物書きの備忘録 〜物語冒頭の書き方〜
前回の記事を読んだあなたはお久しぶりです。この記事から読んでいるあなたは初めまして。一気読みしているあなたはまた会いましたね。
どうも上木原かをりです。
ここ最近は筆を取りながら、季節の移り変わりに思い馳せています。
さて唐突ですが、読者様方はこの言葉を聞いた事はないでしょうか?
「物語の最初に死体を転がせ」
ミステリー好きなら一度は耳にしたことがあるかもしれないですね。これは物語最初にインパクトを持たせて、読者の興味を煽る典型的な技法です。
冒頭で興味を煽ると言うのは、小説ないしどんな物にも必要な物です。最初で読者を引き込まないと、早々に飽きてどっか行ってしまうからですね。
この記事のように。
ところが悲しい事に、最近の読者は五行読めないと揶揄されることがあるのです。筆者的にはタイトルの段階でそれは起きていると思うのですが、それはまた別の機会に。
話を戻すと、五行すら読めないというのは裏を返せば四行以下の冒頭だけは読んでいる事が多いと言うことです。
しかし、そんな冒頭を書けないからこの記事を覗いたのだと思います。
残念。筆者のような人間にはそんな執筆のテクニックなんかありません。しかし、反面教師ぐらいにはなれると思い、筆を取ったのです。
正直な話、「吾輩は猫である」みたいな名作を使って解説しているような記事、動画は腐るほどあると思うので、逆に悪い例で固めた作品を一本書いてきました。それを使って解説していければと思います。
まあ、筆者は何事も斜に構えた人間であるので、あえて簡単な小説の書き方じゃなくてニッチな冒頭だけの書き方を紹介することになりました。
いやあ、怖いですね。己の捻くれ具合が。
では前書きが長くなりましたが、始めます。
魅力的な冒頭とは
興味を惹かれる冒頭とは何なのですかね。そんなの私が一番聞きたいです。
経験則うんぬんの前の一般的な意見として、物語の冒頭では「面白い」ではなく「面白そう」をいかに書くのかが重要だと言われています。
仮に、冒頭数ページで読者を面白いと思わせるのは現実的にかなり難しいと思います。数ページで面白いと感じさせることが出来たなら、それは短編として出した方が賢いと思いますし。
そう、つまり何が具体的に必要か。
冒頭は「展開の引き」と「情報」を意識しろ。それ以外は要らん。
と言う事です。
考えて見ると簡単な事で、冒頭を読んで興味を持つと言う事はその後の展開を読んでくれると言うことです。面白いかどうかは読者が後で決めます。
故に、どれだけ先を読んでもらえるかが勝負な訳です。
これがもし、書店で並んでいるような「お金」を取る本なら話は変わりますが、こと賞の応募作や無料で読めるタイプの作品はつかみが悪いと首を切られるんですよね。
人間冷酷なもので、金を払って買ったものはある程度読みますが、無料の作品は引きが弱いとすぐブラウザバックしていくんです。興味こそ持ったものの読む労力が見合わないって。
なので展開の引きが強く、尚且つ情報が多い作品が勝ちを拾えるのです。未知に対する興味と言うやつですね。
とは言え、金を払って買って貰うコンテンツでも最初は興味を煽った方がいいです。あなたの本、積まれますよ。買うだけ買う勢もいますから。
筆者の体感ですが、冒頭を乗り越えた人は内容問わず四割は最後まで見てくれます。惰性なのか「どうせなら最後まで読もう」という思考になってくれるそうです。
たかが四割、さりとて四割。この数字はデカいです。
それにどんな内容でも基本はついてきてくれる人がいるって思うと楽しいじゃないですか?
ではどうやって良い引きと情報を書くのか。
逆に悪い例を使って、解説してみましょう。
悪い例 ①
情報を書きすぎるな。
は? さっきと言っている事違うじゃんとお思いのあなた。ちょっと待って下さい。
情報はあくまで土台です。その土台を「解説」し過ぎるのが良くないのです。
安いレストランで聞いてもいない料理の解説されたらどう思いますか?
