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年間ベスト映画2018を選んだ
昨日「公開配信だよ!ぷらすと的2018年ベスト映画!」を観て触発されたのもあって、自分なりの10本を選んでコメントも書いてみた。選考対象の鑑賞作品は最後にまとめて載せるよ (「あの作品は入ってないの?」と思うこともあるかもしれないけど単純に予定が合わなくて見逃したとかが多いです)。あと、すでにブログで詳しく感想を書いている作品もあるので後ろの方でリンクを載せるよ。
【! いずれの作品も、シナリオの核心に触れているのでネタバレ注意 ! 】
10. フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
子供の頃、自分の家で鳴っている音楽は自分が選んだものではなく、親がとりあえず流しているようなCDだった。この作品で少女ムーニーが母と住む家では、ムーニーがお風呂で遊んでいるときを含めていつでも、アタック感の強いラップが鳴っている。その構図が、子供は自分が育つ環境を自分で選べない中でも自分なりに楽しく生きていく ( "親があっても子は育つ" )ことと、超ビッチな母親もある意味ムーニーを守っているということを端的に映像化しているのだと思う。
ラストシーンではムーニーは友達と一緒に煌びやかな場所に辿り着くけれど、フロリダの強い日差しでアイスクリームがあっという間にべちゃべちゃに溶けていくみたいに、夢の国はすぐに消えて、いつまでもうだるような暑さが続くような居心地の悪い現実が待っている。そんな虚しさが伝わってくるように解釈した。
9. 寝ても覚めても
この映画を観る前にちょうど後輩の結婚式に行っていて、新郎は挨拶で「愛とはお互い見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」という言葉を引用していた。素敵じゃないか。
ラストのカットでは2人がベランダから淀んだ川を見つめている。朝子が麦あるいは亮平を見つめるのではなく、2人が横に並んでいる。この先どうなるかは不確かで、朝子の罪悪感と亮平の怒りと不信感が混ざり合い、目の前の川の色のように淀んだ空気の中でも、とにかく2人は同じ方を向いて立っている。亮平が朝子に「俺はお前を信じられへんからな」と告げたような距離感の関係性も、お互いを見つめるのではなく、横に相手がいることを実感するポジションの中では愛し方として成立するんじゃないか。
8. タクシー運転手 約束は海を越えて
誰かを頼り、誰かを信じ、願いを託することのできる力強い勇気を描くと同時に、軍人が民間人に一方的な暴力を振るっていた残酷な事件 (まるで「アクト・オブ・キリング」のような、人間が内包する虐殺器官が稼働する瞬間)を真正面から取り上げ、それでいて笑える場面もたくさんあるという凄まじい映画だ。
大義に従っていることで民間人に暴力を振るう行為を正当化している狂気を史実として描いたこの作品を踏まえて、今の日本はどうか。「ルールなんだからそれに従え」という仕組みが蔓延る学校組織や会社組織で、猛暑なのにクーラーつけないだのノルマ強要だの、安心して豊かに生きる権利が奪われるような制度がまかり通って維持されている。これを平和と呼ぶのだろうかとふと思う。
7. ブリグスビー・ベア
自分が世界だと思っているものが誰かの作った虚構だったと判明したとして、その事実に愕然とするのではなく、仲間を見つけて何かを大きく変えていこうと挑んだり、「創造主」が報われるように奔走したりする。そんな筋書きからは、今年めちゃくちゃハマったアニメ「SSSS.GRIDMAN」に通じる魅力が見出せる。
ブリグズビー・ベアにもGRIDMANにも「自分のやろうとしていることを自分自身が信じること」「一緒に取り組む仲間を見つけること」「変化を恐れないこと」「感謝の気持ちを伝えること」などなど、何かを変えようとチャレンジする上で必要なことがたくさん詰まっている。
6. ペンギン・ハイウェイ
アオヤマくんやハマモトさんのように、知らないことを知ろうとする純粋で力強い情念と、知りたいという願いをゆずれない、頑固なひたむきさを瑞々しく描いた素敵なアニメだ。大人になってお姉さんと再開できるまでの、不透明だけど確かであってほしい道のりを宇多田ヒカルの主題歌「Good Night」が優しく抱擁してくれる。
森見登美彦作品の映像化ということで、この映画のアオヤマくんも森見小説の系譜を辿って将来は京都大学に入るんだろうか。そしてあらゆる知的活動を四畳半の万年床の内側でのみ繰り広げるような自堕落モードを採り、溢れる才能を無駄遣いするんだろうか。なんて余計なことも考える (ハマモトさんは海外留学とかしそうだね)。
5. 恋は雨上がりのように
男はみんなメルヘンの世界に生きているという見解があり (※)、都合のいい妄想を脳内に繰り広げるものなんだと思う。だけどこの作品で大泉洋が演じる店長は、バイトの女の子にいきなり「好きです」と言われ、想像だにしていなかった展開に面食らうことになる。一体自分の何を気に入ってくれているのかは分からず、嬉しいんだけどむず痒くて困ってしまう。都合の良いメルヘン妄想ではたどり着けないポジションに陥ってしまった逡巡がキュンキュンする。
そこから極めて大人な対応というか、自分にとっても相手にとっても良い結果になるように冷静に立ち回り、お互いの選択がお互いを良い場所に連れて行ったことを喜び合う。爽快だ。
