健康になりたければ今すぐ猫を飼え
こんにちは!
ネコ好き腎臓内科医のBunです。
写真はうちのネコです。
敢えて強め口調のタイトルにしてみましたが、誤解のないようにネコ好きとして最初に断っておきます。
それは、
ネコ好きたるもの、自分の健康よりネコの健康を第一に考える猫ファーストの精神を持つべし
ネコはペットではなく家族である。飼うなら最後まで責任を持つべし
です。
これだけは最初に言っておこうと思いました。
いやまぁ別に健康になりたくてネコを飼っているわけではありませんが、やっぱり我が家にネコをお迎えしてから早3年、なんとなく体調が良くなった気がするのです。
そこでやっぱり気になるのは、
「ネコを飼うことと、飼い主の健康に関係があるのか?」
ということです。
ここはやはり内科医として、健康になった「気がする」で終わらせるのではなく、
そもそもネコを飼うことが飼い主の健康につながるのかどうか?
関係があるとしたらそれはなぜなのか?
ここら辺はやはりちゃんと調べなくては・・・と思いました。
そこまで興味がない?
そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうか私の趣味にお付き合いください。
最後まで読んでいただければ嬉しいです。
ペットを飼うことは健康に良いのか?犬VS猫
ペットを飼うことと、飼い主の健康に関連があるのか、そんな研究が果たしてあるのか、
と思いましたが、ありました。
この論文では、ペットと飼い主の死亡率について調べるために、15735人を4年間追跡調査しています。
この研究によると犬を飼うことは心血管イベント、死亡のリスクを減らしたという報告がある一方、猫や他の動物の飼育は死亡リスクの低下には影響しなかった、ようです。
なぜそのような差がついたか、
曰く、犬を飼っている人は、犬と散歩することにより自然と運動習慣が身についており、毎日の運動によって心血管イベントリスクが低下した可能性がある・・・、とのこと。
なるほど。
たしかに、毎日運動している犬と違って、猫は基本的に家の中で寝ているだけ。
まずい、このままでは健康のためには犬を飼うべき、という結論になってしまいます・・。
果たしてそれでいいのか。
いや、ここは猫好き内科医として、猫が犬より優れていることを証明しなければなりません(犬派の皆様ごめんなさい)。
また、別な論文によると、
犬よりも猫を飼うことが心血管死亡(特に脳卒中による死亡)のリスク低下につながったという報告があります(特に女性)。
どうやら医学会でも猫派と犬派の対立があるようです。
ただまあ、論文の世界ではどちらが優れているかお気持ちで決めることはないので、この場合の結論はある意味ではどちらも正しい、ということになります。
そもそも比べるものでもないですからね。
ちなみにこの論文では、飼い主の身体活動量といった要素はあらかじめ補正されていますので、仮に飼い主の身体活動量が同じだと仮定した場合には、猫を飼っていた方が心血管イベントのリスクが減る、ということになります。
つまり、運動などの生活習慣以外の要因によって、死亡リスクが低下するということになります。
その要因とは何か。
この論文では、おそらく猫との交友によるストレス緩和効果によるものであろう、と述べられています。
猫と暮らすことによってストレスが減って脳卒中になりにくくなった、と言っているわけですね。
これらの研究から私が導き出した考察はこうです。
確かに、犬を飼うと健康になるかもしれない。
しかしそれは犬により半強制的に散歩という運動を強制させられるからであり、真の意味で犬が飼い主を健康にしたとは言えない。
その点猫を飼うと、身体活動が変化しなかったとしても、一緒に暮らすだけで飼い主が健康になるため、猫はまさに理想的で完璧な存在と言える。
これが私の結論です。
いかがでしょうか。反論があればどうぞ。
幸せホルモンの効果
オキシトシン、「愛情ホルモン」や「幸せホルモン」は健康に良いことがわかっています。
猫とのスキンシップはこのオキシトシンの分泌を増やすと言われています。
そうは言っても、それはエビデンスのあることなの?