オマールがなんたら、フロマージュがどうとか。はっきりいって心底どうでも良いじゃないですか。
勿論そう解説が好きな人もいます。いますがそう言う人は他の高級店に行きます。そもそも来てもらっても雀の涙程度の売り上げにしかならないでしょう。
ならば、食材を選ぶような万人受けをしろとは言わないもののそれにあった対応をすべきです。つまり、裏に引っ込んでろってことです。
簡単に言えば、説明とは毒物。適度に処方すれば薬にもなりますし、いき過ぎた量を出せば劇毒となる。
何事も適量が大切です。
ではここで、例えを見ましょう。
これは酷い。説明があまりにも冗長ですね。
本来は要らない情報まで入っています。
これを読んで「よし、次のページをめくろう!」となりますか?
筆者だったら、めくる前に本をそっ閉じしますね。
ここを改善するならば、全てをバッサリとカットでしょう。
良いですか、読者が読みたいのは設定集ではなく、ストーリーです。フランス料理店の中華料理ではありません。
では、どう直すべきか。
簡単です。状況設定は本編の中でキャラに言わせた方が良いです。
設定は芝居の中で済ませる。
面白いシナリオにおける定説です。
そもそも冒頭で一から説明するなんて無謀、巨匠のようなファンが元からいる作品ぐらいしかできません。大人しく諦めましょう。そこには技術と知名度が足りません。
ならば上記の例の直し方は簡単で、どうしても必要な情報なら身の回りの描写で補ってみましょう。
実際、説明台詞を違和感なく言わせる方法なんて腐るほどあります。友人とのオタク談義、アナウンサーや先生の解説、主人公の自己申告etc。困ったらそうしておいてください。だいぶ変わります。
しかしここで注意点があります。
その情報、本当に今必要ですか。
はい、説明は後からしても大丈夫です。物語中盤で伏線として置いても良いですし、終盤で真実として提示しても良いです。
冒頭に必要なのは主人公の身の回りです。
決して歴史では無いのです。
悪い例②
口語を使わない。
時として、読者様方が使う言葉。それは脳内、作中においては文法をしっかりと守ったものであると思います。
けれど、意外にも口から出た言葉は文法を無視した適当な言葉になっていることが多いのです。
例えを出しましょう。
この言葉は文法的には間違いはないです。ですが、そこで口に出して言ってみて下さい。違和感を覚えると思います。
では先の文を口語にしてみましょう。
まあ、多少はマシになりました。
口語に文法は無いです。強いて言うならば、最もしっくりきた言い方が文法です。
だって、考え下さい。人と会話している時にわざわざ文法気にして話しますか?
その答えはNOだと思います。頭の中から言葉引き摺り出しているんですから、そもそも気にしている暇ないと思います。
つまり、作中の人物も思い付きで話すことが殆どです。逆にあえて話し初めを考えぬかれた定型的な文章にすることで本人の性格を表現することもできます。話す前に一度考えるタイプって感じで。
悪い例③
アクションがない
作品の冒頭は作中世界を見せる入り口です。
読者が読みたいのは、ある少年が目覚め朝食をとり、着替え、歯磨きなんて言う日常を書いたエッセイや日記ではないです。
ならば、トラブルがあってこその物語となります。
よくよく思い返してみて下さい。あなたが過去読んだ日常を書いた作品がなんで面白いと感じたのか。
それは日常における些細なトラブルによるすれ違いだったり、ギャグが琴線に触れたからではないでしょうか。
つまりはそう言うことです。
行動と言う名のトラブルを元に話を展開するのです。
因みに、筆者が普段使う書き方は本編とあまり関係のないショートストーリーと展開の先見せです。
困ったら使って見て下さい。ダラダラと意味のない物を書くよりかはら書きやすいと思います。
あとがき
さて、今回は冒頭の書き方を悪い例混じりで解説した訳ですがどうだったでしょうか?
途中で、書くことがなくなったので割と投げやりなのは申し訳ないです。
まあ、見切り発車はいつもの事なので勘弁して下さい。
今回の記事はまあ、「こんなの知ってるわ」って人は多いと思います。
ただ、これは備忘録な訳でしてある意味、筆者の自戒でもあります。
こんな物が役に立ったのなら、嬉しく思います。
また、今回のヘッダーを使わせていただいた方に感謝を。
あとがきが長くなっても悪いので、筆の方をそろそろ置かせていただいて。
次回の記事でまた会える事を祈りつつ。
私は原稿に取り掛かります。
今回あまり役に立たなかった原稿は後で再利用します。うん、エコロジー