生と死を繋ぐお守りを手に入れた
無機質なアラーム音がジリジリと鳴って、目覚めろという合図がした。しょうがなくアラームを止めて、眠たく気怠い体を布団から起こす努力に励んだ。偉いので、普通に時刻はまだ6時である。偉いという気持ちを高めたいが為に、とりあえず勉強してみた。所詮お気持ち程度である。
今日は前々から応募していた、ボランティア活動の日。ボランティアをしてみよう!という軽い気持ちと、ちょっとした内申稼ぎである。一人で申し込んだので、少しドキドキしていた。初見の場所が苦手な訳ではないけれど、とは言っても多少の緊張感は持ち合わせてしまうタイプなのであった。集められて活動して、思ったよりやることないんだなーと思ったし、運営がなってないな(上から目線)と思ってしまった。自分は高校で総括だの纏めタイムスケジュールを組んだり、先を見通したりをしているので、何だか私のほうが上手く回せるのではないかと思ってしまったくらいのクオリティであった。まあ、参加させていただいている身なので、あまり見て見ぬふりをしてみた。知らないほうがいいことだって、あるし。特にトラブルなく、卒なくボランティア活動を終えた。15時半、これから私は渋谷へ向かうのだ!
お得意(笑)のJRを乗り継ぎ渋谷駅に着く。都民でない私は、何回来たって渋谷の人の密集と技術が混ざった空気に慣れないのである。全く持って時代の進歩とは、難しいものである。さて、私がなぜ渋谷に来たか。それは、私の大好きな、morgenさんのイベントがあったから、だ!!!やっぱりどんなイベント事も、毎回ワクワクするもので、この為にボランティア活動をして恩を積んだと言っても過言ではないくらいには、楽しみにしていた。苦手なGoogleマップを駆使しながら、会場にやってきた。一人なのと、前後が男の人だった(女の子が見当たらなかった)ので、依然として不安な気持ちだった。入り口にいたスタッフさんにQRコードを見せて、中に入った。まず物販で、欲しいものを買った。尚、地下アイドルのオタクをしていた私からしたら、チェキに目が無かった為、チェキ欲しい!という一点張りであった。後普通にmorgenさんが、デコチェキの才能がありすぎる、本当に。物販を終えて、展示スペースを徘徊する。色んな人が、morgenさんの日記を集まって見ていて、何だか、感無量であった。全部、読み落としがないように、一文一文を声に出すかのように、ゆっくりと読んだ。写真も撮ったが、やっぱり初見の記憶をしっかりと遺しておきたいのだ。やはりmorgenさんの文は、考え方は、私と違ってすごく面白いのと、私と共通する部分もあって、納得の行く文だった。他人の書物に対して、納得がいく、は変だと思うがこの気持ちを表現するにはこれしかないのだ。言い方を変えると、わたしのこの感情はこのような表現ができたんだ、みたいな。じっくりと、日記を見て、最後の特典のブースに入った。はじめてmorgenさんに会って、顔ちいさ!かわい〜!!!って、なりました。自分が話したいことを一方的に話してしまったけれど、笑って聞いてくださったので、良かったかなとは思った。絶対伝えたかったので、聞いてもらえてうれしかった!
そんなフワフワした気持ちを抱えて、夜の渋谷を歩いた。相当夢見心地な気分だったと思う、Be.Realの通知を無視してしまうくらいには。ちゃんとしたJKなので、Be.Realは撮るタイプだ。そんなどうでもいい話は置いておいて、るんるんで地下鉄に乗り込んだ私は、読みかけの本を取り出した。読んでいる本は「凍りのくじら」という、辻村深月先生の書物である。辻村深月先生の傲慢と善良、を読んでから先生の作品をちょっとずつ揃えてきて、読むのは自分の中では三作品目になる。通学の時間に毎日少しずつ読んでいたページは、もう厚さがなかった。最後の一章を電車に揺られて読み、公共の場で申し訳ないが、泣いてしまった。読む場所ミスったな、とは思った。途中で。「凍りのくじら」の感想を並べると、果てしなく長くなるので、それはまた別の機会に。
最寄り駅について、家まで歩く。音楽を聞いて帰ろうと思って、適当なプレイリストをかけた。「あなたはヒーロー」一曲目に流れた曲だ。このゆったりとした電子音楽に身を任せていると、それにつられて足取りも重くもったりとした。壊れかけの街灯ばかりある道に置かれた、床屋のサインボールの赤青が、やけに眩しく、私を穿いた。痛いほどに。光というものは、時に人を射す。電子音の歌声と、眩い光に照らされて、知らない場所みたいだった。アニメのような、異空間。私は心躍っていた、何故ならこの世界に、一人みたいだったから。流れてくる曲をドンドン心地よく聴く、「非国民ヒーロー」「夜になったら耿十八は」「銀河高速」ジャンルの違う音楽を嗜みながら歩く夜の街は、何だかキラキラしていた。工事用の赤青の点滅ライトと、当たり前のように光移ろう信号機。いつも見る景色と違う気がして、つい写真を撮ってしまった。決して綺麗とは言えない工業的な光に、心が弾んだ。そう思うのも、今日だけ。
家に着いて、ドッと疲れが来た。楽しいフワフワした気持ちが急に消え、困惑したような。でも会えて日記に、文才に触れられた方の記憶が強くて、まだ楽しい…!でも記憶って消えてしまうから、どうにか繋ぎ止めたくていまコレを書いている。すぐ勉強机に向かい、ノートを開く。morgenさんの展示会に行って、「凍りのくじら」を読んで、の感想を大事に書き連ねてから、リビングへ向かった。
時は過ぎ、夜。私は先日配信された「ルックバック」のアニメ映画を見ようとしていた。そもそも原作漫画のファンで、Amazonプライムで配信されると決まった日から、絶対に見たいと強く思っていたのだ。自分は映像作品が好きではあるが、じっとしていられない性格な為に、映画館などの拘束された場所でしか集中して見れないことが多かった。今回もそうで、集中出来ない事は自覚していたので、部屋の片付けがてらに観ていた。決して作品を馬鹿にしているなどではなく、これは自分自身の怠惰さ、である。見始めてから、私でも、魅入ってしまった。漫画の良さ、漫画家を題材にしている作品でもあるからこその、会えて線画を複数線にする。漫画のストーリーを出来るだけ削らず、原作に忠実である話の作り。そして何より、藤野 を演じる俳優の河合優実さんの演技が凄く良かったのだ。河合優実さんと言えば、私が見ていたドラマ「不適切にも程がある!」の娘純子役として一躍話題になっていた俳優さんだ。最後のエンドロールを見るまで、分からなかった。藤野のひたむきで真っ直ぐで、負けず嫌いだけど芯があって。そんな藤野を生き写すように演じていた河合優実さんに、尊敬と感動を覚えた。素人ごとだが。ひたすら泣いた。
そういえば、生と死を繋ぐお守りを手に入れた。書きすぎた、おやすみなさい。