不意打ちのキスはありえない
ドラマで男女が急に距離を詰める手段として、いまだに「不意打ちのキス」が使われることがある。
しかも大抵、女側がひどく鈍感で、不意打ちのキスをされて初めて「え、え?」と男の好意に気づく。
私は新しい朝ドラ「おむすび」を楽しく見ているのだけど、結構ベタてんこ盛りですよね。
橋本環奈に不意打ちのキスをする男が遠くない未来に現れるんじゃないかと今から恐れてる。
現時点で最も「不意打ちキス風」を吹かせているのは風見先輩だけど、彼は相当ボケてるので、意外にそういうのはなさそう。
あるとしたらドジすぎて顔がぶつかっちゃうやつ。
陽太はそこまでの度胸がなさそうだし、やっぱり佐野勇斗なんじゃないか。
今のところ、橋本環奈は誰の好意も感じ取ってない。危ない。
ドラマが罪だなと思うのは、結構美人の存在として描かれてるにもかかわらず、恋愛感度ゼロのヒロインが多いこと。
あそこまで可愛らしく育っていれば、「目が合う」とかをすぐ恋愛に結びつけるだろうに、「気のせい…?」とも思わずゴキゲンで帰宅していく。
社会人になってもまだ鈍感な美人は、夜の居酒屋でかーっと1人ビールをあおりつつ、困った人には敏感で、倒れた人をすぐ介抱したりとか。
そんで、見知らぬ男性となぜか2人で病人を家に送り届ける途中で見初められてしまう、とかにも鈍感。
そして不意打ちのキス。
いや、かなり危ない。危険。
女を鈍感設定にするのもたいがいにしてほしい。
大体、キスが不意打ちなんて、ありえるのだろうか。
距離でわかるでしょ。
あ、近い(怖い)みたいな。
いくら驚いても「え…?」だなんて相手を見つめる無防備さでフリーズしないだろう。
大体反射神経というのがあるはずで、後ずさり、横歩き。
あるだろう。
もっとわかんないのがキスされたあとのビンタ。
これがよくヒットする。
いや、ビンタするなら逃げられるだろと思う。
さらにイラつくのが、キスされたあと我に返るやつ。
「あっ…やっ…そっ…」
とかうろたえて、「帰ります!」って背を向ける。
「どうかしてた…」みたいな(いやいやいや)
この不意打ちのキスをよく繰り出すのが斎藤工として。
いやぁ、あの人と2人きりになったら相当怖いと思いますよね。
イケメンとか関係ないんですよ。
教室で2人きりになっちゃいけない怖さがあるじゃないですか。
それは加害とかそういうことじゃなく、ロッカーで探し物をしてる自分の真後ろに立たれてたら相当怖い感じの。
「オレ、実は、前から…」
優しげな松下洸平でも無理。
でもたぶん彼は、近づいてることにも無意識な浮遊感ドジの役をやるだろう。
だからキスの前にビンタされそう。
とにかく、そうやって近づいてこられることを多くの女が望んでると思われるのがすごく嫌。
誰であっても「距離感の侵害」は恐怖。
どうしてそういう描写が多いんだろうと思う。
リアリティーがないにもかかわらず、不意打ちの接近はよく使われる。
ところが自分が恋に恋していた期間(そんな前じゃない)
不意打ちのキス妄想を繰り広げたことがあった…
「一緒にカラオケ行こう」と約束が決まってからのこと。
カラオケルームでふと「敷根さん…」と声をかけられて、振り向くと彼の顔。
それを受け入れる自分。
「へへ…」と笑い合ったあとにぴったりな曲はなんだろう(バカ)
今でこそ、彼は絶対不意打ちのキスタイプじゃないことはわかる。
それに今、距離を詰められても「やめろ」と思うし、「え、なに?」と後ずさりするだろう。
パーソナルスペースをいきなりぶち破られたことに怒りが湧くとも思う。
「お前は俺のキスが欲しいんだろ?」ってな上から感は言語道断。
「んー。なんか、つい…」みたいな気の迷い系も信じてない。
不意打ちのキスが成立するのは、それなりのパートナーシップを構築した間柄だけなんじゃないだろうか。
不意打ちで人の心を奪うのがテクの1つだった昭和・平成の恋はわかる。
双方エロ発展OK、みたいなムードの入り口とか。
いや、人の不意打ちをジャッジする気はない、それは自由ですが、なぜ私はこんなに怒っているのか。
今の私は「距離感」がすごく大事で。
恋愛だけじゃなくて人間関係全般の距離にも敏感になった。
むやみに距離を詰めてくる人が信じられなくなったというか。
昔は「ぐいぐい来る」みたいのが嬉しかったのに、40も半ばを過ぎると「ぐいぐい系」のほとんどが私の周りから消えていると気づく。
彼ら・彼女たちは「心を掴む・奪う」ことが第一目的で、「築く」ことは後回しだった気がして。
ぐいぐい来られたり、不意打ちのお誘いがあると確かに恋みたいなドキドキはあるけど(友情でも)、あの人たちも病気だったんかなと思うほど、人の心をこじ開けては去っていき、「築こう」と歩み寄ればウザだなんだと冷笑顔で逃げていき。
不意打ちのキスなんかするやつって、地道に構築する気がない強奪野郎なんじゃないか(まだよく知らない関係性においてね)。
それなのに、「恋愛」というスイッチが入ると不意打ちを期待する。
自分アホかっての!
もし今度恋愛したとしても、距離感の大切さは忘れずにいたい。