『モアナと伝説の海』
ディズニー映画『モアナと伝説の海』は名作だ。モアナの"リーダーシップの旅"であり、それぞれのキャラクター設定が奥深い。曲とともにストーリーを紹介しながら、考察を綴る。
Where you are いるべき場所
モアナの住む孤島の村では、サンゴ礁を超えて海に出ることが禁じられている。こどもの頃からなぜかずっと海に惹かれ続けているモアナ。
How Far I'll Go どこまでも
村長の1人娘であるモアナは、父親から将来村長として村を守っていくよう言われていた。 期待に応えたい、でも本当は心のままに海へ漕ぎ出したいというジレンマを抱えている。
モアナは心のままに、小さな船でついにサンゴ礁を超えて海へと漕ぎ出した。これが、まさにリーダーシップの旅で言うところの"Lead the Self"だ。しかし、途中で転覆してしまい、危うい目に遭う。
おばあちゃんはモアナの良き理解者だ。
"もう二度と海には出ない!"と言うモアナに対して、"こうしなさい"と指示はしない。"お前はどうしたいんだい?"と問いかけ、村の秘密を教えてくれた。
今は海に出ることが禁じられているが、祖先は大きな船で海を航海しており、そのときの船が何隻も残っていたのだ。
モアナの村は緑豊かな島だが、最近は食物が育たず、魚もとれなくなってきていた。
モアナは村を救うために、船で海を渡ろうと父親を説得する。
しかし、父親は村の皆を危険にさらすことはしないとモアナに憤り、船を燃やそうとした。かつて彼も禁じられた海へ親友と繰り出した際に座礁し、親友を亡くしていたのだ。
その時、おばあちゃんが倒れた。
病床で泣き崩れるモアナに対して、おばあちゃんは村を救うために、海を渡り、マウイを見つけてテ・フィティに心を返すよう伝える。
実はモアナは幼い頃、海から選ばれ、テ・フィティの心を託されていた。影でその様子を見守っていたおばあちゃんが、モアナが落とした心を預かっていたのだ。おばあちゃんはモアナに心を託し、釣り針の星を目指しなさいと背中を押す。
ついにサンゴ礁を超えて海を渡ったモアナ。
おばあちゃんは亡くなり、エイの精霊となってモアナの船の下をくぐり抜けていく。
You're Welcome 俺のおかげさ
目的地もわからず好奇心のみで繰り出した時は、座礁してすぐに挫折しかけたが、島の命運を背負って釣り針の星を目指す今、モアナは船の操作がわからないながらも必死に舵を切る。
途中嵐に遭うが、海の導きもあり、マウイと出会う。モアナは自分と共にテ・フィティの元へ向かい、心を返すよう伝えるが、マウイは賞賛の言葉以外聞く耳を持たずに、自分の話をする。
モアナがめげずに説得すると、マウイはテ・フィティの元へ向かう代わりに、まずは神の釣り針を一緒に探すよう交換条件を出す。
釣り針があるとマウイはどんな動物にも姿を変えられるのだが、かつてテ・フィティから心を盗んだ時、溶岩の悪魔テ・カァが現れ、その戦いの中で釣り針を海に落としてしまったのだ。
Shiny
モアナとマウイは釣り針を探しに、海底の魔物の国にいるタマトアの元へ向かう。
タマトアは全身をキラキラに飾ったカニの怪物で、そのコレクションの中に釣り針もあった。マウイがこっそり釣り針に近づけるよう、モアナは囮になる。"なんであなたがそんなにキラキラで素敵なのか教えてほしい!"と言うと、自慢好きな意気揚々とタマトアは歌い出した。
マウイがようやく釣り針を手にするのだが、なぜか魔法を使うことができなくなっていた。
モアナが機転を利かせて、マウイと共に海底からの脱出に成功する。タマトアは相当悔しがるかと思うと、"俺の歌、どうだった?"と聞くものだから、憎めない。承認欲求の強いカニだ。
一方、マウイはすっかり自信喪失していた。
釣り針が使えないのでは、自分はマウイではないのだと。
マウイは人間の親に捨てられた過去があり、神によって助けられ、釣り針を与えられ、半身半人のマウイとなった。親に捨てられても、愛されたくて、火や風を人間に与えてきたのだ。テ・フィティの心を盗んだのも、そうだ。
マウイもタマトアと同じく、承認欲求が強い。
"マウイにしたのは、神や釣り針ではなく、マウイ自身だ"とモアナは伝える。マウイは徐々に自信を取り戻し、再び釣り針の魔法を使えるようになっていった。
最初は渋々テ・フィティの元へ向かうと言ったマウイだったが、今度は意志を持ってモアナ共に向かう決意をする。
"Lead the People"だ(実際はpersonだが)。
モアナはマウイから船の扱い方を教わる。
"大切なのは、船の扱いだけじゃない"
"今いる場所を今までいた場所から知る"
"どこへ向かっているのか、しっかり考えるんだ"
Steave Jobsの"Connecting the dots"に通ずる印象的なセリフだ。
最初は海やマウイに頼りきりだったモアナは、次第に一人で船を操れるようになっていく。
モアナとマウイがテ・フィティの元へ向かうと、テ・カァが現れた。マウイの本気のストップを押し切って、モアナは無理やり船を進めてしまう。辛くもテ・カァの攻撃を免れたふたりだが、マウイの釣り針に、そしてふたりの信頼関係にも亀裂が入ってしまう。
釣り針が壊れたら、自分はマウイでなくなる。モアナは必死にマウイを説得するも、マウイはそう言い残して去っていった。マウイにとって釣り針は、自分の存在価値なのだ。
I am Moana
独りになったモアナは、意気消沈し、"私じゃない、別の人を選んで"と、海にテ・フィティの心を返してしまう。
そこに、亡くなったおばあちゃんの精霊が現れた。 "お前には荷が重すぎたね、帰るなら一緒に行くよと優しく語りかけるおばあちゃんに対して、迷うモアナ。"お前はどうしたい?"
見た目や体裁を気にするタマトア、能力が使えないと自分でないと言うマウイに対して、私は私だと気づくモアナ。心の声に従い、独りでテ・フィティの元へ向かうことを決意する。
Know who you are 自分を見つめて
モアナがテ・フィティの元へ向かおうとすると、再びテ・カァがその行く手を阻む。
危うく攻撃を受けそうになったその時、マウイが戻ってきて助けてくれた。マウイがテ・カァを食い止める際、ついに釣り針は壊れてしまう。
モアナがようやくテ・フィティの元へ向かうと、そこにテ・フィティはいなかった。
モアナが途方にくれてテ・カァを振り返ると、その胸元にテ・フィティの心と同じマークがあることに気づく。テ・カァこそ、心をなくしたテ・フィティだったのだ。
心を取り戻したテ・フィティは本来の姿に戻り、大地は恵みを取り戻していった。
マウイがテ・フィティに心を盗んだことを謝ると、テ・フィティはマウイに神の釣り針を与えた。マウイは釣り針で鷹に姿を変え、大空へ飛び立っていった。
モアナが島に戻ると、家族や村の仲間たち待っていた。モアナは村長を継ぎ、村のみんなで大きな船に乗り、海へ漕ぎ出していった。
Lead the Selfに始まり、Lead the People(Person), そして最後にLead the Societyである。
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