街から山へ。転職を決意した本当の理由
山小屋の者ですが、今年の営業期間よろしくお願いします。
電話越しにそう言われて、私の心が嬉しさで震えた。
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私は趣味で風景写真を撮っている。
自然の中を歩き回っていると癒されるし、幻想的な景色に出逢えるととても感動する。
そんな私が、山小屋で働くことを決断した時のことをここに書き留めてみることにする。
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私は高校を卒業してからすぐに社会人として働いていた。
学生の時はまだ夢があった。
でも実際にそれを果たすのは難しいと入社してすぐに感じた。
今後私はどうするのだろう。
ずっとここで働いているのだろうか。
私はここでなにか成長できるのだろうか。
私の居るべき場所はここじゃないんじゃないか。
そんなことを考える時間が日を追うごとに増えた。
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山登りを始めたのは風景写真を初めてすぐの事だった。
初めて登ったのは残雪の谷川岳。5月下旬のことだったのでアイゼンを使う場面は少なく、安全に下山することができた。
でも、登っている最中はとても辛かった。
山頂はまだか。休めるポイントはまだか。と心の中で常に考えていたと思う。
そのうちに私が見たかった景色が見れるポイントに着いた。
壮大な景色に圧倒される。
自分が登ってきた登山道の方向を振り返り、私でも登れた、この景色が見れた。と感動した。
家に帰ってからも、その時の感動が忘れられず、私は登山にのめり込んだ。
そして、回数を重ねるうちに自然に関わる仕事がしたいという気持ちがふと芽生えていた。その時の文章がこちら。(2019.8.28投稿)
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私はいつの間にか、街で働く事に希望を見出せなくなっていた。
自分が本当に何をしたいのか分からなくなっていた。
でも、明確な事が一つだけあった。
それは、いつかは山で働いてみたいということ。
この気持ちはいつまで経っても変わらなかった。
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2021.10.23 私は仲間とともに上高地へ足を運んだ。
久々の北アルプスでワクワクしていた。
そこで、とても素晴らしい景色に出逢った。(下の写真)
私はこの写真を撮影している時も
ふと、
将来私はどうしているのか、
今どうするべきなのか、
何をすればいいのか、
何をすべきなのか。
たくさんのことを山に問いかけていた。
星と共に輝いていた穂高岳は
あなたらしく生きればいい。
そんなふうに返してくれたように感じた。
当時も考え事が沢山あって、自分にとても疲れてしまっていたけれど、少し光が見えたような気がした。
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そして、約1ヶ月後
写真の趣味で、一つの目標としていた東京カメラ部さんの10選U-22コンテストでこの作品も選んでいただけた。
素直に嬉しい気持ちと共に、新しい未来の道が見えた瞬間だったと思う。
この機会を逃したら私はきっと変われないままになると思い、家族に
山小屋で働きたい。
と相談した。
前にもそんなことを言ってみることはあったが、当時は自分も生半可な気持ちでいた。
でも今回は違った。
親も私の気持ちをくみ取ってくれて、山で働くことを応援してくれるようになった。
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傍から見たら、私が職場に合っていなくて働きたくないだけで、ただの「逃げ」という感情からの行動とも捉えられる。
でも、今現在の私は街で生きることよりも、自然の中で生きてみたいと思った。私ができること、したいことは山にあるんだと思った。「働きたい」「力になりたい」と素直に思える場所だった。
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この文章はただの私の心情の記録だ。
私にとって今回のこの選択が正解か間違いか、そんなことは絶対考えない。まだまだ未知数な私の心が山での生活で何を得てどんな感情が生まれるのかこれからがとても楽しみである。
新たな場所でたくさんのことを見たり学んだり、
たくさんの人と関わって、
また私が進むべき方向、進みたい方向が見つかったらいいと思う。
p.s.
僕のヒーローアカデミアというアニメの4期23話「垂れ流せ!文化祭」は、主人公のクラスが文化祭での発表をする回。その中で、耳郎響香という漢字は違えど「きょうか」と私と同じ名前の子がいて、その子が抱えていた想いに対して両親との回想シーンがあるのだが、それがとても泣ける。
言葉が胸に突き刺さっていつの間にか涙で視界がぼやける。
そのストーリーを何度見返して勇気をもらったことだろうか。。
耳郎ちゃんパパママもありがとう。
(※おすすめのアニメです。1期1話からどうぞ。)
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