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PEファンドの基礎知識|バリュークリエーション

知っておきたい基礎知識を投稿していきます。



PEファンドのバリュークリエーション

一般的にバリュークリエーション(価値創造)というと、新たな技術、サービス、商品、アイデアなどを開発することです。しかしながらこれだけではビジネスとしては成立せず、自社が経済価値を獲得する必要がありますが、こちらをバリューキャプチャー(価値獲得)と呼びます。概念は2000年代初期にMITにて考えられたフレームワークです。

PEファンドでは、投資案件を目の前に、

  • あらゆる潜在可能性を見極め、

  • 潜在可能性を追求するための道筋を策定し、

  • 道筋へのイニシアティブを実際に進行し、

  • 業績成果を実現する

PEファンドでは、上記一連の流れに加え、最重要ともいえる「イグジット」(投資株式の第三者への譲渡)までの流れを総称して、バリュークリエーションと呼ぶことが多い印象です。

リターン要素分解

ディレバレッジ、マルチプル・エクスパンジョン、EBITDAグロースについては以前簡単に触れました。

念のために記載すると、
イグジット時の企業価値をEBITDA×EV/EBITDAマルチプルとし、
企業価値からLBOローン返済額(ディレバレッジ)を控除すると、
イグジット時の株式価値が算定されます。

エントリーについては、レバレッジを活用した資本再構成により、ファンドからのエクイティ水準を最適化します(株式価値=ファンド投資額ではありません)。

イグジット時の株式価値と、エントリーの投資額をもとに、リターンを予測計算します。

インベストメントバンクではアナリスト研修で勉強する内容ですが、
戦略コンサルや事業会社の方で、そもそも企業価値の概念が分からないという方がいらしたら、末尾の書籍を参考にしてみてください。

※LBOモデルの目的と取り扱い方法については、基本知識および面談対策のどこかで解説したいと思います。

バリュークリエーション


上記のリターン予測はあくまでも概念的な考えであり、
実際に価値を創り出す計画と実行(バリュークリエーション)が重要です。
当該部分は、戦略コンサルやインベストメントバンクでは経験しづらい領域です。

投資案件があると仮定し、どうしたらリターンが出るでしょうか?

重要な取り組みの1つに、キーバリュードライバーの特定が挙げられます。

キーバリュードライバー

リターン向上につながる可能性を洗い出し、
それを実際のイニシアティブとして設計する力が必要といえます。

  • とりきれていない市場獲得なのか

  • ロールアップや出店加速なのか

  • マージン改善なのか

  • オペレーティングレバレッジの変動なのか

  • 事業構造の安定性やFCF創出能力の高さを背景としたレバレッジなのか

  • マルチプルを拡大させるビジネスモデル転換なのか、

施策効果絶対値、発生確率、リスクなどを総合的に考える必要があります。
合わせて、重要なことは、絞り込む力です。
何でもかんでも詰め込んで達成しきれない。
逆に緩やかすぎて、潜在可能性からはほど遠い業績進捗になるなど、匙加減で大失敗にも繋がる領域です。

こうした検討を経つつ、リターン要素分解とキーバリュードライバーがモデルや投資テーマへと落とし込まれていきます。


参考書籍:ケーススタディ

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)再生の立役者ともいえる森岡氏は、実はPEファンドご愛顧のプロフェッショナル経営者でもあります。
森岡氏の書籍は複数ありますが、読むならこちらがおすすめです。

USJではゴールドマン・サックス系ファンドが、リーマン・ショックで景気悪化する中、非上場化を行いました。
その後、株式会社刀として独立した森岡氏は、現在もアジア系PEファンドのPAG傘下にあるハウステンボスの再生を行っています。

PAGはあまり有名なPEファンドではないですが、実はグループ全体で日本に約300億ドル以上を投資しているファンドです。投資意欲も旺盛なので、検討に加えてみても良いかもしれません。

参考書籍:コンサル/事業会社の方向け

M&A、ファイナンスの最前線で活躍する実務家から絶大な評価を受ける著者による最新作。ファイナンスは積み上げ型で学ぶより俯瞰して理解せよというスタンスの下、基本から最先端の理論までを網羅した新しいテキスト。

企業価値評価のバイブル的ポジション。
版を重ねていく中で読みやすくなってきましたが、初見者にとっては難易度はやや高いかもしれません。



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