PEファンド面接対策|⑤即戦力アピールはビジネスフローを前提に
前回は「CWFから始める」ことと、スポットライトの照らし方次第では、
自らの価値を相対的に高めることが可能ということについて説明しました。
今後、Can、Will、Fitそれぞれの概論を説明します。
これを経て、セルフチェックとしてのベースモデルを仮設定してください。その後、ファンドごとの特性を踏まえた、ベースモデル・カスタマイズの必要性とその手段について記載します。
今回は、Canの概論について書いていきます。
参考書籍があれば、今後もテーマごとに紹介していこうと考えています。
ビジネスフローとCan
面接におけるCan質問への対応には、まずはPE(プライベートエクイティ、バイアウト)ファンドのビジネスフローを踏まえておくことが必須です。
PEファンドのビジネスフローはざっくり、ソーシング、エグゼキューション、PMI、イグジットから成り立っており、面接官視点でも、
どの機能に関するビジネス経験があるのか?
各機能で求められるスキルを持ち合わせているか?
なぜ、その経験・スキルが再現性があると言えるのか?
といったチェックを行います。
一口にソーシングといっても、人的ネットワークを活用して上場会社の社長に直接提案する機会を創り出すことから、非公開化を促すための情報分析や提案資料の作成などまで幅広いフェーズです。PMIでも、●●に強い経営者の採用、●●戦略、など投資テーマやバリュードライバーが変動するため、一律ではありません。
一応これらを理解いただいたうえで、今回は概論としてざっくりと捉えていただければと思います。
セルフチェックによるベースモデル作成
それではまずは以下の一般論をもとに、セルフチェックを進めましょう。
セルフチェックの際には、可能であれば、3Cフレームワークを活用してください。3Cにおいては、顧客=PEファンド、自社=自分、競合=他候補者とでもしておきましょう。
要するに、何が求められているかを想定し、自分は何者で、競合との競争優位(同業出身者と異業種出身者)は何なのか、を設定していきます。
再掲しますが、以下の観点の3番目、それがPEファンドで活かせるという視点が、最終的には即戦力アピールになります。
どの機能に関するビジネス経験があるのか?
各機能で求められるスキルを持ち合わせているか?
なぜ、その経験やスキルに、再現性があると言えるのか?
また、以下に記載する内容はイメージをいただくために、あえて一般化した内容です。前回の「スポットライト」を照らす考え方を適用してください。
投資銀行、コンサル、事業会社それぞれを例にとると、Canについては、
ざっくりと以下のような状況でしょうか。
ここで大事なことは、キャリアに応じた即戦力期待値にを満たし、上振れを狙うことです。
つまり、投資銀行で言えば、M&Aのエグゼキューション経験が豊富であることや基本的なモデル、投資検討資料が作れることであり、コンサルであれば、ビジネスDDやPMIにおけるモジュールを担えるという点は、当然期待される部分であり、そこをカバーしつつ、+αを説明する必要があります。
① ソーシング
ソーシングは、PEファンドにおいて投資先企業の発見や交渉、初期段階のディール形成を行うフェーズです。
投資銀行出身者
強み:豊富なM&A経験と、ミドル以上であれば企業の経営者やインベストメントバンクとの強固なネットワーク。人によっては、投資候補先を見つける力。
課題:若手はマネジメント経験や社外との折衝が弱い場合があり、特に非上場企業の経営陣や現場との信頼関係構築が出来るかどうかを懸念されがち。
戦略ファーム/コンサルティング出身者
強み:多様な業界にわたる知識。人によっては、経営者層との信頼関係を築きやすいスキル。特定の業界インサイトを活かした面白い提案が期待可能。
課題:ソーシングのプロセスやディール形成における実務的な経験が不足していることが課題。また、投資銀行出身者と同様に、立場や知識が異なる関係者と歩調を合わせるという経験は不足しがち。
事業会社出身者
強み:得意業界やノウハウを適切に絞り込む。