※ 映画「台北ストーリー」の台詞として出てくる。それを聞いた瞬間、図星すぎて映画館の椅子の上で腰から崩れ落ちた。
4. スリー・ビルボード
「真実はひとつ。だが正義は1つとは限らない」という言葉がある (出展は仮面ライダー龍騎)。現実世界が持っているそんなシリアスでやるせない前提に立ちつつ、「だから憎しみは消えない」「だから争いは止まない」のではなく、憎しみの連鎖の中でも、自分を傷つけた相手を赦すことで希望や可能性が生まれていく様を描いて見せた力強い作品だった。
3. 勝手にふるえてろ
この作品が公開されたのは去年の末だけど、観て盛り上がったのは今年の1月だった。今年のベストに入れる。
ヨシカというキャラクター、そしてそれを演じる松岡茉優がとてつもなく愛おしい。感情的な殻の内側から世界に向かって心の声で言いたい放題ぶつけている感じが好きすぎる。自分はジャンヌ・ダルクとも渡り合えるような何者かになれるのではないかという根拠のない全能観を抱く、永遠の中二病プリンセスなところも好きすぎる。
ヨシカには「自分自身と結婚することができる世界だったら君にはそれが一番いいと思う」と伝えたくなってしまう。
2. リズと青い鳥
音楽を鳴らす際に「失敗しないように演奏する」のではなく「感情を解放するような表現として演奏する」ことで空気が大きく変わり、感情が力強く突き動かされていく瞬間をこんなに見事に映像化した作品が実在できるなんて。京アニの魔法、おそるべし。
関係性のドラマとしてもすごく好きだ。籠の中の鳥と、外側からそれに話しかける人がいて、外側の人は鳥に対してポジティブな好意を抱くことによって「鳥に接することができる距離」の圏内にいようとする (比喩)。言わば、外側の人も関係性が生み出した籠の中で生きることになる。でも、お互いの気持ちをもっとよく知ることによって「籠」として機能していたものを、確かな絆として、信頼できるつながりとして実感できる。そういう暖かい気持ちにさせてくれる映画でありつつ、ひんやりとした本の表紙に触れているような落ち着いたトーンで一貫しているのが心地よかった。
1. レディ・プレイヤー1
この映画を観てからまだ8ヶ月しか経っていないのに、まるで2年くらい前から知っている作品のような気がする。自分にとっては「Mommy」や「シング・ストリート」「シン・ゴジラ」のように、この10年で印象深かった映画はどんな作品か? を振り返る上で真っ先に名前が挙がる作品になると思う。
今や家にいる時も出かける時も、どこへ行くにもインターネットが一緒で、インターネットには何でも心の内側から打ち明けることができて、元気じゃないときでもインターネットが提供してくれるあらゆる手段によって気分を切り替えたり前向きにしたりして、私 (たち)は自我を保っている。最早「ネット上の自分」は「自分のコンプレックスを覆い隠しつつ振る舞うための虚像」を超えて「誰よりも自分のことを知っている分身」として存在し得るのだと思う。
その分身の姿を自分で選択し、自分が生きる現実世界をより良くするためにテクノロジーの力を他者と一緒に引き出せる人間が幸福な未来に辿り着けることを描いた本作が、今の時代に届いたことが本当に嬉しかった。
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まとめて10本を並べる。リンクがあるやつは過去に各作品について詳しく書いたブログ記事に飛ぶので、読んでもらえるととっても喜ぶよ∩(´∀`)∩
1. レディ・プレイヤー1
2. リズと青い鳥
3. 勝手にふるえてろ
4. スリー・ビルボード
5. 恋は雨上がりのように
6. ペンギン・ハイウェイ
7. ブリグズビー・ベア
8. タクシー運転手 約束は海を越えて
9. 寝ても覚めても
10. フロリダ・プロジェクト
鑑賞した作品のリスト
ぜんぶで37本。あ、それと「アリー スター誕生」は年内に観たいな。
1月:
キングスマン ゴールデン・サークル
ルイの9番目の人生
勝手にふるえてろ
2月:
デトロイト
スリー・ビルボード
3月:
リバーズ・エッジ
ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目覚め
シェイプ・オブ・ウォーター
リメンバー・ミー
ブラック・パンサー
4月:
ザ・グレイテスト・ショーマン
レディ・プレイヤー1
5月:
君の名前で僕を呼んで
GODZILLA 決戦機動増殖都市
6月:
犬ヶ島
デッドプール2
万引き家族
バーフバリ 王の凱旋 完全版
ハン・ソロ
7月:
恋は雨上がりのように
ブリグズビー・ベア
カメラを止めるな!
8月:
フロリダ・プロジェクト
タクシー運転手
ハン・ソロ (2回目) ← 2回観るくらい好きだし12位くらいなんじゃないかな
ブッシュウィック - 武装都市 -
ペンギン・ハイウェイ
9月:
リズと青い鳥
10月:
クレイジー・リッチ
若おかみは小学生!
11月:
Modern Life is Rubbish
GODZILLA 星を喰う者
ボヘミアン・ラプソディ
12月:
機動戦士ガンダムNT
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
寝ても覚めても
ガンジスに還る
来年も良い映画ライフが待っているといいな。