わが家の主へ、結婚の顔合わせ
うちには可愛い主がいる。
私は結婚相談所で2年婚活し、100人に出会って結婚した。
100人出会って、わが家の主に会ったのは夫ただ一人。
彼女を受け入れたのも、受け入れられたのも夫ひとりだけ。
彼女との出会いは7年前に遡る。
新卒2年目、半年に一度の出張の日。
慣れない業務に冷や汗をかき、経費削減の格安ホテルへ帰路についた。
香川県の結構な田舎。
一人で暇を持て余し、安易に調べた「保護猫」の3文字。
里親募集が並ぶ中、「明日期限」の文字が飛び込んできた。
場所は山口県の片田舎。
明日は東京に帰って仕事がある。
嫌な気持ちで悩んでいると、上司からメールがあった。
「突然だけど、明日の担当の仕事からリリースします。」
急に仕事がなくなった。
急いで有給申請して、保護猫サイトに連絡し、翌日山口県へ向かっていた。
駅に着くとボランティアの方が車で迎えにきてくれていた。山口県ではペットを飼うという習慣がなく、畑に放して害虫駆除として共存するらしい。だから去勢も避妊もなく、増えた犬猫が保健所に持ち込まれる。
心が暗くなる話を聞きながら保健所に着くと、今日期限の子が他にもいた。
そして、みんな里親が決まっていた。
そう、その保健所は、やり手ボランティアに守られた保護施設だった。
とは言っても、私が申し込んだ小さなねずみ色の子は、小さい体をさらに小さくして怯えていた。
新幹線でケージを抱えて帰ってきて、お風呂場に寝床とご飯とトイレを用意して、静かにしておいてみた。
ガラスみたいな目をしていて、これから仲良くなれるだろうか。
それから7年。
引き取ったときに病院で3歳くらいと診断されたので、今10歳くらい。
元々大人のくせに2.5キロしかなかった体は、4キロを超えた。もちもちボディだが、太っている訳ではない。態度と一緒に体も大きく頑丈になった。
毎日、定位置のように膝に乗ってきて、腕枕で眠る。
とても可愛く育ったものだ。
夫との顔合わせ
話を戻そう、婚活である。
IBJではお見合いのお断り理由がアナリティクスとして蓄積され、担当仲人へ依頼すれば見ることができる。
婚活中だと自信喪失につながるので、私は成婚した時に一度だけ振り返りとして見てみた。
「猫を飼っているから」、というお断り理由が、なんと多かったことか。
(見た目とか、身長体重とか、書きにくかったからかもしれないが)
ただ、元彼や、元真剣交際、仮交際の反応を見ていると、猫とはいえ、子連れ感があるらしい。私が男の見る目がなかったことは自覚しているが、猫と一緒に暮らすことに難色を示されることが多かった。
夫の場合は、二つ返事で受け入れて、ちゅーるを買って挨拶に来てくれた。
夫と猫と3人暮らし
うちの猫は基本的にいい子だ。
唯一大変なのが、食費の1/3にもなろうかというほど、吐くことだ。
ケロッとして元気だが、吐きまくる。
寝る準備万端の時、会社に遅れそうな時、書類の上とか、ちょっと高いところに登って上から下にぶち撒けるとか、やりたい放題だ。
先日は、布団で盛大にやらかした。
夫が言う。
吐いたところを足元に向けて寝ればいいんじゃない?
猫が吐いた跡と、夫と猫と、一緒に眠った。
そんな困り者を可愛いと言ってくれる夫と出会えて、本当に良かった。