課題:ソーシングに必要な金融スキルや、PE特有の取引手法に関する経験が不足していることがコンサル同様に課題。
② エクゼキューション(実行)
エクゼキューションは、ディールの実行フェーズで、資金調達、デューデリジェンス(DD)、契約交渉などが含まれます。
投資銀行出身者
強み:ディールの実行経験が豊富で、M&A取引におけるバリュエーションやLBOモデル、資金調達などの専門スキルを持っている。契約交渉やデューデリジェンスのプロセスに精通している。
課題:ビジネスに対する検討経験が不足。
戦略ファーム/コンサルティング出身者
強み:投資検討という意味では、戦略的な視点で企業の将来性を評価し、買収の実行におけるリスクや機会を分析する能力が高い。デューデリジェンスにおける業務や市場分析に強みがある。
課題:M&Aや資金調達に関する財務的なスキルや経験が不足していることがあり、PE特有の取引の実行経験が少ない。DDや投資委員会資料を除くと戦力にならないことも多い。
事業会社出身者
強み: 実務面での理解が深く、業務プロセスに基づいたリスク評価や契約交渉が得意な方が多い。
課題: M&Aの専門的なファイナンススキルやデューデリジェンスの経験が少なく、エクゼキューションに関する技術的な側面では不足が見られる。
③ PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)
PMIは、買収後の企業統合や業務改善、組織再編を通じて企業価値を向上させるフェーズです。
投資銀行出身者
強み:PMIには直接的な経験が少ないものの、スケジュール管理などが得意なため、意外に立ち上がりが早いこともある。
課題:人によっては、ビジネスに向いてない人が多い業界でもある。
戦略ファーム/コンサルティング出身者
強み:PMIにおける戦略立案や業務プロセス改善の経験があれば即戦力。
課題:対人折衝に失敗して、実行が不足することがある。
事業会社出身者
強み:経験次第だが、業務改善や組織再編、現場レベルでの実務対応が得意。
課題:こなした業務ボリュームの違いから、複数業務を統合する際のスキルが不足しがち。
④ イグジット
イグジットは、利益を確定するフェーズです。
投資銀行出身者
強み:M&AやIPOのスキルはそのまま強みとなる。市場環境やバリュエーションに関する専門知識も活かせる。
課題:イグジットプロセスを経験していることが望ましい。
戦略ファーム/コンサルティング出身者
強み:戦略的な視点から最適なイグジット戦略を提案可能。
課題:イグジットプロセスの実務経験が不足している場合が多く、特に資本市場での手続きや法的対応が弱くなりがち。
加点要素の積み上げ|減点要素の排除
上記を埋めつつ、強みを証明するような卓越したスキルやエピソードを用意することが良いと思います。
加点要素を1つでも多く積み重ねてください。
ご自身の領域では、減点要素を完全に排除することも重要です。
例えば投資銀行出身者は、「ベータとは何ですか?」という唐突な質問で回答を外すと、基本的にはアウトです。
強みとしてアピールする部分は、用意周到に周辺を固めてください。
書籍紹介
PEファンド概要
ポラリスキャピタル|産業の変革をリードするプライベート・エクイティ
ポラリス・キャピタル・グループ木村雄治社長の書籍
2024年9月発売
バイアウトファンドとして歩んできた20年の軌跡を振り返りながら、日本におけるプライベート・エクイティ・ビジネスの歴史と現状、そして将来の永続的発展に向けた課題と可能性について概観しています。
プライベート・エクイティ投資の実践
“きわめて個別性が強く、属人的な「芸」に近かったPEの業務。
それを体系的に学べる「教科書」にしたところに本書の価値がある。"
マッキンゼー 価値を創るM&A
M&A戦略について、ソーシング、DD、SPA交渉、PMIまで記載されています。
2024年4月発売
日本企業が、いかにしてM&Aを組織能力として構築し、価値創造の成功確率を向上させるべきか。この経営課題に関する問いを解き明かすのが、本書のミッションである。