そう疑問が湧いてきますよね。
ということで調べてみたところ、猫と飼い主のオキシトシンについて研究した報告がありました(あるんだ・・・)。
この論文では猫を半年以上飼っている女性30名を対象とし、「猫とのふれあい」行動と、「読書」行動で唾液中のオキシトシン濃度に差があるかを比較しました。
研究の結果は、残念ながら2つの行動の間ではオキシトシン濃度に有意な変化は見られませんでした。
しかし、「猫を優しくなでる」「ハグする」「猫が自発的に人に触れる(頭を擦り付けるなど)」「猫に話しかける」といった行動をすると、オキシトシンが増加することがわかりました。
また、猫が噛む、ひっかくなどの攻撃的な行動をとったりするとオキシトシン濃度が減ることもわかりました。
ちなみにオキシトシン濃度がそもそも健康に影響あるの?という疑問については、いろいろな研究ですでにオキシトシン濃度の減少が更年期障害の原因になるということが分かっています。
ちなみにオキシトシンは男性でも出ます。
残念ながら、男性のオキシトシン濃度と健康に関する論文は見つけられませんでしたが、今後育児にコミットする男性が増えてくることを考えると重要なテーマになってくるかもしれませんね。
まとめると、猫との交流は特に女性において、オキシトシン分泌を促進させ、健康的影響を高める可能性がある、ということです。
私はよく疲れたり、ストレスを感じたときは、いわゆる「猫吸い」をするのですが、これにはちゃんと医学的な効果があったんですね。
やりすぎるとすごい嫌そうな顔をするので、ほどほどに。
猫はなぜこんなに完璧な存在なのか
それにしてもなぜ猫とスキンシップをとると癒されるのでしょうね。
これは猫好き界隈の間でも重要なテーマです。
猫は絶対的な存在であり、可愛いから可愛いのだ、
というと話が終わってしまいますので、最後に猫がいかに完璧な存在かについて考察してみますね。
まず、ベビースキーマについてです。
ベビースキーマという言葉を聞いたことがありますか。
これは、まず人間は人間の赤ちゃんを本能的にかわいいと感じるようにデザインされている、という話です。
赤ちゃんってかわいいですよね。
そもそも「可愛い」って何?
って話になるとこれはなかなか難しいです。
これはなかなか面白い話題なので、おすすめの本を紹介しますね。
そうなんです。
なぜ猫が可愛いのか、考え始めると「可愛い」って何?ってところから考えないといけないので、心理学や文化人類学を勉強しないといけなくなるんですよ!
ここら辺はまだ私自身見識が浅いところなので、今後知見を深めていきたいと思います。
つまり、猫は「大きな目」「大きな丸い頭」「ぽっちゃりしたほっぺた」といった人間の赤ちゃんに近い特徴(ベビースキーマ)を持っている。
ベビースキーマは本能的に庇護欲をかきたて、庇護者(飼い主)のオキシトシン(愛情ホルモン)を分泌させるのではないか。
こういうことですね。
ベビースキーマという概念については医学的には議論の余地があるところのようですが、論文化もされています。
また、猫がリラックスしたり、飼い主に甘えると喉を鳴らしたりしますね。
このゴロゴロ音は、人間が心地いいと感じる低周波パルスであり、これもストレス軽減効果があると言われています。
ちなみにこのゴロゴロ音、どうやって鳴らしているのか、実は科学的に解明されておらず、猫学者を長年悩ませている問題のようです。
何なんだいったい。
まとめ
とまあ、半ば無理やり「猫と飼い主の健康」をテーマに書いてみましたが、いかがだったでしょうか。
息抜き記事のつもりだったのですが、掘り下げてみるとなかなか奥深いかもしれないですね。
猫の可愛さについては「肉球」、「ふみふみ」、「すりすり」、「へそ天」、「アンモニャイト」などまだまだ語りたい可愛いポイントがあるのですが、それは気が向いたら書きます。
この間読んだ、猫の動物心理学の本もなかなか面白かったのでおすすめです。それではまた。
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