負動産時代の到来――人口減少がもたらす土地余剰問題

日本では空き家問題だけでなく、使い道のない土地が増加する「土地余剰問題」が深刻化しています。特に人口減少が進む中で、相続された土地が活用されず「負動産」と呼ばれるケースが増えています。これは、持っているだけで固定資産税や管理コストがかかるものの、買い手がつかない土地のことを指します。所有すること自体が負担になる時代が訪れているのです。


国が土地を引き取る制度の課題

2023年に創設された「相続土地国庫帰属制度」は、使い道のない土地を国が引き取るための仕組みです。しかし、この制度は申請要件が非常に厳しく、長野県内では申請のわずか27.9%しか承認されていません。国が土地を引き取るためには、更地であること、債務や権利が設定されていないこと、境界が明確であることなど18項目の要件を満たさなければなりません。一つでも該当しない項目があると却下され、結局は多くの土地が持ち主の手に残される状況です。


負担を背負う相続者たち

相続した土地を持て余している人々の苦悩は深刻です。たとえば、農地を相続した63歳の男性は、雑草が伸び放題の土地を管理するために毎週末草刈りをしており、「ただでもいいから誰かに使ってほしい」と嘆いています。しかし、農地法や河川法、市街化調整区域などの制約から土地の活用が難しく、法務局への相談の結果、国庫帰属制度の申請も断念せざるを得ませんでした。このような状況に置かれる相続者は増加しています。


所有から利用へ――時代の転換点

「負動産」という言葉が示すように、土地を持つことが必ずしも資産でなくなりつつある現代。所有には税金や管理コストが伴い、それが負担になる時代になっています。自動運転車の普及が進めば駐車場も余剰化し、その土地にも同様の問題が発生するでしょう。

これからは、土地や家を「所有する」から「利用する」へと価値観を転換することが求められるかもしれません。シェアリングエコノミーや土地の共同利用など、新しい発想で「余る土地」を活用する方法を模索する時代に突入しているのです。


行政や社会の役割

こうした問題を解決するには、行政の積極的な関与が不可欠です。例えば、農業委員会や自治体が仲介し、遊休地の活用を推進する仕組みを整える必要があります。個人の責任に任せるだけでは、問題は解決しないでしょう。

また、税制や土地利用に関する規制の見直しも急務です。所有者が負担を感じずに土地を手放しやすくする制度改革が求められています。


おわりに

日本は今、「負動産」という新たな社会問題に直面しています。土地や家の所有に縛られず、柔軟な利用を考えることがこれからの課題となるでしょう。行政、企業、個人が一体となり、この問題に取り組むことが、持続可能な社会の実現につながるのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!