ですから、水温ヒーターの働きも増えていくはず。

ここで気になってくるのが、ヒーターによる電気代です。
できるだけこれを抑え

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うまく・はやく・つよく「交雑育種」とは?

うまく・はやく・つよく「交雑育種」とは?

育てるを育てる。AQSimです。

もう6年前になりますが。
こちらの画像をご存じの方はいらっしゃるでしょうか?

ブドウの家系図。

あのブドウとあのブドウが掛け合わさってあのブドウが出来ていたんだなぁ、そのブドウとあのブドウがさらに掛け合わさってこのブドウが出来たのかぁ、そのブドウとこのブドウでどのブドウになったんだろう。ブドウとブドウでブドウが作られて、ちがうブドウ同士を掛け合わせると子のブ

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養殖界の希望の光は何色か?

養殖界の希望の光は何色か?

育てるを育てる。AQSimです。

緑色の光を浴びせると、
ヒラメがグングン成長する!

青色光で、魚の子どもの動きを操れる!

そんな話があったら、皆さんは信じますか?

まるで魔法のような話ですが、これらは科学的な検証から示されてきています。本記事では近年急速に発展が進んでいる「魚と光」のお話しを紹介していきましょう。

光の色って?私たちが普段目にする光の中には、たくさんの波長をもった光が混

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